アメリカのハイブリッド品種と家庭料理のペアリング

by Mari Nomura

ハイブリッド品種はクオリティが低い？

ハイブリッド品種というのをご存じですか？日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、日本の固有品種と認定されたマスカット・ベーリーAがハイブリッド品種にあたります。ハイブリッド品種とは、親同士の種族が違う品種をかけ合わせてできた交配種の事で、主にヨーロッパ品種とアメリカ品種をかけ合わせて生まれた品種の事を言います。

発祥は19世紀、アメリカからもたらされたブドウの樹を襲う害虫フィロキセラが大流行した時、フィロキセラに耐性のあるアメリカ品種とヨーロッパ品種をかけ合わすことで、病気へ対抗できたことが起源です。

しかし、この病気へ耐性があるということが、従来のヨーロッパ品種に取って代わってしまい、安価なワインを大量に生み出す懸念があるということから、ヨーロッパでは栽培禁止、または制限されてきたという歴史があります。一般的にハイブリッド品種は低クオリティだというイメージがあるのは、こういう歴史的な背景からでしょう。

実は面白いハイブリッド品種

私自身、日本ではハイブリッド品種をほぼ飲んだことがなかったのですが、ニューヨークに暮らし始めてからワインショップでよく見かけるようになりました。それもそのはず、ニューヨーク州のワイン産地では伝統的にハイブリッド品種が栽培されてきました。更にここ数年では、アメリカのみならずフランスを始めヨーロッパでもハイブリッド品種の研究に力を入れているとか。

アメリカ国内で消費されるので値段も手頃なものが多く、普段飲みに飲む機会が増えました。個人的には今後もっと発展して面白くなっていくのではないかと期待をしています。そして、先日訪れたニューヨーク州のハドソンリヴァーバレーにあるベンマール・ワイナリーで美味しいハイブリッド品種を見つけたので、ローカルの食材を使って家庭料理とのペアリングを試してみました。

生産者：ベンマール・ワイナリー
生産地：アメリカ、ニューヨーク州、ハドソンヴァレー
品種：バコ・ノワール（BACONOIR）
販売価格：25$(約2,750円)

ローカル食材とのペアリング

黒ブドウのハイブリッド品種であるバコ・ノワールとは、もともとフランス人のバコさんがフランスの白ブドウ品種フォル・ブラン種とアメリカ系ヴィティス・リパリア系の品種を掛け合わせてできた品種。冷涼な気候に適していて、ニューヨーク州を始め、北米やカナダで栽培されています。

試したワインはロゼですが、色がとても濃いピンク色で、さくらんぼの様な甘酸っぱさとリンゴの皮の様なほんの少し苦味が感じられるロゼワインでした。

ペアリングしたものは、NY近海で採れたサーモン。近所のサーモンの卸売会社ACMEで購入したローカルのサーモンを、カットしたフランスパンの上にクリームチーズを塗ってスライスオニオンとケッパーをサーモンと一緒にのせただけのシンプルなお手軽ブルスケッタです。

脂がのった濃厚なスモークサーモンの甘みとバコ・ノワールの木苺の様な甘酸っぱさをシャキシャキとしたスライスオニオンが繋ぎとなり、さっぱりしつつも甘みが口に広がりました。晴れた日に公園で芝生に寝っ転がりながら食べたい組み合わせです。（クリームチーズは挟む方が断然美味しいのですが、サーモンの脂身が強い分、少しオイリーになりすぎるので、ロゼの軽やかさには少し重すぎました。ペアリング的にはチーズを挟まないで試した方が、相性が良かったです。）

ハイブリッド品種のペアリング。面白さはローカル性？

ロゼワインとサーモンは定番のペアリングかもしれませんが、ワインと食材を共にローカルなものにすると、不思議と今まで味わったことのない新鮮なペアリングを発見できました。

日本では、ニューヨークの食材とワインでペアリングをするのは難しいですが、マスカット・ベーリーAやデラウェア、コンコード等の様に、実はハイブリッド品種は日本ワインでは結構作られています。

ワイン産地の郷土料理と合わせても面白いだろうし、住んでいる地元の食材と合わせて自分でオリジナルのペアリングを発見することも楽しいですよね。その土地でしか味わえない面白さを、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。