ペアリングワイン

古代品種「ススマニエッロ」が持つ魅力とワインペアリングの可能性

「ススマニエッロ」というブドウ品種をご存知でしょうか。イタリアのプーリア州、ブリンディジという場所が原産の土着品種です。

産み出されるワインはとてもアロマティックで華やか、美しい酸を持つ高品質なものです。しかし、その栽培は難しく手が掛かり、一時期は絶滅の危機に瀕した品種でもありました。

今回は、そんな希少品種であるススマニエッロを使用したオススメのワインと、その魅力を引き出すペアリングをご紹介します。

ススマニエッロの歴史

ススマニエッロは早熟なうえに、樹齢15年を超えると収量が急激に少なくなるという、栽培が非常に難しい特徴を持ちます。そのため多産が求められた80年代には、栽培の難しさからススマニエッロは絶滅の危機に瀕しました。

しかし、プーリア州サレント半島のブリンディジを本拠地とするワイナリー、テヌーテ・ルビーノの現オーナー、ルイージ氏によって高品質なワイン用ブドウとして復活を遂げました。

ルイージ氏は、放棄されていた樹齢75年のススマニエッロの樹を根気強くマッサル・セレクション(優れた樹を台木に接ぎ木すること)し、少しづつ収量を増やしていったのです。そうした努力の末、現在は、ススマニエッロを100%使用したワインも増えてきています。

それでもススマニエッロの生産量は、プーリアのブドウ総生産量のわずか0.02%。まだまだこれからも、ススマニエッロから造られた高品質なワインが期待されています。

ススマニエッロを使用したワインはいくつかありますが、私が口にした中で特に印象に残ったワインとペアリングを3種類、ご紹介します。

同じ品種でもその特徴は様々で、ペアリングの可能性もまだまだ幅広く感じました。

ススマニエッロのスペシャリストが造るエレガントタイプ

▶︎オルトレメ テヌーテ・ルビーノ

品種:ススマニエッロ100%
生産者:テヌーテ ルビーノ
容量:750ml

先にご紹介した、ススマニエッロ復活の第一人者テヌーテ・ルビーノの造る赤ワインです。2015~2018ヴィンテージにおいて、4年連続でトレ・ビッキエリを獲得しました。
【※トレ・ビッキエリ︰イタリアの評価雑誌の権威「ガンベロ・ロッソ」が出版する、イタリアワインの評価本”ヴィニ・ディタリア (Vini d'Italia)”におけるワインの最高評価のこと】

紫がかった、若々しいルビー色を放ち、ザクロや熟したプラムの濃い香りが目立ちます。味わいは、滑らかで強すぎないタンニンとバランスのとれた酸が楽しめる、エレガントなワインという印象です。

「オルトレメ」には「自らを超えた」という意味があり、あまりの出来栄えの良さに付けられた名であるそうです。

おすすめペアリング料理
鹿肉のラグー オレキエッテ

少し癖の残る、軽く煮込んだ鹿肉とチーズを使ったパスタ料理です。エレガントながら、決して淡く弱くもないワインの味と、癖のある鹿肉の深い味が絶妙にマッチします。

ワインの持つ綺麗な酸味や果実感のある余韻が、チーズのコクと合わさり、双方の魅力をより引き出すペアリングとなります。

▼材料(5~6人前)
鹿肉ブロック(部位はどこでも)…600g
玉ねぎ…100g
人参…100g
セロリ…30g
にんにく…3片
塩・胡椒…適量
オリーブオイル(ピュア)…適量
薄力粉…少々
赤ワイン…500ml
トマト缶…200g
粉チーズ…適量
オレキエッテ…60g(1人分)

