ペアリングワイン

夏におすすめ!ムール貝の絶品料理に合うワイン

夏の風物詩『ムール貝』

フランスでは夏の風物詩として知られ、7月に漁が解禁されるとビールやワインと合わせてバケツ一杯のムール貝を楽しむ光景がよく見受けられます。

日本では地域にもよりますが、大体6月から10月にかけてが旬と言われています。日本でもムール貝という名のほうが馴染みがありますが、日本名はムラサキイガイ。漁村などでは古くから茹でて佃煮にし、保存食として食べられていたそうです。

ただ、このムール貝は少し注意が必要です。とても繁殖力が強いので環境の良くない汚い海でもスクスクと育ちます。そして、貝毒を溜め込みやすい性質があるため、きちんと養殖されたものなら安心して食べることができますが、水質などの環境が分からないムール貝を食べるのは避けたほうが良いです。

フランスでは、全生産量の約40%を占めるのがノルマンディー産です。特にモン・サン・ミッシェル湾で養殖された『ムール・ド・ブショー』というムール貝は最高級品として知られています。

身は小ぶりですが、ぷっくりと肉厚で濃厚な旨味が詰まっています。モン・サン・ミッシェル湾では、ヨーロッパで一番の潮の干満差があり、大潮になると干潮時と満潮時の差が最大で約15mにも及びます。

この大潮と強い潮の流れが餌となるプラクトンの発生を促すため、ムール貝のみならず牡蠣や豊富な魚介類にとって恵まれた環境と言えます。

伝統的なオーク材の杭(ブショー)にムール貝が付いたロープを巻き付けて育てる養殖方法も特徴的です。ここで育ったムール貝は、カルシウムと鉄分が豊かで、深い味わいを生むとされています。

そんなムール貝ですが、ワインは何が合うと思いますか?各地の伝統的な組み合わせを探ってみましょう!

ムール貝の伝統的な組み合わせ

◎エクラッド
シャラントで見かける豪快な料理がエクラッドです。ムール貝を板の上に放射線状に並べて、松の葉やブドウの枝を被せて蒸し焼きにして食べます。貝の殻は表面が焦げて黒くなりますが、中のムールは燻製の香りを纏って旨味も凝縮してとっても美味。合わせるワインは産地のピノ・デ・シャラントの白が鉄板です。

◎ムール貝のシャラント風
こちらは、ムール貝をベーコンやマッシュルームとともにピノ・デ・シャラントと生クリームで煮込んだお料理です。ピノ・デ・シャラントの白と相性良く楽しめます。

◎ムクラード
ムクラードとは、ムール貝のカレー風味のことです。こちらもシャラント地方の郷土料理で、ムール貝の養殖が行われているラ・ロシェルという港町の北にあるエスナンドのビストロ『シェ・ショコラ』で考案されたメニューです。港にはアフリカからスパイスを運ぶ船が停泊し、そのスパイスを使って出来上がったのがムクラードです。こちらはピノ・デ・シャラントのロゼが合います。

◎ムール貝の白ワイン蒸し
今や世界中で見かける料理ですが、元々はフランドル地方の郷土料理です。フレンチフライが必ず添えられていて、現地ではフランドル産のビールやアルザスのピノ・ブランを合わせます。この料理は、フランス語でマリニエール=漁師風の意味で、ブルターニュやノルマンディー地方でも名物の料理として知られており、名産のシードルやポワレと一緒に楽しまれています。

◎ムール貝の香草パン粉焼き
こちらの料理は、南フランスやイタリアでよく見かけます。よく冷えたプロヴァンス・ロゼや、カシー・ロゼと最高のペアリングです。見た目が華やかで貝を器にして食べやすいため、パーティーなどのおもてなし料理にもおすすめです。

◎フレッシュのムール貝とエシャロット・ヴィネガー
マルセイユではフレッシュのムール貝にエシャロット・ヴィネガーを合わせた料理があり、ピクプール・ド・ピネの白ワインと抜群の相性です。

