ペアリングワイン

初夏の魚に合うおすすめワイン

梅雨真っ只中の今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。じめじめした長い雨の日があったり、急に気温が高くなったりと不安定な時期です。このような時期はスッキリ冷えた白ワインが美味しく感じますが、できればそれに旬の魚料理も合わせてみたいですよね。

そこで、初夏のこの時期に旬を迎え始める魚のご紹介と、それにワインをペアリングさせるポイント、おすすめの銘柄等を、最近始めた「釣り」の知識等も織り交ぜながらご案内しますので、ぜひ楽しんで御覧ください。

6月に旬を迎える初夏のお魚とは

魚の旬は日本全域で見ると地域の気候や海流によって若干の違いが出てきますが、概ねアジ、キス、イサキ等が初夏の時期に旬を迎えると言われています。いずれも年中市場に流れているような魚ですが、やはり旬を迎えた味わいは格別なものになります。

今回は、この3種類に絞って調理方法とワインのペアリングについて考えてみます。

そもそも料理とワインのペアリングとは

料理とワインを合わせた際に、その相性が良く、より一層美味しく感じることができる組み合わせのことを「ペアリング」または「マリアージュ」と言ったりします。

「肉には赤ワイン、魚には白ワイン」は一般的な方にも浸透している考え方ですが、単純にそれだけでは美味しさを引き出すことはできないと思っています。

ちょっと飛躍して人間の恋愛関係から結婚に至るまでに置き換えてみましょう。生まれも育ちもまったく異なる二人の人間が一緒になり、価値観を共有しながら結婚(本来の意味のマリアージュ)に辿り着くためには、いくつかのきっかけが必要です。

「育ってきた~環境が~違うから~♪」を思い出すと年齢がばれてしまいますが、つまり異なる2つを合わせて最良の組み合わせを得ることは容易では無いということです。

ではどのようなきっかけがあれば良いのか、それは共通点を持たせることだと思います。共通の趣味であったり、共通の目標であったり、色々ありますが、ワインと料理のペアリングについてもこの共通点というポイントが非常に重要になります。

食材の持っている味わいや香りの要素と、ワインが持っている味わいや香りの要素で共通する部分を探してあげれば良いのです。もしそれらの共通する要素が見つからない場合は、お互いにとって相性の良い食材を加えて共通点を作り出すのもテクニックです。

料理とワインを繋ぎとめる共通の食材、私はこれを「繋ぎ」と呼んでいます。私は生牡蠣を食べる時は日本酒が最高だと思っていますが、白ワインと合わせる場合には軽くレモンとオリーブオイルをかけて食べます。この場合、レモンとオリーブオイルが「繋ぎ」の役割を果たしてくれています。

今回は魚料理とワインを合わせるための「繋ぎ」も意識しながらご紹介してきます。

アジに合わせるワインのペアリング

アジは私の大好きな魚の内の一つです。生でも、焼いても、フライにしても最高に美味しいアジはまさに食卓のオールラウンドプレイヤーのような存在ですね。(しかも安いです)

最近では、小型のルアーやワームを使った「アジング」という釣りが人気です。また、サビキと呼ばれる複数の針がついた仕掛けで簡単に釣り上げることができるので、休日のファミリーフィッシングの対象魚としても人気があります。

釣りに興味がある方はぜひ「放課後ていぼう日誌」 というアニメを見てみてください。熊本県天草を舞台にした女子高生が釣りにのめり込んでいくストーリーで、アジは頻繁に登場します。

10㎝前後の小型の物を豆アジ(九州ではアジゴ)と呼び、そのままから揚げにしたり、南蛮漬けにしたりするのが人気です。刺身で食べるなら20㎝以上のアジが裁きやすく、食味も良いとされています。

アジのおすすめ料理とワインのご紹介

※写真はイワシです。

新鮮なアジが手に入るこの時期は刺身で食べるのも美味しいですが、ワインとのペアリングのためにひと手間かけてみましょう。おすすめは「アジの超速アヒージョ」です。

熱々に熱したオリーブオイルの中に、ニンニクと鷹の爪、ハーブソルトを加えます。刺身でも食べれるアジを3枚に下ろして小骨を取ったらそのままオイルの中へ投入、火を止め余熱で調理します。

食べる直前に軽くレモンを絞ってみてください。これがワインとの「繋ぎ」になります。半生でとろけるような食感のアジはぜひ一度試してみる価値ありです。簡単に素早く調理できるので、急な来客のおつまみにもおすすめです。

【ワインのご紹介】

▶︎シャブリ ウィリアム・フェーブル

定番のシャブリは高価なレンジになるとマロラクティック(乳酸発酵)や新樽熟成などを行い、リッチでふくよかな味わいになりますが、安価なレンジの物はフレッシュな酸味とフルーティーさが前面に表現された物が多くなります。

