ペアリングワイン

今宵はチーズ&ワインペアリング〜プロヴァンス編〜

プロヴァンスのチーズ

フランスのプロヴァンスで生産されるチーズは、牛乳から作られるチーズではなく、山羊乳から作られたチーズが主流です。1年の殆どが晴れのプロヴァンスでは、降雨量が少なく、石灰質の多い土壌では放牧に必要な牧草があまり育たないため牛の飼育には向きません。

そのため、アルプスの麓で食料を沢山必要としない山羊が飼育され、山羊乳を使ったシェーブルチーズが生産されています。乾燥した土地でも自生するハーブを食べて育った山羊乳は、爽やかな香りがほんのりと漂い、ワインとの相性も楽しませてくれます。

プロヴァンスのマルシェを覗いてみると、小ぶりなシェーブルチーズの上にプロヴァンス名産のハーブやラヴェンダーが添えられたチーズが沢山並んでいます。山羊は牛と比べて乳量が少ないので、チーズも小ぶりのものが多いようです。食べてみるとシェーブルの爽やかな風味にハーブやラヴェンダーの香りが染み込んでとても魅力的です。

日本ではあまり見かける事は多くはありませんが、見かけたら是非手に取ってみることをおすすめします。そして、プロヴァンス気分でシェーブルチーズにタイムやラヴェンダーを添えて自家熟成させるのもおすすめですよ。

今回は、プロヴァンスのチーズと相性の良いワインを紹介させていただきます。

バノン・ア・ラ・フォイユ

 

バノン・ア・ラ・フォイユは、アルプスの麓にあるバノン村という小さな村で生産される丁寧に栗の葉に包まれた山羊乳のチーズです。

2003年にAOCを取得し、製造方法が統一され、秋に収穫した茶色の栗の葉を5%のお酢を加えた熱湯に通してからチーズ全体を覆うように包み、8~12℃の熟成庫で約2週間ほど熟成させて順次出荷されます。

一般的なシェーブルに想像する爽やかな酸味は穏やかで、栗の葉の落ち着いた香ばしい香りにクリーミーでしっとりしたコクの豊かなチーズです。夏の終わりから秋にかけて食べたくなる味わいです。

落ち着いた風味の赤ワインや、熟成したら木樽の風味が香るシャンパーニュを合わせるのがおすすめです。

 

▶︎リバンベル アレクサンドル・ダレ

ワイン造りを始める前は免疫学の研究者だった異色の経歴をもつアレクサンドル・ダレは、プロヴァンス一押しの生産者です。ワイン好きが高じた彼は、5年間もの有給休暇を使って、ドメーヌ・デュ・ブ・デュ・モンドやドメーヌ・ガヌヴァなど錚々たるドメーヌで働き、栽培と醸造を働きながら学びました。

2015年には、ドメーヌ・デュ・ポッシブルで自分のキュヴェのワインを初めて醸造し、自然公園の豊かな自然と、山吹色の歴史的な建築物が共存する風光明媚なプロヴァンスのリュベロン地方で、2016年から自らのワイン造りを始めたばかりです。

ブラックベリー、ザクロ、枯れ草、なめし革などほんのりと野趣のある香り。甘やかさのある果実味に、しなやかな酸味とエキス感、タンニンが溶け込み優しいフィニッシュとなります。

グルナッシュ、シラー、カラドックというマルベックとグルナッシュの交配種の3種類を除梗せずに10日間セミ・マセラシオン・カルボニック、ステンレスタンクで8ヶ月発酵、熟成し造られています。

セミ・マセラシオン・カルボニックの影響で、旨味のエキス感はありつつも、タンニンが強過ぎないしなやかさと落ち着きのある味わいに仕上がっています。

ペアリングのポイントは、このワインから感じられる枯れ草の風味と、バノンの栗の葉の風味を合わせることです。タンニンが強過ぎず、セミ・マセラシオン・カルボニックの甘やかな風味もミルクの優しい甘さを引き立ててくれます。

ローヴ・デ・ガリッグ

ローヴ・デ・ガリッグは、古くからプロヴァンスの地で飼育されているローヴ種の山羊のミルクを使ったチーズです。

自生するタイムやローズマリーをたっぷりと食べて育つので、ほんのりとハーブの香りが感じられるのが特徴です。

そして、爽やかな酸味があり、プロヴァンスのワインと合わせて夏の休日のひとときにぴったりなチーズです。

合わせるワインは、爽やかさを引き立てるスッキリとした味わいのプロヴァンス・ロゼがおすすめです。

 

▶︎コレイユ・ロゼ シャトー・ド・ロックフォール

シャトー・ド・ロックフォールは、レイモンド・ヴィルヌーヴが現オーナーを務め、ビオディナミにて畑の栽培を行い、テロワールを繊細に映し出したプロヴァンス・ロゼは名刺代わりの1本です。

コート・ド・プロヴァンスの国立公園のサン・ボーム山の麓に位置する畑は、標高が高く、北や北西向きで日照が抑えられるため、この地で栽培されたブドウは酸が豊かで透き通るような繊細な味わいのワインができます。グルナッシュ、シラーを使ったこちらのロゼもその特徴がよく表れています。

フレッシュなグレープフルーツやアプリコットにピンクペッパーや爽やかなハーブのニュアンス。瑞々しい果実味に豊かなミネラル感と旨味、溌剌とした酸がキレイに広がります。

ローヴ・デ・ガリッグと合わせる事で、ワインのもつハーブの香りが、ハーブを食んで育ったシェーブルの特有のフレッシュさを引出します。冷蔵庫で保管する際にタイムやローズマリーを添えるとより香りが豊かになり相性も楽しめます。

少し珍しいプロヴァンス産のシェーブルチーズとプロヴァンスワインの相性を楽しんでみてくださいね。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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