ペアリングワイン

ソムリエ試験でワインペアリングが出題される!?

毎年、7月からソムリエ試験(ワインエキスパート試験)が行わていますが、2023年から新たに『料理とワインの相性(ペアリング)』という章が追加され、試験範囲となりました。

『わおっ!』

この章を執筆されたのは、ソムリエ協会の人気ソムリエの石田博氏。

石田氏の本は何冊か読んだことがありますが、ワインの難しい用語は極力使わずに、小難しいワインを気軽に楽しく学べるように配慮されているのでおすすめです。

私自身、過去にワインエキスパートを受験した時には、石田氏のこちらの本を読んで勉強したのを覚えています。

今回、石田博氏が執筆された『料理とワインの相性(ペアリング)』についても、私自身、学びや気づきもありましたので、シェアさせていただきたいと思います。

ぜひ、あなたのワインペアリングライフにご活用いただければ嬉しいです。

ワインペアリングについて

ワインは有史以来、「食中酒」として育まれ、楽しまれてきました。

ワインと料理を組み合わせることにはいくつかの呼び名がありますが、日本ではフランス語の「マリーアジュ」が良く聞かれると思います。

実際、フランスでは、このマリアージュは滅多に使われず、ラコール(l'accord=協調)やアルモニー(harmonie=調和)と言われることが多く、近年では、「ペアリング」が世界的にも広く使われる語彙となっているようです。

そう、まさに、ワインペアリングは世界的なトレンドなのです!

ワインペアリングコース

最近では、日本でも、料理一皿に1種のワインを合わせる「ワインペアリングコース」が一般的にも広く知られてきており、大変人気があります。

当サイトでも、ワインペアリングが楽しめるお店を紹介していますので、あなた好みのお店を見つけてみてださい。

ワインペアリングコースの発祥は定かではありませんが、フランス料理の巨匠として知られるアラン・サンドランス氏が提案したことに始まるとされています。

また、世界最優秀ソムリエコンクールでは、2000年のモントリオール大会の決勝で「それぞれの皿にワインを1種、全て違う品種、違う生産国のワインを合わせる」という課題が出され、それ以降、コンクール界では、コースメニューとワインの組み合わせの課題は当たり前となったそうです。

そんな今トレンドのワインペアリングコースですが、メリットもあれば、不向きなケースがあるので、この点は押さえておくと良さそうですね。

◎メリット
お店にっとって
・皿数の多いコース料理でもそれぞれに合ったワインを提供できる。→お店のプレゼンスが高まる
・単体では勧め辛い特殊なワインなども提案できる
・飲料単価アップを図れる

お客様にとって
・ワインをスマートにお任せできる
・予算が立てやすい
・自分では選ばないようなワインを楽しめる

●不向きなケース
ビジネスなどの会話が目的の席では、頻繁にワインが変わることでその会話が遮断されてしまうことがあるため、会食の趣旨や同席者の嗜好を考慮する必要があります。

また、飲みたい時に飲みたい量が提供されないといった不都合が生じるケースもあります。

例えば「今日はシャンパーニュが飲みたくて、重い赤ワインはちょっと…」といった場合など、好きなワインを選んだ方がお店にとってもお客様にとっても双方に良いというケースもあることを留意しましょう。

良いペアリングとは?

①料理を引き立てる

②料理と楽しむことでワインの可能性が広がる

これは当然っちゃ当然ですよね。

ペアリングの本質は、ワインは料理を美味しくさせるためになくてはならず、イベントなどでワインが主体となってそれに合わせて料理メニューを組み立てることもありますが、料理より目立つことには注意が必要です。

原則は、ワインは「食中酒」なので、料理に寄り添わせてあげるのが基本です。

ワインが難しいと感じる方は、一旦、料理を中心に置いて、料理にワインを合わせていくようにイメージ・思考していくと良いと思います。

この点は絶対ではありませんが、ワインも料理もあらゆる要素がありすぎて、ペアリングが難しく感じてしまう理由の一つはこの点にあると思っています。

まずとっかかりとしては、料理にワインを合わせる、「食中酒」としてのワインを意識するようと良いでしょう。

ワインペアリングで考慮すべき要素とは?

