ペアリングワイン

あなたの好きな香りから選ぶワイン〜花編Part2〜

前回の記事がご好評いただきまして、もう少しお花の香り別にワインを紹介させていただくことになりました。

今回もお楽しみいただけると幸いです。

香りのパワー

香りには様々な効果があり、嗅覚は視覚や聴覚と違って本能に直接作用するので、心や体に働きかける効果が高くあります。あなたの好きな花の香りからワインを選ぶことで、まるでアロマセラピーのようにワインの香りに癒されてみるのはいかがでしょうか?

もちろん、エッセンシャルオイルのような強い作用はないかもしれませんが、何か心に良い作用を齎してくれるかもしれませんよ。

スズラン

3大フローラルの一つに数えられるスズラン。お花から抽出できる香料がほんの僅かなため、世に出回るスズランの香りの殆どが合成香料というとても希少な香り。

1591年5月1日、幸せの象徴であるスズランが贈られて大変喜んだシャルル9世は、毎年宮廷で贈るようになり、これがフランス全土に広がり、フランスでは毎年5月1日は『Muguet(スズラン)の日』として家族や大切なパートナーへスズランを贈る習慣があります。幸せが訪れるお花として、贈り物やブライダルブーケとしても人気です。

そんなスズランの香気成分ですが、これだけでもスズランのような香りのリナロール、バラの香りのシトロネロール、ゼラニウムの花の香りのゲラニオール、シナモンの香りのシンナミックアルコール、トマトの香り成分でもあるシス-3-ヘキセノール、様々な花の香り成分であるフェチネルアルコールなどが含まれていて、この香気成分のバランスによってスズランの香りとなります。

ややグリーンノートのあるスズランの香りは、集中力を高め、疲れにくくする効果があることが分かっています。

▶︎メディネット・ラヴォー・デザレー・グラン・クリュ ドメーヌ・ルイ・ボヴァール

スイスが世界に誇るワインメーカー『ドメーヌ・ルイ・ボヴァール』。レマン湖のほとりで非常に希少で最高品質のシャスラのワインを造り続けています。シャスラの起源はレマン湖周辺であることがわかっています。

この地の固有品種であるシャスラを守るべく、クローンの研究や保護をする財団まで設立しました。どこか抑制された香りが魅力のシャスラですが、その中にスズランの香りを見つけることができます。

みずみずしい白桃、ネクタリン、スズランや花の蜜の洗練された香り、ピュアな果実味にしなやかな酸、豊かなミネラル感が伸びやかで余韻も長く続きます。

* 原産国:スイス
* 産地:デザレー
* 品種:シャスラ
* 生産者:ドメーヌ・ルイ・ボヴァール
* 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
* 容量:750ml

マグノリア

ぽってりとした美しい華を咲かせ、香りも良いことから人気のマグノリア。マグノリアの香りは女性人気も高く、化粧品にも多く使われています。

数多くの種類があり、香料として使われているのはマグノリアの1種であるタイサイボクの花の香料です。頭痛を緩和したり、肌荒れ予防、呼吸器トラブルにも効果を発揮する香りです。

柑橘系の爽やかな香りが特徴で、香気成分を見てみてもレモンの香りのD-リモネン、フローラルなリナロール、パイナップルのような香りの酪酸メチルなどが含まれています。

▶︎グレーコ・ディ・トゥーフォ マストロべラルディーノ

ヴェズーヴィオ火山の麓に位置し、1878年創業のマストロべラルディーノはカンパーニャの基盤を築いたワイナリーとして知られています。

周りは国際品種に植え替えられていく中、カンパーニャの伝統品種を守り抜いてきました。華やかな香りが特徴のグレーコも伝統品種の一つで、一時は絶滅寸前でした。

洋梨のコンポートや、オレンジの香り、マグノリアや花の蜜、ミント、ヴァニラの甘やかな香り、やや厚みのある果実味にしなやかな酸、塩味のする力強いミネラルが味わいを引き締めます。

* 原産国:イタリア
* 産地:カンパーニャ
* 品種:グレーコ
* 生産者:マストロべラルディーノ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

カーネーション

可愛らしい見た目で、母の日に贈られるカーネーション。古代ギリシャやローマでは、ゼウスの花として、カーネーションで作った冠を捧げていました。イスラム教でも古くから愛された花の一つで、モスクなどの彫刻にはアラベスクといってカーネーションなどの草花の彫刻が見られます。

学名を『Dianthus caryophyllus』=クローブの香りをもつ神の花といって、その名の通りスパイシーなクローヴの香りがします。香気成分をみても、クローブの香りのオイゲノールを主成分として、バラの芳香のフェニルエチルアルコールやシトロネロール、安息香酸ベンジル、シナモンの香りのシンナミルアルコールなどを含みます。

古くからカーネーションの香りにはお酒に酔うのを防ぐ効果があると信じられ、カーネーションで作った花冠を被ってお酒を飲んでいたとか。

▶︎ロングリッジ ピノ・タージュ

南アフリカにおけるオーガニック&ビオディナミの生産者として有名なロングリッジ。ステレンボッシュの中でも2、3℃温度が低い最も冷涼なヘルダーバーグ山脈の麓の斜面に畑を所有しています。フォルス湾から冷涼な風が吹いて夜も冷えるため、ブドウがゆっくりと成熟し酸が豊かなブドウができます。

ダークチェリーやカシスのジャム、スモーキーさがあり、スパイス、ルイボスティー、カーネーション、鞣革や野趣のある複雑な香り、ジューシーな果実味にキレのある酸と若々しいタンニンが感じられます。

* 原産国:南アフリカ
* 産地:ステレンボッシュ
* 品種:ピノ・タージュ
* 生産者:ロングリッジ
* 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
* 容量:750ml

ラベンダー

ラベンダーは、『洗う』という意味のラテン語から名付けられたと言われています。古代ローマ人が入浴の際の芳香剤として用いたり、肌着などを保存する際にも使用されていたことが文献に残ってるそう。

そして、古代アラブの女性たちが髪の毛に艶をだすのにも用いられていたり、古くから民間療法や伝統療法にて万能薬として使われてきました。

14世紀にペストが流行った際にラベンダー栽培に携わる人々は滅多に感染しなかったことにより注目が集まり、結核やペストなどの伝染病に効果的だとされラベンダーは大人気になりました。

香気成分としては、フローラルな香りのリナロール、ベルガモットのような香りの酢酸リナロルが多く含まれ、精神を安定させるセロトニンの分泌を促すことがわかっています。そして、鎮痛、鎮静作用や、抗炎症作用、殺菌効果、抗がん作用を示すことも報告されています。

▶︎ドルチェット・ダルバ ブルーノ・ジャコーザ

ピエモンテの巨匠ブルーノ・ジャコーザ。伝統的なスタイルでバルバレスコの最高峰の生産者として知られていますが、このドルチェット・ダルバもリーズナブルで味わいも絶品です。

ダークチェリー、ブルーベリーのコンポート、スミレやラベンダー、黒胡椒の香り、滑らかな質感で、ベリーのような豊潤な果実味に溌剌とした酸と溶け込んだタンニンが纏まりしなやかに余韻へと続きます。

* 原産国:イタリア
* 産地:ピエモンテ
* 品種:ドルチェット
* 生産者:ブルーノ・ジャコーザ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

ワインから香る花の香りに癒やされると、また頑張る活力が湧いてくるのが不思議です。きっと芳しい香りは心にも作用していると思います。

楽しいワインライフをお過ごしください。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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