ペアリングワイン

自分へのプチご褒美!ケーキとワインのペアリング Part2

前回に引き続き、ケーキとワインのペアリングを紹介します。

モンブラン

秋になると食べたくなるモンブランは、アルプス山脈のモンブラン=白い山のように、栗などのクリームをまるで山に見立てて絞り、粉雪のような白砂糖を振るったケーキ。

フランスのサヴォワや、イタリアのピエモンテの家庭で作られていたものが原型だと言われています。現在のモンブランの形になったのは、1903年創業パリの『アンジェリーナ』のパティシエの夫人が、母国イタリアのモンテ・ビアンコをヒントに考案してからと言われています。

合わせるワインは、コクの豊かなジュラの名産甘口ワインがおすすめです。 ▶︎コート・ド・ジュラ・ヴァン・ド・パイユ ドメーヌ・グラン

藁や簀の子の上でブドウを乾燥させて糖度を高めてから造ることから名前がついたヴァン・ド・パイユ=藁のワイン。

フランスジュラの名門ドメーヌ・グランの洗練されたヴァン・ド・パイユは独特の製法や甘やかさによって、黒蜜やきな粉、胡桃、白餡などを使った和菓子との相性が抜群です。

花梨の蜂蜜漬け、ドライアプリコット、ジャスミン、シナモン、ヘーゼルナッツ、コーヒーなど芳醇な香り、凝縮された果実味とたっぷりとした甘さ、好ましい酸化のミュアンス、筋の通ったキレのある酸などが緻密に良く纏まっています。ワインを合わせることで、コクのある味わいがより豊潤に感じられます。

* 原産国:フランス
* 産地:ジュラ
* 品種:サヴァニャン
* 生産者:ドメーヌ・グラン
* 味わい:甘口★☆☆☆☆辛口
* 容量:375ml

オペラ

艶やかなチョコレートにコーティングされた上品な佇まいのオペラは、1955年パリのパティスリー『ダロワイヨ』のオーナーであるシリアック・ガビヨンが発案しました。

豪華絢爛なオペラ座をモデルに作られていて、屋根に立つアポローン神像の黄金の琴にちなんで金箔がちょこんと添えられています。ダロワイヨのオペラは2cmの厚さの層が7層に重なり非常に美しいです。

チョコレートに覆われているのは、グラン・マルニエやコアントローのシロップを染み込ませたビスキュイ・ジョコンドという生地、ガナッシュ、コーヒーのバタークリームやモカシロップで作られた層を重ねたものです。

合わせるワインは、高貴なイメージを合わせてソーテルヌがおすすめです。柑橘の風味のするタイプを選ぶのがポイントです。

▶︎シャトー・ラトゥール・ブランシュ

1855年の格付けの際には、ディケムに次ぐ高評価を受けていたシャトー・ラトゥール・ブランシュ。かつての所有者が所有権を国へ寄贈したため、1909年以降国営の栽培醸造学校として運営され、生徒達の実習の作品として品質を落としてしまっていましたが、近年見直され、収穫量の制限を厳しくしたり、発酵と熟成に新樽をしようするようになり品質が良くなっています。

フレッシュオレンジ、洋梨のコンポート、ミント、アカシアの花の蜜、ローストしたアーモンド、ヴァニラなどの芳醇な香り、シルキーなテクスチャー、甘く凝縮した果実味に繊細な印象のエレガントな酸が広がり、余韻へと繋がります。

ワインを合わせることで、濃厚なオペラにソーテルヌの柑橘やミントなど爽やかさを兼ね備えた香りや、キレイな酸が合わさり、より爽やかでエレガントな余韻が感じられます。

* 原産国:フランス
* 産地:ソーテルヌ
* 品種:セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデル
* 生産者:シャトー・ラトゥール・ブランシュ
* 味わい:甘口★☆☆☆☆辛口
* 容量:375ml

ミルフィーユ

1651年にルイ14世の宮廷料理人だったフランソワ・ピエール・ド・ラ・ヴァレーヌが考案し、宮廷料理人アントナン・カレーヌによって完成されました。そして、アドルフ・セニョが1867年パリのパティスリーにて提供したところ人気を博しました。