①料理の格

フランス郷土料理の素晴らしさを伝えた最初の料理研究家で、食通の王としても知られるキュルノンスキーは、料理を「家庭料理」「郷土料理」「高級料理」の3つに分類しました。

これに沿うと、例えば、家庭料理には、ブルゴーニュで造られたワイン(A.O.C.ブルゴーニュ)、郷土料理には村名A.O.C.のワイン、高級料理には1級、特急畑のワインを合わせる、というのがセオリーとなります。

②季節感

料理にとって季節感は非常に重要で、旬な食材を使い、その季節を表現し、食べ手は季節を堪能する。同様に、ワインもその季節感を演出する役目を担っています。

例えば、
春は華やかでアロマティックなワイン、爽やかさがあり、重すぎない味わいのワイン。

夏は溌剌とした酸味の白ワインやスパークリングワイン、ロゼワインもバカンス気分を盛り上げてくれます。

秋は熟度が高く、芳醇(ほうじゅん)さ、豊かさのある味わいのワイン、冬は熟成感があり、複雑で力強さのあるワイン など。

料理とワインの格を合わせる、季節感を楽しむ、難しくないですね!

料理の特徴を掴むポイント
①主食材

良いペアリングのために求められるのは、料理の理解で、「どんなワインが良いか」の前に「どんな料理か」をよく深く知ることが重要です。

料理の重要な要素としては、調理法、ソースなどに意識が向かいがちですが、最も重要な要素はどうやら「主食材」にあるようです!

●大きさ
一般的に、大きい食材には、より強さのあるワインが合わせやすい。

例えば、同じ食材でも車海老の場合、

「さい巻き」、「中巻き」、「巻き(=車海老)」と大きさによって呼び名が代わり、さい巻き→中巻き→巻き(=車海老)と大きくなるにつれて、ワインも力強いものが合わせやすくなってくる。

このように、まず最初は「食材の大きさ」を意識するのがポイントのようです。

●脂質
肉にしろ魚にしろ、脂の多いもの、同じ素材でも脂ののり方には違いがあります。

脂の多いものには味わいに厚みのあるワインが合わせやすく、酸味もポイントとなります。

ペアリングにおいて、「脂を流す」という考え方はないため、滑らかな酸味、厚みのある味わいのワインをその脂質の具合によって合わせる。マロラクティック発酵を行ったワインも合わせやすい。

マロラクティック発酵とは、ワイン中に含まれるリンゴ酸(しっかりとした酸味)が乳酸菌の働きによって乳酸と炭酸ガスに分解される発酵です。

これにより、ワインの酸味が和らげられてまろやかになり、ヨーグルトなどの乳製品系の香りが生まれ、ワインは複雑性が増して芳醇な味わいとなります。

料理の特徴を掴むポイント
②加熱方法

素材をどのように調理(加熱)するかで料理の特徴は大きく変わってきます。

●蒸す
食材の食感、質感、風味が素直に出る優しい加熱方法。ワインは繊細なタイプのものが合わせやすい。

●茹でる
蒸すに近いが、食材の脂分が抜けるので、ワインもより軽快なタイプが合わせやすい。

●燻す
スモーキーな風味が特徴で、ワインも同様にスモーキーな風味、木樽を使ったタイプのワインが好相性。

●焼く
焼き方、機材によりヴァリエーションがあります。

(ソテー)
フライパンで焼き、軽い焼き色、焼き加減、短めの加熱時間が特徴で、バターやオリーブオイルなどの油脂分も重要なポイントとなります。ワインはよく熟した果実味の滑らかな味わいのものが◎。

(グリル)
網で焼くことで、強い焼き色がつき、「焦げ」が重要な要素として加わります。ワインは凝縮感があり、酸味、アルコール、タンニンが豊富なタイプのものが合わせやすい。炭火焼きの場合は、炭の香りも付くため、木樽の香り、土っぽさや枯葉などの複雑性のあるワインとの相性が良い。