▼作り方
①ブロックのままの鹿肉に塩・胡椒を振り、なじませておく。
②鹿肉の表面に薄力粉をまぶし、鍋にオリーブオイルを敷いて表面にこんがり焼き色をつけ、取り出す。
②玉ねぎ・人参・セロリをみじん切りにし、鍋に入れて15分程ソテーする。
⑤鍋に肉を戻して赤ワインとトマト缶、ひたひたまで水を加えて火にかける。
⑦沸いたら弱火で約4時間煮込む。(焦げないようにたまに混ぜながら)
⑧塩で味を調えて、柔らかくなった肉をほぐす。
⑨茹でたパスタにソースと合わせる。仕上げに粉チーズと胡椒を振って完成。

その他にもご家庭では、ミートソースのパスタや胡椒を少し多めにしたスパイシーなステーキと合わせると、ワインの真価が感じられると思います。

爽やかさとフレッシュ感も兼ね備えた万能タイプ

▶︎ア・マーノ インプリント・オブ・マーク・シャノン・ススマニエッロ

品種:ススマニエッロ100%
生産者:ア・マーノ
容量:750ml

ワインの醸造を始めてからわずか一年で、ロンドンのインターナショナルワインチャレンジで金賞を獲得した驚異のワイナリーであるア・マーノ。彼らが造るススマニエッロ100%のワインは、よりエレガントで爽やかさが印象に残るワインです。

ラズベリーのような赤い果実のアロマが心地よく香る、リッチでエレガントな味わいです。柔らかいタンニンと酸、フレッシュ感が特徴的で、それでいて余韻もしっかり感じられる、高品質なワインです。

おすすめペアリング料理
牛ホホの赤ワイン煮込みとオムライス

あえてトマトと赤ワインの酸味を若干残したソースと、柔らかく煮込んだ牛ホホ肉にオムライスを合わせた一品です。ソースの煮込みにも、同じワインを使います。

ワインの優雅な味わいが、ソースとケチャップライスの柔らかな酸味と口の中で混ざり合い、ついついおかわりしてしまうペアリングです。隠し味のチョコレートが濃厚さを増し、ワインの余韻にもしっかりと合わせてくれます。

【牛ホホの赤ワイン煮込み】
▼材料(5~6人前)
牛ホホ肉…1kg
玉ねぎ…1個
人参…1本
セロリ…1本
(各野菜は、後で取り出すので大きめにカット)
ベーコン…100g
塩・胡椒…適量
赤ワイン(ススマニエッロ)…750ml
トマト缶…400g
チョコレート…5g

▼作り方
①牛ホホ肉の表面に塩・胡椒を振ってなじませておく。
②玉ねぎを、ばらばらにならないように芯のついたまま4分割する。
③人参は皮の付いたまま大きめ(4分割くらい)に切る。セロリも同様に大きめに切る。
④鍋にオリーブオイルを敷き、切った野菜とベーコンをソテーする。
⑤野菜に焼き色がついたら一旦全て鍋から取り出し、牛ホホ肉を鍋に入れ、表面に焼き色をつける。
⑥野菜とベーコンを鍋に戻し、赤ワインとトマト缶、チョコレートを入れ、水をひたひたに入れて弱火で煮込む。
⑦1時間ほど立ったら野菜を取り出し、更に2時間ほど煮込む。
⑧柔らかくなった肉を取り出して冷やし、1人分ずつに切り分ける。

【オムライス】
▼材料(1人前)
ご飯…150g
玉ねぎ…10g
ケチャップ…20g
塩・胡椒…適量
卵…2個

▼作り方
①玉ねぎスライスし、鍋でソテーする。
②ケチャップを入れて玉ねぎと合わせてソテーし、ご飯を入れて合わせ、塩胡椒で味を調える。
③卵を溶いて焼き、皿に持ったケチャップライスを乗せる。
④上から牛ホホ肉とソースをかけて完成。