その中でもウィリアム・フェーブルのシャブリは透き通った雑味のないシャープな酸味と、レモンやライムを感じられるフレッシュな香りがしっかりと表現されています。

さらにアジを食べたくなる魔法のようなペアリングです。

キスに合わせるワインのペアリング

夏ころから秋口にかけて産卵期を迎えるキスは6月頃に旬を迎えます。基本的に海の浅い砂地に生息しており、6月から8月にかけて最も釣りやすい季節になります。

餌は小エビやゴカイなどで、砂浜からちょい投げという仕掛けで釣ります。ホクホクとして淡泊な身なので、天ぷらでも人気のある魚種になります。

キスのおすすめ料理とワインのご紹介

キスは前途したとおり、ホクホクとした身と淡泊で雑味の少ない味わいなので、やはり天ぷらが最良です。天ぷらにすることで衣の甘味や、油分のボリューム感が加わり、比較的リッチな味わいのワインとも合わせることができます。

さらにペアリングを最良の物にするためにすだちを軽く絞ってみましょう。この場合、すだちの酸味と香りがワインとの「繋ぎ」となります。

【ワインのご紹介】

▶︎プイィ・フュイッセ CC ギュファン・エナン

フランスブルゴーニュ地方マコネ地区の価値観を根底から変えてくれたワインです。私は個人的には、マコネ地区は比較的安くてそこそこなワインの産地だと思っていましたが、このワインは驚くほどの密度と、口にいれた瞬間に歓声を上げてしまう程パワフルな仕上がりになっています。

果実味が強く、甘くダレてしまいがちな味わいの中に、しっかりと芯の通った酸味がバランスがよく、グラン・クリュのワインに匹敵すると思っています。キスの天ぷらの贅沢で繊細な旨味にしっかりと寄り添ってくれるワインです。

イサキに合わせるワインのペアリング

寒い冬を超えて、初夏の産卵に向けて栄養を取り始める6月頃が最も美味しいとされます。特に梅雨時期のイサキが有名で、その美味しさは鯛を超えるという人も。

大型の個体は比較的深い岩礁地帯に生息していますが、梅雨時期になると浅場にも移動してくるので、餌釣りやルアーフィッシングでも釣り上げることができます。ちなみに長崎では「イッサキ」と呼ばれています。

あっさりとした味わいながら、肉質は引き締まっているので焼き物にするのがおすすめです。新鮮な魚が手に入った際には刺身にも挑戦してみましょう。

イサキのおすすめ料理とワインのご紹介

ワインと合わせるなら「イサキの香草焼き」がおすすめです。下処理をしたイサキに軽く塩コショウで下味をつけ、タイム、ローズマリー、ニンニクと一緒にオーブンで焼き上げます。仕上げにたっぷりのオリーブオイルをかけて完成です。

ペアリングを最良にするための「繋ぎ」としてジェノベーゼソースを使ってみましょう。バジルやパルミジャーノ、松の実から作られるジェノベーゼソースは簡単に自宅で作る事ができますが、市販で瓶詰されたものもありますので、使ってみてください。

【ワインのご紹介】

▶︎クラウディ・ベイ ソーヴィニヨン・ブラン

ニュージーランドで造られるとソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールは、他のエリアでは真似が出来ないほど品種の個性を色濃く表現してくれます。特にこのクラウディ・ベイは、ニュージーランドワインのクオリティを世界に知らしめた1本と言えるでしょう。

熟したグレープフルーツやハーブが入り混じる爽快な香りと、果実味をしっかりと感じることができる味わいは、少し蒸し暑いこの時期にはピッタリです。

イサキの淡泊な旨味や少し磯の香りが残る風味に、ハーブやジェノベーゼソースでしっかりと清涼感を加えて楽しんでみてください。お好みで料理に少しレモンを絞ってみるとさらにワインと良く合います。

まとめ

今回は初夏に旬を迎える3種類の魚料理とワインのペアリングをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

梅雨のジメジメが吹き飛ぶような爽快なイメージで白ワイン中心にご紹介してきましたが、調味料やスパイスを使ってみたり、照り焼きにして味付けを濃くしたりすることで、ロゼワインや軽めの赤ワインとも楽しめると思います。

大切なのは料理とワインの共通点を見つけて、「繋ぎ」の食材を加えながらペアリングを成功に導いてあげることです。様々な魚が美味しくなるこの時期に是非いろんなペアリングを楽しんでみてください。

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Yosuke Komatsu

東京都内の5つ星ホテルにてソムリエとして勤務後、京都、大阪、福岡、熊本と渡り歩きながら、その地域で様々な方に出会いワインを楽しむ。
「自分で作った牛肉でキャンプしながらワインを飲む」ことを人生の最終目標に設定し、長崎県にて畜産の新規就農に絶賛取り組み中。
パリの2つ星「ラ・トゥール・ダルジャン」にて1か月のソムリエ見習いをした事が唯一の誇りです。
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