品種も造り方も多種多様!イタリアの自然派ワイン〜北イタリア編〜
イタリアのワインに使用されるぶどうは、その土地ならではの土着品種が多く500種以上あります。
その理由は、自宅でも気軽にワインをつくってきた文化や、国際的な品種が流行しても自分たちの土地のぶどう品種を大切にするといった地産地消を重んじるイタリア人の国民性が背景にあったからではないかと考えられています。
特に自然派ワインにおいては、地域ごとに違う土着品種を使ったものが多く、造り方も様々です。
今回は北イタリアの自然派ワインと土着品種について紹介したいと思います。
オレンジワインの立役者、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州
フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州は、イタリアの北東部、オーストリアとスロヴェニアに隣接しています。白ワインが多く、リボッラ・ジャッラやフリウラーノという土着品種が有名です。
自然派ワインの巨匠といわれる、「ラディコン」もフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州にあります。ラディコンをはじめ、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の生産者は、ワイン発祥の国ジョージアの製造方法に注目し、オレンジワインを世界に広めた立役者として有名です。
ジョージアの製造方法の1つに、ぶどうの皮ごと一緒に漬け込み発酵させる方法があります。いわゆる醸しワインというもので、白ワインであっても皮のタンニンがガシッと感じられ、アンバー色のようないわゆるオレンジワインになります。また、ジョージアの古代からの醸造方法で、クヴェヴリという壺を使って発酵熟成させることも特徴的です。
ラディコンは、いち早くこのジョージアの古代からの自然な方法でワイン造りを始め、世界にオレンジワインが広まりました。シェリーのような酸化のニュアンスや、出汁のような味わいが特徴で、自然派ワインマニアに非常に人気のワインです。
世界中でただ一カ所でしか栽培されない土着品種がある、トレンティーノ=アルト・アディジェ州
トレンティーノ・アルト・アディジェ州は東アルプス山脈の一部にあり、スイスと隣接したイタリア北東部にあります。
この州には、世界でただ1カ所でしか栽培されていないという土着品種があります。それは、「トレンティーノの最後の神話」とも呼ばれている、トレンティーノ側のコンポ・ロタリアーノで栽培される「テロルデゴ」です。
もともと地元以外の人は知らない安価なワインにつかわれていた土着品種でしたが、今ではテロルデゴのワインはイタリアを代表する銘柄ワインとして世界中に知られています。
テロルデゴの素晴らしさを世界的に有名にしたのが、「フォラドリ」です。フォラドリのテロルデゴ スガルツォンは、テロルデゴ単一で造られ、アンフォラ(壺)で熟成された赤ワインです。冷涼地でありながら、コクがしっかりあり、ボルドーのワインのようにずしっと重みがあるワインです。
自由でカジュアルな、リグーリア州
リグーリア州は、お隣のピエモンテに比べメジャーではないので聞いたことがない方も多いかもしれません。西側がフランスプロヴァンス地方と隣接しており、ヴェルメンティーノなどの品種が有名で、カジュアルなワインが多い印象です。
「ステーファノ レニャーニ」のbamboo Roadは、この地域の伝統的なトレッビアーノとマルヴァジーアのセパージュ(品種のブレンド)で造られたワインです。マルヴァージアは、グラッパなどにも使われている品種で有名です。濃いイエローの外観と、ハーブのような味わいがあり複雑でコクがあります。
このワインはなんといっても香りに特徴があり、自然の香水のようなアロマを感じるだけでも癒されるワインです。
抜栓後2―3日後の変化も楽しめるおすすめカジュアルワインです。
バローロで有名なネッビオーロだけではない、ピエモンテ州
ピエモンテ州は、イタリアのワインの王様ともいわれている銘醸地バローロで有名です。品種はネッビオーロがよく知られていますが、あまり知られていない土着品種もたくさんあります。その中の1つであり、モンフェッラートの土着品種の黒ブドウ「ルケ」を使ったピエモンテ「らしくない」自然派ワインをご紹介したいと思います。
「フェッラーロ・マウリッツォ」は、非常に面白いワインを造ることで近年話題になっています。アル・ソル・デル・マッティーノは、土着品種ルケとタンニンと渋みとしっかりとした酸味が特徴のグリニョリーノで造られた微発砲の赤ワインです。ルビー色で、しっかりと力強いフルーティーな香りがあります。タンニンも程よくあるのでお肉にも合います。まろやかだけどほんのわずかなシュワッと感がなんとも面白い仕上がりになっています。エチケットも個性的ですね。
今回はイタリア北部のほんの一部のご紹介でしたが、イタリアには、その土地ならではの、聞いたことのない土着品種のワインがたくさんあります。
家庭で気軽にワインが造られているイタリアでは、小さな村で家族秘伝のワインなどもあるかもしれませんね。
イタリアのワインを飲むときは是非品種について興味を持ちながら飲んでみてください。新しい発見があります。
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日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
365日違うワインを呑むをモットーに、自然派ワインを毎日嗜んでいます。
造り手さんの思いや製造工程に興味があり、人と地球に優しいワインを大切にその良さを伝えるワインセミナーを不定期で開催しています。
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