ご家庭でも、市販のデミグラスソースを使ったお料理などと合わせてみてはいかがでしょうか。

唯一無二の甘み。上品かつ力強いタイプ

▶︎マスカデルタッコ ススマニエッロ

品種:ススマニエッロ100%
生産者:マスカデルタッコ
容量:750ml

ススマニエッロから造られたワインの中でも、今回私が一番オススメしたいワインがこちらです。イタリアワインの実力派ポッジョ・レ・ヴォルピが、2010年にプーリアで新設したワイナリー「マスカデルタッコ」。そんなワイナリーが造るススマニエッロ100%の高品質かつお手頃価格なワインです。

2018ヴィンテージが、2020年度「リアルワインガイド」の旨安大賞を受賞。さらに、2019ヴィンテージが「ルカマローニ」で4年連続の98点を獲得し、ヴィンテージに関わらず高い評価を得ています。
(※ルカマローニ:ガンベロ・ロッソと並ぶイタリアの評価雑誌)

深みのあるルビーレッド色を放つこのワイン。その味わいの印象は、良い意味で数品種を使用したような複雑な味わいです。エレガントで澄んだ、生き生きとした香りと味わいに始まり、温度が少し高くなれば濃密で力強い余韻がいつまでも続きます。

そして、私が一番特徴的だと感じたのは”甘み”です。他のワインでは感じられない、濃厚な、それでいて決して甘ったるいわけでもない上品な甘みが印象的でした。

おすすめペアリング料理
かぼちゃの濃厚プリン

ステーキやシチュー、ソーセージなどはもちろんよく合います。しかし、今回最もオススメするのは濃厚なかぼちゃのプリンとのペアリングです。

プリン自体はフレッシュなかぼちゃの甘味をより感じられるように濃厚に、そしてカラメルはかなり苦めにし、飽きさせないアクセントに。

▼材料(約6個)
かぼちゃペースト…125g
生クリーム(47%)…100g
牛乳…100g
卵黄・全卵…各1個
グラニュー糖…50g

【カラメルソース用】
グラニュー糖…50g
水…40g

▼作り方
①卵黄と全卵、グラニュー糖をボウルに入れ、白っぽくなるまで混ぜ合わせる。
②かぼちゃペーストを入れて合わせる。
③40度程度に温めた牛乳と生クリームを混ぜ合わせる。
④鍋にグラニュー糖と水を入れて火にかけ、焦げないように混ぜながらカラメルソースを作る。
⑤カップにカラメルソースを薄く流し、プリンの液を上から流す。
⑥カップをバットに並べる。お湯をバットに入れて湯煎にし、140度のオーブンで約50分焼いて完成。

私がレストランでお客様に勧めて、最も反応が良かったペアリングでもあります。あまり量を飲まれない方には特に、お肉料理からこのワインを勧め、最後のデザートのプリンまで合わせて頂くことを提案しています。

肉料理に合わせていた時とはまた違う、ブドウ本来の”甘み”がより引き出され、1杯で何度も楽しんで頂くことができるでしょう。

「甘口でもない赤ワインがデザートにこんなに合うなんて知らなかった!!」と言って頂けることも多く、自信を持ってオススメできるペアリングです。

もちろんご家庭でも、濃厚なスイーツに合わせてみると新たな発見があるかもしれません。ワインボトルの形も変わっていて、胴が太く可愛らしいのも話のネタに・・・。

以上が、私がオススメするワインとペアリングの一例です。
ワイン造りにおいて、まだまだ進化の可能性を秘めている古代品種「ススマニエッロ」。本当にオススメできる品種です。その魅力とペアリングの可能性を、ぜひ一度お試しください!

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峯森 洋平

JSA認定ソムリエ
イタリアンレストランの料理人として勤務する中、料理とワインのペアリングの魅力に惹かれ、ソムリエ資格を取得。
その後ソムリエとしてサービスを担当。
料理人としての経験を活かし、お客様が楽しかったと思ってもらえるような提案ができればと思います。
気軽にワインと料理、デザートを楽しむお店を開くのが夢です。
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