ペアリングワイン

本当は教えたくない?知る人ぞ知る国産ビオワイン

近年日本でのワイン造りは盛んになり、生産者も有名な大手ワインメーカーから小規模で新しい生産者まで多様化してきました。

個性的なビオワインも、もちろんあります。今回は、そんな知る人ぞ知る国産のビオワインについて紹介したいと思います。

戦前から受け継がれる千葉県唯一の生産者が造る気取らないビオワイン

最初に紹介したいのは、千葉県山武郡にある「斎藤ぶどう園」です。昭和5年初代園主が森林を開梱し果樹園をつくったのが始まりで、その後ブドウ酒造りを始めました。

現在は二代目の貞夫さんとその孫の雅子さんがワイン造りを受け継がれています。実際伺ってみると、畑に野放しされた鴨やアヒルが元気に走り回っており、縁側のある日本の昔からの農家の佇まいといった印象で、「ここがワイナリー?」とびっくりしてしまいます。

ぶどう栽培はアヒルたちに雑草を食べてもらい、そのフンが肥料になるというような自然農法で、ワインを造る工程でも酸化防止剤など一切添加物は使っておりません。

意識的にそのようにしているというより、「酸化防止剤ってどこで買うんですか?」と雅子さんが質問されるほど、昔ながらのおじいちゃんが行っていた自然な方法をただ普通に受け継いでいるという様子で非常に自然体です。

品種は、ヤマブドウという日本の昔からの野生固有種や、食用のデラウェアや巨峰がメインとなります。どのワインも気取らず、日本の家庭料理に合う毎日スルスル飲めるワインです。赤ワインは猪やゴボウなど山の幸によく合います。

中でも、「貞夫スペシャル(※現在は別名で販売)」というワインがあり、これは貞夫おじいちゃんが家のみ用に造ったワインで、ご本人が「こんなものが売れるとはなー」と笑う気取らなさが素敵です。

造られる本数も非常に少なく限られた場所でしか買えないことも、また知る人ぞ知るワインとなっている理由です。ボトルは、昔の醤油瓶が使用されており、エチケットのデザインもなんともレトロで味がありますね。

山形に出没!?「ぶどう共和国」が生み出すビオワインで繋がるコミュニティ

次に紹介するのは、山形県南陽市の元飲食業のカリスマとして知られる藤巻氏が立ち上げた「Grape Republic」です。

藤巻さんは、飲食業時代に、初めてビオワインを口にした際、驚愕しそこからビオワインの魅力にとりつかれ、2017年に自分のワイナリーを立ち上げました。

藤巻さんのワイン造りは、土壌や気候だけではなく、その土地の人々や文化も第一に考え、ワイン造りを通して街全体を「ぶどう共和国」として発展させることをモットーに取り組まれています。

農薬や肥料は使わない方法で作られた、南陽市の契約農家さんのぶどうを使用し、製造工程においても一切の添加物を加えていない、まさにぶどう100%のワインです。

それは、ボトルの裏に貼られた原材料名が、「ぶどう」としか記載されていないことが証明しています。ほとんどのワインが数量限定で造られ、リリースされると即完売となります。

ただ、短いスパンで色々なワインをリリースされますので、一年のうちこのタイミングしか買えないということはありません。白、赤、ロゼ、発泡、オレンジなど色んなワインがリリースされていますが、どのワインもぶどうそのものの味わいを感じることができ、なんともいえない心地の良い香りで、香りだけで藤巻さんの造るワインだと認識することができる、他にはないワインです。

どのワインも体に染みるようにスルスル飲め、疲れないのですぐに一本空いてしまうこともしばしばあります。また、エチケットは、今までのワインのイメージを覆すインパクトのあるもので、藤巻さんの自画像をアレンジしているものが多くみられます。

普段ワインをに興味のない男性へのプレゼントにも最適で、ワインを好きになってもらえるきっかけとなるかもしれません。

うっかり栓を抜くと危険!暴れん坊なビオワイン

最後に紹介するのは、山形県上山市で大正時代からの長い歴史を持つ「タケダワイナリー」です。

月の運行に従い収穫や仕込み、瓶詰めなどを行うビオディナミ農法でぶどうを栽培し、天然酵母で発酵を行なっております。ここで紹介する「サンスフル」シリーズについては、さらに酸化防止剤など一切の添加物を使用していないビオワインとなります。

このワインには注意しないといけない重要事項があります。それは、「抜栓時にボトルの下に受け皿を置く」、「一気に栓を抜かず親指で栓を押さえながら少しずつ抜く」ということです。

写真は赤ワインですが、このシリーズの白ワインは特に注意が必要です。なぜこういった対策が必要かというと、酵母が生きており非常に暴れん坊のため、勢いよく抜栓すると、どんどんボトルから発泡とともにワインが溢れ出すのです。

それは炭酸飲料を思い切り振って開けてしまった時のような勢いがあり、一旦溢れ出すともう止まりません。私は初めてうっかり開けてしまった時、半分ワインがなくなってしまいました。こういったことにならないよう、十分注意してください。

そんな暴れん坊なワインですが、味わいは深みのある旨みがたっぷりあるおちついた深みがあり、発砲が抜けた後は、さらにコクが感じられ、2日後、3日後と変化が楽しめます。

国産の知る人ぞ知るビオワイン、お楽しみ頂けたでしょうか?大きなボウルの脚付きの気取ったワイングラスでなく、普段の小さなコップで十分たのしめる気楽なワインです。

合わせる食事も、卵焼きや野菜の煮込み、あるいはお鍋など、日本の家庭料理にぴったりです。キンキンに冷やしてツルツル飲むのがおすすめです。

ワインが苦手な方でも喉越しがいいので、飲みやすいかもしれません。毎日の食事の晩酌に取り入れてみてはいかがでしょうか?

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時本 早緒里

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
365日違うワインを呑むをモットーに、自然派ワインを毎日嗜んでいます。
造り手さんの思いや製造工程に興味があり、人と地球に優しいワインを大切にその良さを伝えるワインセミナーを不定期で開催しています。
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