◎ムール貝のティエッラ
こちらはムール貝、お米、ジャガイモを層になるように重ねて焼き上げたイタリア・プーリア州の郷土料理で、他にもズッパ・ディ・コッツェ直訳するとムール貝のスープもプーリア州を代表する料理です。地元ではミヌトーロと呼ばれるフィアーノ・ディ・プーリアの白ワインをよく冷やして合わせてみてくださいね。

プーリア州は、イタリア最大のムール貝の産地であるターラント湾を抱え、古くからムール貝の料理が豊富にあります。イタリア語でコッツェ=ムール貝とメニューに書いていなくてもターラントと記載があればムール貝を使ったお料理であることが殆どで、それほどターラント=ムール貝を象徴しています。

美味しそうなお料理を眺めているとお腹が空いてしまいますね。代表的なお料理を紹介させていただきましたが、各地で合わされているワインをヒントに、ムール貝と合わせてお楽しみいただけると幸いです。

おすすめのお取り寄せ

お取り寄せを紹介させていただきますので、是非ご自宅で絶品ムール貝を堪能してみてくださいね。

▶︎モン・サン・ミッシェルのムール貝

先程もご紹介させていただいたモン・サン・ミッシェル産のムール・ド・ブショーです。魚介類で唯一AOCを与えられたモン・サン・ミッシェルのムール貝。認証期間は7月から2月位迄と期間が限定されています。他の産地のムール貝と食べ比べてみると、やはり全然違うクオリティに驚きます。

ムール貝の白ワイン蒸しを美味しく調理するためには、強火でさっと火を通すことが大切です。熱した鍋にお好みでハーブや白ワイン、そしてムール貝を加えて、強火でさっと火を通します。約2分ほど経ったら鍋を動かして上下を入れ替え均等に熱が入るようにして、2分ほど経ったら完成です。召し上がる際にはフランス人のようにムール貝の殻をトングのように使ってみるのもおすすめです。

ムール貝の絶品料理に合うワイン

最後に、ムール貝の料理に合うおすすめのペアリングワインを紹介させていただきます。

▶︎ピノ・デ・シャラント 5 イヤーズ オールド シャトー・ド・ボーロン

ピノ・デ・シャラントとは、未発酵のブドウジュースにコニャックを加えることで、アルコール発酵を停止させたヴァン・ド・リキュールに分類されます。

糖分が多く残るために甘口のタイプが殆どですが、発酵後にコニャックを添加した辛口タイプも存在します。こちらのタイプは中甘口で、約5年間樽で熟成させ複雑でまろやかな風味が特徴です。

マンダリンオレンジや白い花、蜂蜜にヴァニラの甘やな香りが豊かに香ります。まろやかな口当たりに爽やかなマーマレードジャムのような甘さが広がりコクの豊かな味わいです。

ムール貝に生クリームを使った重厚感のあるお料理には、このくらい甘い方がばっちりと合います。

* 原産国:フランス
* 産地:シャラント
* 品種:セミヨン80%、ソーヴィニヨン・ブラン20%
* 生産者:シャトー・ド・ボーロン
* 味わい:甘口☆★☆☆☆辛口
* 容量:750ml

▶︎フェウド・モナチ ミルス・フィアーノ・サレント カステッロ・モナチ

黄桃やパイナップル、白い花とその蜜のような香り。まろやかな果実味に優しい甘さ、キレのある酸味と豊富なミネラル感が輪郭を引き締めます。

カステッロ・モナチは、プーリア州の中でも大規模な農園を所有し、国際品種や伝統品種の栽培、ワインに使用するコルクやボトル、エチケットの紙など、栽培から製造の全てにおいて環境を配慮したワイン造りを実践しています。

ムール貝のコクを見事に引き出す、甘美なフィアーノの魅力を感じてください。

* 原産国:イタリア
* 産地:プーリア
* 品種:フィアーノ
* 生産者:カステッロ・モナチ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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