イタリアのデザートワイン「ヴィン・サント」は「聖なるワイン」とも呼ばれ、人気の高い甘いワインです。特にトスカーナ州では、食後にはなくてはならないお酒です。

今回は、ヴィン・サントとそのペアリングについてご紹介します。

ヴィン・サントとは

ヴィン・サントは、イタリア中部のトスカーナ州を中心に造られている甘口のデザートワインです。収穫されたブドウを数か月ほど陰干しすることにより、糖分が高くなります。

水分が抜けて甘くなったブドウを圧搾し、樽の中で熟成させます。通常のワインは、地下などの涼しい場所で熟成させますが、ヴィン・サントの樽は伝統的には屋根裏に置かれます。暑い夏に発酵し、寒い冬に発酵が止まり熟成する、というサイクルを数年間繰り返すという製法です。

通常のワインの樽より小さなサイズの「カラテッリ」と呼ばれる樽で熟成されます。また、カラテッリには、伝統的に栗の木が使われます。

ブドウ本来の甘さを生かしたヴィン・サントは、自然の恵みと伝統的で特殊な手法により、あまーくなるのです。

ヴィン・サントの王道ペアリング、カントゥッチ

トスカーナ州のレストランでは、たいていデザートメニューに「カントゥッチとヴィン・サント」があります。必ずセットになっているカントゥッチとヴィン・サントは、だれもが認める王道のペアリングです。

カントゥッチはトスカーナの伝統菓子のクッキーで、バターが入っていないためかたく、ヴィン・サントに浸してやわらかくして食べるという習慣があります。グラスに入れやすいように作られたかのような細長い形をしています。

正式名称は「ビスコッティ・ディ・プラート」といい、フィレンツェの北西の町プラートが発祥の地です。まるごとのアーモンドがゴロゴロ入っているクッキーが定番ですが、アレンジバージョンもたくさんあります。チョコレートやピスタチオ、ドライフルーツなど、いろいろな味を楽しむことができます。

ここでは、アレンジとして人気があり、ヴィン・サントの味わいにもぴったりなドライイチジクを使ったレシピをご紹介します。

【ドライイチジクのカントゥッチのレシピ】

▼材料（約25個分）
小麦粉…250g
砂糖…220g
ドライイチジク…100g
卵…2個

▼作り方
①ドライイチジクを約1センチの角切りにする。
②台の上に、小麦粉と砂糖を混ぜて置き、真ん中にくぼみをつくり、そこに卵を落とし、フォークで少しずつ混ぜる。最後に塗る分の卵を少しだけ残しておく。
③まとまってきたら、ドライイチジクを加えて、手でこねる。
④幅約6センチ、厚さ約1センチの長細い棒状にする。
⑤天板にクッキングシートを敷き、④をのせ、残しておいた卵をかき混ぜ、ハケでぬる。
⑥180度のオーブンで約25分焼く。
⑦まだ熱いうちに、約2センチ幅でななめに切る。
⑧切った面を上にして、両面3分ずつオーブンで再度焼く。

ヴィン・サントとペコリーノチーズのペアリング

イタリアのワイン通は、ペコリーノチーズをグリルしてヴィン・サントとペアリングします。羊のミルクを原料とするペコリーノチーズは、トスカーナ州の名産でもあります。

数週間の熟成のやわらかいフレッシュタイプのものから、1年以上の熟成のハードタイプまで幅が広いですが、ヴィン・サントと合わせるペコリーノチーズはセミ・ハードタイプです。

チーズは厚めに2センチくらいに切ります。アツアツのフライパンで両面を焼き、表面が少し溶けるくらいの焼き加減にします。グリルすることで、チーズの脂肪と塩気が甘いヴィン・サントの酸味と甘味に包まれ、なんとも幸せなペアリングになるのです。

おすすめヴィン・サント

ヴィン・サントは地区ごとにDOC（統制原産地呼称）があります。特に有名なDOCは、キャンティ地区のヴィン・サント・デル・キャンティと、キャンティ・クラシコ地区のヴィン・サント・デル・キャンティ・クラシコです。

アルコール度数は16～17度ですので、通常のワインよりは高いですが、ほかの食後酒に比べると高くありません。熟成期間は3年以上と決められており、収穫されたブドウに対し、出来上がるヴィン・サントは35%以下の量でなくてはなりません。

ヴィン・サントは非常に有名な名称のため、DOC以外のものも数多く出回っています。その中には糖分を添加してある安価なものもありますが、それらはヴィン・サントではなく、ヴィン・サント風のリキュールです。ヴィン・サントは、ぜひ伝統手法で造られたDOCのものを味わってみてください。

フィレンツェ北東のキャンティ・ルフィナ地区にある中世の城、カステッロ・ディ・トレッビオで生み出されるヴィン・サントは、輝いた琥珀色で、デーツやサフランの香りがあります。味わいは甘すぎず、ほどよい酸味もあり、カラメルやコーヒー豆、ヘーゼルナッツのようなアロマが口の中に広がります。

まとめ

古くから親しまれてきた甘いワインのヴィン・サント。
ぜひ試してみてください。

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