ペアリングワイン

今宵はチーズ&ワインペアリング〜ロワール編〜

ロワールのチーズ

フランスのロワール地方のチーズは、牛乳で作られるチーズよりも山羊乳から作られるシェーブルチーズの方が有名ですね。爽やかで独特の風味があり、癖になる味わいで名産のワインと非常に良く合います。

山羊たちが瑞々しい青草やハーブを食べて美味しいミルクを出してくれる春から夏にかけてのシーズンになるとワインとセットで味わいたくなる魅惑的な存在です。

現在ロワールでは、約650の農場と約90,000頭もの山羊が飼育されています。長さ1020kmにも及ぶフランスで最も長いロワール川の流域では豊かな自然が広がり、広大な牧草地もあります。

何故牛の飼育にも適したこの地域でこれほどまでに山羊が飼育されているのか不思議に思ったことはありませんか?その理由は、732年トゥール・ポワティエ間の戦いにあります。

ピレネーを越えて侵攻したイスラム軍が、食料として沢山の山羊を連れてきてフランク王国との戦いに敗れ退散し、残された山羊が繁殖をしたからと考えられています。

日本ではシェーブル独特の風味が苦手という方も多いですが、まだ若い状態のものを加熱して、蜂蜜やジャムと合わせることでより召し上がりやすくなります。

ロワール名産のシェーブルとワインを合わせて夏のひとときをお楽しみください。

サントモール・ド・トゥーレーヌ

サントモール・ド・トゥーレーヌは、1990年にAOPを取得しました。表面に木炭の粉がまぶしてあるので、白カビの色と相まってグレーがかった色をしています。熟成とともに青カビが増えていき、しわも深くなります。

サントモール・ド・トゥーレーヌといえば、細長い円筒状の形の中心に1本の藁が通っているのが特徴です。このライ麦の藁はチーズを補強するために差し込まれたものです。

若い時にはまるでヨーグルトのようなフレッシュな酸味がありますが、熟成するにつれて酸が落ち着き、ヘーゼルナッツのような風味やコクが増していきます。

相性の良いおすすめワインはこちら。

▶︎サンセール・ブラン・クァルトロン セバスチャン・リフォー

セバスチャン・リフォーのスタンダードスタイルのサンセールです。グレープフルーツや青リンゴ、青草、湿った石、蜂蜜、蜜蝋の香り。ピュアな果実味に旨味エキス、ライムを彷彿とさせるシャープな酸味と豊かなミネラル感からビシッと線の通った味わいです。余韻にはグレープフルーツの果皮のような心地よい苦味が広がります。

若い状態のサントモールとサンセールのフレッシュで溌剌とした味わいと青草のような爽やかさがマッチします。ワインに蜜っぽさも感じられるので、トロっと熟成したサントモールのコクにも寄り添い合わせることが出来ます。

この蜜っぽさは25%入っている貴腐ブドウの影響からきていて、熟成したサントモールと合わせるとそれがより豊かに感じられます。 熟成したサントモールには、貴腐ブドウのみを使ったキュヴェ、オクシニスもおすすめです。

クロタン・ド・シャビニョル

クロタン・ド・シャビニョルは、シャビニョル村とその周辺で生産されており、1976年にAOPを取得しました。

名前の由来は二つあり、陶器製のチーズの型が素焼きのランプ(Crot)に似てることから名付けられたという説と、丸くコロンとした形が馬や羊の糞(クロタン)と似ていることから名付けられたという説です。

名の由来がどうであれ、フランスで人気の高いシェーブルチーズの一つです。シェーブル特有の納屋のような香りに、ほっくりとした栗のような食感で、加熱して楽しむのにもおすすめのチーズです。

チーズをオーブンやフライパンで焼いてからサラダにのせて食べるクロタンサラダは、加熱によってミルクのコクが深まり、シェーブルの風味が苦手な方にもおすすめの一皿です。

