ペアリングワイン

今宵はチーズ&ワインペアリング〜カンパーニャ州編〜

カンパーニャ州のチーズ

実はフランスよりもチーズの歴史が古いイタリア。その歴史は紀元前1000年頃にまで遡ります。最初はロンバルディア州に伝わり、その後アルプスから流れるポー川の流域では水牛のミルクから作るモッツァレラが生まれました。

今では飼育の難しさや搾乳できるミルクの少なさから水牛のミルクから作られるモッツァレラは減り、牛のミルクから作られるものが増えています。

カンパーニャ州のサレルノでは『モッツァレラの里』と呼ばれるほど、水牛のミルクを使ったモッツァレラの生産が盛んです。温暖な気候と牧草地の豊富な土壌に恵まれた広大な土地で飼育された水牛のミルクは旨味がたっぷり詰まり、優しい甘みがあります。

モッツァレッラ・ディ・ブーファラ

サレルノの東にあるレ・キッケ・デル・カザーロのモッツァレッラ・ディ・ブーファラは、国立公園に面した豊かな自然環境の中で飼育された水牛のミルクを100%使用して作られます。

モッツァレッラ・ディ・ブーファラは、水牛のみのミルクを用いて他にも厳しい基準をクリアしたもののみに認められる呼称で、1996年にDOPを取得しました。

旬のフルーツ桃やマンゴーと一緒に食べたり、定番のカプレーゼも存分にブッファラのクリーミーなミルクの甘さが味わえます。

ワインペアリングのポイントは、クリーミーで滑らかな舌触り、フルーツの風味が豊かなことです。

グレーコやフィアーノなどの甘やかな果実味とミルクの甘さを同調させられる白ワインやスパーリングワインがおすすめです。

▶︎ブリッジ・パ・フィアーノ サム・ハロップ

こちらのワインは、なんとフィアーノ100%のワインです。フィアーノは、イタリアカンパーニャ州の伝統的なブドウ品種ですが、温暖な気候でも豊かな酸が保てる特性がある為、ニュージーランドのワイヘキ島での栽培にも適しています。

このワインを手掛けるのはマスター・オブ・ワインであるサム・ハロップ。イギリスから故郷のニュージーランドへ移住し、第二の人生としてワイヘキ島でワイン造りを始めました。複数の収穫年のワインをブレンドするMVの知識を生かして、栽培・醸造ともにこだわり抜いたワイン造りが行われています。

白桃、蜜リンゴ、スイカズラ、ヴァーベナ、アーモンド、トーストの香り。豊かでリッチな果実味に、清涼感のあるミネラルと溌剌としたフレッシュな酸が余韻まで旨味を伴って長く続きます。

こちらのワインは、白桃とモッツァレッラ・ディ・ブーファラを使った一皿と素晴らしい相性です。ワインのもつフレッシュさや甘やかな果実味が、白桃のフレッシュでジューシーな甘さを引き立てて、ブーファラのミルクの風味がとろけるようワインの余韻とともに長く続きます。

* 原産国:ニュージーランド
* 産地:ワイヘキ島
* 品種:フィアーノ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

モッツァレラのあれこれ

実はチーズにも旬があり、モッツァレラは夏がシーズンといわれています。冷やしたままさっぱりと食べても美味しく、高タンパクなので、夏の暑さで食欲がないときにも活躍してくれる食材です。

モッツァレラという名前は、イタリア語のモッツァーレ=ちぎるからきていて、製造の過程で生地を練って引きちぎることが由来になっています。

この独特なパスタフィラータ製法のおかげで、チーズの中が繊維状になり、熱を加えると糸を引くようによく伸びます。よく伸びて味も見た目も良いので、イタリアのピッツァにも使われています。

モッツァレラを使ったピッツァといえば、トマト、バジル、モッツァレラというカンパーニャ州の名産品のみを使ったピッツァ・マルゲリータ。

ナポリのピッツァ職人がマルゲリータ王妃のために、緑・白・赤とイタリアの国旗の色を表現して作り、王妃がとても気に入りそのままメニューになったという日本でも人気のピッツァを忘れてはなりません。

そして、加熱して食べるのに個人的に凄くおすすめなのが、香ばしい薫りを纏ったスカルモルツァ・アフミカータです。

こちらは、レ・キッケ・デル・カザーロのスカモルツァ・アフミカータです。スカモルツァとはイタリア語で樹木の先端を切るという意味、アフミカータは燻製したという意味で、その伝統的な製法によって名付けられました。

そして、こちらのチーズは水牛ではなく、パダヤ平野でのびのび育った牛のミルクを使っています。水牛のミルクのスカモルツァ・アフミカータも生産されてはいるのですが、とても珍しいです。

モッツァレラと同様に、パスタ・フィラータ製法で作られた後に麦藁を用いて軽く燻製をして作られています。ひょうたんのような形をしていて表面は茶色ですが、切ってみると内側はアイボリー色でキメ細かな繊維状になっているので、モッツァレラよりもキュッと引き締まった食感をしています。

そのままでも美味しいですが、火を入れることで燻製の香りが際立ち、とろける口溶けで、バゲットの上にフライパンで焼いたスカモルツァ・アフミカータのステーキをのせるだけで至福の味わいです。

ワインペアリングのポイントは、なんと言っても燻製の香りを同調させることです。土壌由来、樽由来などスモーキーなワインがおすすめです。

スカモルツァ・アフミカータは熟成による濃厚な味わいで塩気も感じられるため、ワインもコクのあるタイプのものが合います。白、オレンジ、ロゼ、赤と幅広く合いますが、果実味が豊かでタンニンが穏やかなタイプがおすすめです。

▶︎ヴィーノ・ビアンコ・フリザンテ・メトッド・オリンピア カンティーナ・ジャルディーノ

このワインは、高樹齢のグレーコを使ったオレンジワインです。オリンピアおばぁちゃんが自家用に仕込むワインを真似て造ったワインで、マセラシオンしたグレーコの果汁に冷凍保存した濃厚な果汁を加えて瓶内二次発酵をして造られています。

マンゴー、オレンジ、ほのかにスモーキーでイーストの香ばしい香りも。微発泡の優しい泡立ちで、豊かで親しみやすい果実味、キュッとした酸とほのかに枇杷の果皮のような苦味が心地良く広がります。

カンティーナ・ジャルディーノは、アントニオ・デ・グルットラを中心に6名が共同出資して始めたカンティーナです。自家消費用に地域のブドウを購入してワインを醸造する趣味のようなものだったものが、この地域の高樹齢のブドウ畑を守るため、2003年よりワインの生産を始めました。

ブドウを農家から市場価格より良い値で買い取って、ワイン造りやマーケティングを教えたり地域の活性化にひと役買い、農家の方々もワイン造りにも参加したりと支え合う関係を築いています。

焼き上げたスカモルツァ・アフミカータを香ばしいバゲットの上にのせてこのワインを飲むと、甘やかさを感じるほどの果実味がチーズの甘さを豊かにさせ、スモーキーな香りが重なって、より風味豊かに楽しむことができます。

* 原産国:イタリア
* 産地:カンパーニャ州
* 品種:グレーコ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

気軽にチーズとワインのペアリングをお楽しみいただけると幸いです。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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