歴史のある菓子で形状や製法も様々なものがありますが、現代では3枚のフィユタージュまたはパート・フィユテと呼ばれるパイ生地にクリームを挟み、表面に粉砂糖がまぶされたもの、あるいは糖衣がけされているものが基本とされています。

このパート・フィユテが何層にも重なるように見えるため、千枚の葉=ミルフィーユと名付けられました。日本語のミルフィーユをフランスでそのままの発音で言ってしまうと、千人の娘という言葉に聞こえてしまうので、ご注意ください。

合わせるワインは、香ばしいパイ生地の風味と、クリーミーでコクのあるカスタードクリームの風味に合わせて、やや甘口のクリーミーなシャンパーニュがおすすめです。

▶︎ボーモン・デ・クレイエール・グラン・ネクターNV

シャンパーニュでは珍しく非常に早いうちから自社畑のブドウを用いて、自社で醸造、瓶詰めを行なってきた品質主義の家族経営のシャンパーニュメゾンです。

クール・ド・キュヴェといって、第一搾汁の中でもより品質の高い搾汁を全てのラインナップに加えていることや、シャンパーニュの地ブドウであるムニエに特に力を注いでいるのが特徴です。

熟度の高いリンゴ、ライムストーン、カスタード、アーモンド、ブリオッシュ、モカの豊かな香り、まろやかでコクのある果実味、下支えのしっかりしたフレッシュな酸、きめ細やかでクリーミーな泡立ちが持続します。

ワインを合わせることで、香ばしいパイの風味が増長し、クリームはよりまろやかにコク深く感じられます。

* 原産国:フランス
* 産地:シャンパーニュ
* 品種:ムニエ、シャルドネ、ピノ・ノワール
* 生産者:ボーモン・デ・クレイエール
* 味わい:甘口☆☆★☆☆辛口
* 容量:750ml

タルトタタン

タルトタタンは、19世紀フランスロワール地方のホテルタタンにて、料理を担当していたタタン姉妹の姉ステファニーが失敗して生地を敷かずにリンゴだけを窯で焼いてしまい、後から生地を入れて焼き上げてみたら、香ばしいカラメルの香りを纏ったリンゴのケーキが出来上がりたちまち人気の看板メニューとなりました。その後、パリのレストランマキシムを経営するルイ・ヴォーダブルがこのタルトタタンを気に入り、自身のレストランで提供し、世界中へ広まりました。

合わせるワインは、キャラメリゼのリンゴの風味とマッチする同じくシュナン・ブランの甘口ワインです。

▶︎ル・シャン・ブコー ドメーヌ・モス

ワインバーを併設したワインショップの経営からの転身で、ビオディナミの高品質ワインを造る生産者ドメーヌ・モス。

このワインは、本来ならばフランスローワール地方の原産地呼称「コトー・デュ・レイヨン」のはずですが、少し酸化的であるという理由で却下されてしまい、ヴァン・ド・フランスの表記になっています。

貴腐ブドウが20%に、乾燥させて糖度を高めたブドウ80%を用いて造られているため、華やかな香りと、リッチな甘さがあります。

花梨の蜂蜜漬け、メロン、オレンジピール、金木犀、カラメルのような甘く芳醇な香りが広がり、滑らかな質感に凝縮されたリッチな果実味、濃厚な甘さに繊細さを与えるミネラルと、しなやかな酸が長い余韻へと繋がります。とても素晴らしいワインです。

ワインを合わせることで、リンゴのキャラメリゼの風味と同調し、ワインの酸と合わされ甘酸っぱさが引き立ち、より立体的な味わいが感じられます。

* 原産国:フランス
* 産地:ロワール
* 品種:シュナン・ブラン
* 生産者:ドメーヌ・モス
* 味わい:甘口☆★☆☆☆辛口
* 容量:500ml

甘いケーキに香りや味わいの相性の良いワインを合わせることで、香り、味わい共に何倍にも豊かに感じられ、ワインのもつ酸味が味わいにメリハリを与えます。

自分へのプチご褒美で至福のひとときをお過ごしください。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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