ペアリングワイン

今宵はチーズ&ワインペアリング〜シュッド・ウエスト編〜

シュッド・ウエストのチーズ

フランスのシュッド・ウエストは、大西洋と山々に囲まれ変化に富む地形をしていて、気候や土壌が多様で地域の個性が豊かです。

山々が連なる傾斜が急な土地が多いため、牛の放牧には向かず、古来より羊が人々の生活と共にありました。なので、羊乳を使ったブルビチーズが名産として知られています。

羊は放牧されて草を食んでいる5月頃が最も香り高い乳が搾乳でき、その期間に作られたチーズは最高のチーズと称えられています。

今回は、シュッド・ウエストのチーズと相性の良いワインを紹介させていただきます。

ロックフォール

約2000年以上の歴史を持ち、フランスの中でも最古のチーズと言われているロックフォールは、岩山にある小さな村ロックフォール・シュール・スールゾン村が原産です。

イタリアのゴルゴンゾーラ、イギリスのスティルトンと並んで世界三大ブルーチーズの内の一つに数えられ、その中で唯一羊乳を使ったブルーチーズです。1925年にはフランス産チーズで初めてのA.O.Cを取得しました。

昔々、羊飼いの少年が好きな少女を追いかけて洞窟の中にパンとチーズを置き忘れてしまい、後日カビのついた美味しいチーズが出来たことがロックフォールの由来だという素敵な逸話があります。

ピリッと鋭い塩辛さと羊乳の甘くクリーミーなハーモニーが特徴です。独特の風味が強いため、通好みの味わいと言われています。

オッソー・イラティ

スペイン国境のピレネー山脈の麓にあるベアルン地方のオッソーの谷とバスク地方のイラティの森が名の由来の羊乳のチーズです。太陽神アポロンの息子アリスタイオスが作ったという伝説が残されている歴史の古いチーズです。

外側はオレンジ色を帯び硬い皮で、中はしっとりとした食感で淡いクリーム色をしています。ナッティな風味と素朴な旨味があり、余韻には蜂蜜のような甘さがほんのりと感じられます。

現地では、スリーズ・ノワール(ダークチェリー)のジャムと合わせる習慣があります。現地気分で合わせてみるのはいかがでしょうか?

▶︎ブラックチェリージャム

こちらは、カリスマジャム職人フランシス・ミオが作るブラックチェリージャム。プロヴァンスとシュッド・ウエスト産のブルラ種(Burlat)という種類の完熟したブラックチェリーを使用した拘りの一品です。活き活きとしたフレッシュ感を保ったチェリーがゴロゴロと入っていてとっても美味しいですよ。

ドメーヌ・アラン・ブリュモン

アラン・ブリュモンは、ボルドーの影に隠れてしまいがちなマディランとガスコーニュの認知度を上げ、世界にその美味しさを広めた生産者です。

トム・クルーズが自家用ジェットで買付けに来たという話はあまりにも有名ですね。リーズナブルで手に届きやすい価格帯で品質の高いワインを楽しめるので、アラン・ブリュモンのワインはデイリーワインにもおすすめです。

今回紹介させていただく2本のワインは、シュッド・ウエストのパシュラン・デュ・ヴィック・ビルという地域のワインです。

パシュラン・デュ・ヴィック・ビルとは、この土地の方言で、ヴィック・ビル=古い地方、パシュランク=並んだ杭という意味があり、昔はブドウを杭に結び付けて栽培していたことを表わしています。

甘口と辛口の白ワインが生産されていて、この地域で造られた赤ワインはマディランとなります。

▶︎ラルム・セレスト

ラルム・セレストは、伝統品種であるプティ・マンサンを糖度が上がってから遅摘みにして造った甘口のワインです。

この地域は、ソーテルヌやバルサックと違い貴腐菌が付かないため、パスリヤージュといって樹上でブドウを干しブドウ状にしてから収穫する方法がとられています。

黄桃やアプリコットのコンポート、オレンジ、蜂蜜、白や黄色の花の香り。濃密な甘さを感じる果実味に、プティ・マンサンの特徴ともいえるフレッシュな酸味がキュッと味わいを引き締めます。ロックフォールの強い塩味には、甘味の豊かな甘口ワインが良く合います。

▶︎シャトー・モンテュス・ブラン

この地域では補助品種として扱われることの多いプティ・クルビュという伝統品種を敢えて100%用いた白ワインです。

蜜リンゴやパイナップル、バター、ローストしたアーモンド、ブリオッシュの豊かな香り。熟度の高い果実味がありつつも、溌剌とした酸味としっかりとしたミネラルがあり、スッキリとした後味に仕上がっています。

オッソー・イラティのクリーミーな甘みやナッティな風味をワインの果実味やアーモンドの香りが同調し、更に豊かな味わいになります。

通常ならば、フランスから毎年沢山のチーズが日本へ輸出されますが、昨今は流通が止まり、チーズ農家のカーヴの中がパンパンになってしまっている現状だそうです。お家でチーズとワインを合わせて楽しむことで皆が笑顔になれたら嬉しいです。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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