フレッシュで若い状態のものにはサンセールなどソーヴィニヨン・ブランのキレのある酸の白ワインが良く合い、熟成が進むとエレガントで酸の豊かなピノ・ノワール、加熱するとシュナン・ブランの甘口にも非常に良く合います。

相性抜群のポワレもおすすめです。

▶︎ポワレ レ・カプリアード

こちらはスパーリングワインの魔術師カプリアードが初めて手掛けた中辛口の洋梨のポワレです。かつてポワレの名産地だったロワール・エ・シェールの北部に残されていたカレジ、クラソ・ルージュ、ポワール・ド・ルーといった希少な土着品種の樹齢150年を越える樹々に実った洋梨を使って造られています。

ロワールでは、食用の洋梨やリンゴの栽培が盛んで、シェーブルチーズにもよくソテーしたものやコンフィチュールが添えられています。洋梨を添える代わりにポワレを合わせてカジュアルなスタイルでペアリングが楽しめます。

洋梨や白桃のコンポート、生姜、バラなどのフローラルな香り。瑞々しい果実味に複雑な風味が広がり、繊細な泡立ちが持続的に続きます。ガス圧はなんと4.8気圧もあります。流石はスパーリングワインの魔術師が手掛けただけあります。

ヴァランセ

ヴァランセは、ヴァランセ村で生産される台形型のユニークなチーズで、1998年にAOPに承認されました。

この独特な形には逸話があり、かつてヴァランセ城で開かれた晩餐の会でエジプト遠征に失敗したナポレオンが、元々はピラミッド型であったチーズのてっぺんを腹を立てて切り落としてしまったことからこの形になったいわれています。

木炭の粉で覆われていて、熟成が進むと白カビが生えるので段々とグレーの色調へと変化していきます。木炭の粉はシェーブルの酸味を抑える役割も担っていて、熟成につれて酸味も穏やかになります。そして、シェーブル特有の香りやナッツの風味、ミルクのコクが深まります。

相性の良いおすすめワインはこちら。

▶︎プイィ・フュメ エリック・ルイ

木炭粉をまぶしたシェーブルにおすすめなのが、シレックス土壌で栽培されたソーヴィニヨン・ブランです。特にプイィ・フュメはその名の通りフュメ(煙)の香りが特徴的で、ワインから感じられるスモーキーな土壌由来の香りが木炭粉のついたシェーブルの風味とよくマッチします。

グレープフルーツ、ライチ、カシスの芽の爽やかな香り、火打ち石、ほんのりと白い花やその蜜の香りが漂います。瑞々しい果実味に繊細な酸と豊富なミネラルがしなやかに広がります。

『本当に大切なものは目に見えない。』

サン・テグジュペリの『星の王子さま』の中でキツネが語る有名なセリフが、エリックに大きな気付きをもたらし、ワイン造りにおいても知識や先入観に囚われることなく、素直な心で感じるものを大事にするようになったそう。

星の王子さまの挿絵からエスプリを得て描かれたエチケットは、サンセール出身の画家ベルナデット・モローが友人のエリックのために描いたものです。

サンセールのトーヴネ村にて1860年からブドウ栽培を営むルイ家の4代目、エリック・ルイは、有機栽培に取組み、サンセールの自社畑意外からも意欲のある有機栽培のブドウの生産者からブドウを買い付けてワイン造りを行っています。

数々のチーズとワインの組み合わせを試してきましたが、ロワールワインとシェーブルチーズのマリアージュほど夢中にさせてくれる組み合わせはなかなかありません。是非お試しくださいね。

《関連記事》
今宵はチーズ&ワインペアリング〜シャンパーニュ地方編〜
今宵はチーズ&ワインペアリング〜ブルゴーニュ編〜
今宵はチーズ&ワインペアリング〜プロヴァンス編〜
今宵はチーズ&ワインペアリング〜シュッド・ウエスト編〜
今宵はチーズ&ワインペアリング〜カンパーニャ州編〜

Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

新着口コミ

もっと見る

ワインペアリングを楽しめるお店、レストランを探す

都道府県から探す