ペアリングワイン

今宵はチーズ&ワインペアリング〜ブルゴーニュ編〜

ブルゴーニュのチーズ

ブルゴーニュ地方は、一大ワイン産地として有名ですが、実は酪農も盛んです。ブルゴーニュを走る列車の車窓からは、壮大に広がる牧草地や沢山の牛を眺めることができます。

『ブルゴーニュのチーズといえば?』と聞かれて一番に思い浮かぶのは、チーズの王様と称される『エポワス』ではないでしょうか?

エポワスは、塩水とマール・ド・ブルゴーニュで表面を洗って熟成させたチーズで、独特な漬物のような芳醇な香りとクリーミーでとろける味わいが特徴のグルマンディーズに愛されるチーズです。あまりにも有名なエポワスの影に隠れてしまっていますが、他にもブルゴーニュには美味しいチーズが沢山あります。

今回は、そんなあまり知られてはいないブルゴーニュのチーズを紹介させていただきます。是非ブルゴーニュワインと合わせてお愉しみください。

シャロレ

こちらのシャロレは、ブルゴーニュの南で生産される無殺菌の山羊乳を使ったシェーブルチーズです。2010年にAOC認証を取得しました。木樽の栓の形とよく似ているので、樽栓型を意味するボンドン型と呼ばれています。

淡いオレンジ色をしていて、しわの寄った外観、熟成するにつれて青緑色のカビが付着します。皮の中は真っ白できめ細やか、ギュッと詰まった質感が特徴的です。製造時にゆっくりと時間をかけて型入れするので、引き締まった質感になります。

山羊乳の風味が豊かで塩気があり、酸が穏やかな味わいで、熟成が進むとヘーゼルナッツやアーモンドのようなナッティな風味が出て、コクも豊かで至福の味わいとなります。

◆フレッシュで若いときには…

▶︎サン・ブリ・ムーリー ドメーヌ・ジレーヌ・エ・ジャン・ユーグ・ゴワゾ

フレッシュなシャロレには、ほんのりと青い香りがするので、その爽やかな香りを生かす白ワインがおすすめです。ブルゴーニュの北部にあるサン・ブリは、ソーヴィニヨン・ブランを使ったワインが生産されることで有名です。

こちらゴワゾのサン・ブリ・ムーリは、グレープフルーツやレモン、パッションフルーツの香りに、ミントやカシスの芽など爽やかな香り、アカシアの花の蜜のような甘やかさを感じさせる香りが入り混じって感じられます。

しなやかで軽快な飲み心地ですが、たっぷりのエキス感に豊かなミネラルや、旨味が詰まっていて、クリスピーな酸がシャープでドライな印象を与えます。

ゴワゾのワインは何を飲んでもそのポテンシャルの高さに驚かされます。フレッシュシェーブルの爽やかな魅力を存分に高めてくれるので、是非合わせて楽しんでみてくださいね。

◆熟成感が出てきたら…

▶︎プイィ・フュイッセ・ラ・マレショード ドメーヌ・ソメーズ・ミシュラン

こちらは、熟成したシャロレの複雑でコクの豊かな味わいに相応しい奥深さをもつ白ワインです。プイィ・フュイッセの急斜面でビオディナミに取り組み、早朝から日暮れまでひたすらに働き、ヴィニュロンという職業が骨の髄まで入り込んでいるような、ソメーズ・ミシュランの誠実さや深淵さが伝わってくるかのような素晴らしい味わいです。

この区画は、周りに比べて気温が高いため、厚みのある果実味が特徴です。マルメロや洋梨のコンポート、ドライアプリコット、蜂蜜、アーモンド、ライムストーン、ブリオッシュの香りが奥から奥から出てきます。

滑らかでリッチで厚みのある果実味に、下支えのしっかりした酸、豊かな旨味と塩味がかったミネラルが余韻にかけてしなやかに広がります。抜栓して3日かけてゆっくりと魅力を味わっていただきたいワインです。

シャロレの熟成による風味と、ワインの持つそれぞれの香りがマッチして口溶けの滑らかさも同調する至福のペアリングです。

アフィネ・オ・シャブリ

アフィネ・オ・シャブリ は、ブルゴーニュのシャブリのマールと塩水で表面を洗って熟成させたウォッシュチーズです。エポワスと同様に独特な香りがありますが、エポワスよりも控えめで、食べてみるととってもクリーミーでミルクのコクが豊かで食べやすいです。チーズを普段召し上がらない方にもおすすめできるチーズです。

◆合わせるワインは勿論…

▶︎シャブリ・プルミエ・クリュ・モンマン ジャン・ポール・エ・ブノワ・ドロワン

アフィネ・オ・シャブリには、是非同じ土地のものと合わせてお愉しみください。こちらはシャブリのプルミエ・クリュの中でも力強くボリュームのあるワインを生むモンマンのワインです。

よく熟したグレープフルーツやネクタリン、キャラメリゼにしたリンゴ、香ばしく炒ったアーモンド、ヴァニラやバターの香り。厚みがあり、まろやかな口当たり、豊かな酸が旨味を伴って口内に広がり、余韻にはバターのリッチな風味が残ります。

ボリュームがあるので、約35~40%のワインを10ヶ月樽熟成しバランスを取っています。このワインに限らずですが、バターの香りがするワインは、チーズと合わせるとミルクの香りがより芳醇に香るのでおすすめです。

エイジー・サンドレ

こちらはチーズの王様エポワスに灰をまぶして長期熟成して作られるエイジー・サンドレ というチーズです。

灰はブドウ樹や樫の木を燃やして出来たもので、まだチーズの保管庫が無かった時代に虫を寄せ付けないためにまぶされたのが始まりです。灰をまぶすことにより、酸味と乾燥も抑えることが出来ます。

そして、エポワスは独特の風味で玄人好みと言われていますが、こちらのエイジー・サンドレは灰の効果で香りが抑えられているので、チーズをあまり食べ慣れない方にもおすすめです。

熟成が進み、中のチーズがトロトロになったら食べ頃です。ナッツのような風味が豊かに感じられ、ミルクのコクと甘みが豊かになり、表皮の灰には少し塩が含まれているのでその塩味も味わいのアクセントとなり何とも美味なチーズです。

◆灰のフレーヴァーにマッチするアーシーな赤ワイン…

▶︎ジヴリ・ル・プレフェレー・デュ・ロワ・アンリ IV ルモワスネ・ペール・エ・フィス

ジヴリという産地は、コート・シャロネーズにあり、ブルゴーニュの錚々たる村々の中ではあまり目立たない存在です。ですが、価格高騰が辛いブルゴーニュワインの中でもコストパフォーマンスに優れたワインが幾つもあり、おすすめのワイン産地です。ジヴリの何処か牧歌的でアーシーな個性や豊かな果実味が、エイジー・サンドレのクリーミーなミルク感を高めてくれます。

フランス国民に人気の高いアンリ4世がジヴリの赤ワインを愛飲したことから、現在は少なくなっていますが、ジヴリ産のワインのエチケットには、このワインのキュヴェ名でもあるLe Prefere Du Roi Henri IV(アンリ4世のお気に入り)と記されているものがあります。

イチゴやチェリーのコンポート、バラの花弁、なめし革、腐葉土、タバコ、マッシュルーム、シナモン、アニス、ヴァニラなど深みのある複雑な香り。スムースな舌触りで、熟した果実味にしなやかな酸、溶け込んだタンニンが落ち着いた印象を与えます。

エイジー・サンドレの灰の風味とワインのアーシーさがマッチし、ミルクの甘みやワインの果実味が際立ち、相性抜群の組み合わせです。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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