(ロースト)
オーブンで焼き、焼き色がしっかりと付くことで、中身はしっとりと仕上がる加熱方法。ワインは風味が豊かでジューシーな味わいのものが合わせやすい。

料理の特徴を掴むポイント
③調味料

料理は調味料により、イタリアンにもフレンチにも、アジアンにも和食にも姿を変えていきます。

料理に大きな影響を与える調味料のそれぞれの特徴を掴むことでワインが合わせやすくなります。

●スパイス
リコリス、ヴァニラ、シナモンなどは甘やかな風味を与えるスパイスで、ピノ・ノワールやガメイ、カベルネ・フランなど、果実味が豊富で、甘味も感じるまろやかな味わいのワインが合わせやすい。

クローヴ、ナツメグ、カルダモン、コリアンダーなどは、木樽(新樽)からの風味が際立ったスタイルのワインと相性が良い。カベルネ・ソーヴィニヨンやサンジョヴェーゼ、グルナッシュなど。

クミン、ターメリック、カレースパイスなど、エスニック料理の定番スパイスには、ゲヴェルツトラミネールやグリューナー・ヴェルトリーナーなどと相性が良い。

●ハーブ
パセリ、バジル、レモングラス、パクチーなど、爽やかさ、青々しさがあり、ソーヴィニヨン・ブランやヴェルデホなどと好相性。

ワインペアリングの3つのパターン

それでは、最後に、ソムリエ教本で解説されているワインと料理の組み合わせ方、3つのパターンを見ていきましょう。

①料理とワインの強弱、風味を合わせる

強い料理には強いワイン、軽い料理には軽いワイン、フレッシュな料理にフレッシュなワイン、スパイシーな料理にスパイシーなワインといった具合に共通点を見出して組み合わせる、いわゆる「同調」と言われる合わせ方。

私の一押しはこの組み合わせ方で、一番シンプルで分かりやすいところがオススメです!

②相反する個性の組み合わせ

辛い味付けの料理に甘いワイン、複雑な料理にシンプルなワインという相反する組み合わせ。この合わせ方は好みが分かれるところがあり、お店で提供するのであれば、ソムリエとシェフが実際に一度試して判断する必要がある。

また、あまり頻発させると受け入れられなくなる可能性もあるので注意が必要です。実験的な要素も強く、個人的には、好奇心を持って色々と合わせて楽しんでみる、といった感覚が良い思います。

③郷土料理にその土地のワイン

最も安定した組み合わせ。料理もワインもその風土を映したものなので本質的です。その土地の名産品、食文化、習慣なども学ぶことで、よりストーリーのある相性が楽しめます。

「天ぷらはポルトガルから伝えられた料理なので、ヴィーニョ・ヴェルデを」

「フランスのアルザス地方では肉料理にはピノ・グリを合わせています」

「スペインのバスク地方のタパス街ではリオハが楽しまれている」

「オレンジワインで肉料理を楽しむのがトレンド」など。

ワインペアリンを楽しもう!

それでは、最後に今回のポイントをまとめてみましょう。

★ワインは食中酒であり、料理を引き立てるワインを合わせてあげるのが基本。(絶対ではない)

★料理とワインの格を合わせることを意識し、季節感を取り入れると最高!

★ワインペアリングの中心となる料理については、「主食材」「加熱方法」「調味料」の点から特徴を捉える。

★「ワインペアリングの3つのパターン」を参考に、どんなワインが合いそうかを思考・イメージ。

いかがですか?ワインが難しいと感じている方も、何か簡単そうに感じませんか?そうです、難しくないんです!

ワインの大、大、大原則は、自由に楽しむことですので、今回の内容を参考にして、みんなで乾杯しながら、ぜひ色々なペアリングを試してみてください。

「うっ、この組み合わせは・・・」なんて場合でも、笑いのネタに出来ますし最高ですね!笑

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ペアリングワイン編集長

小池智英
ワインや食を通じて人と人が繫がる活動を展開中。
J.S.A.ワインエキスパート/WSET Level3 ペアリングワイン編集長の記事一覧 

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