ペアリングワイン

ビオワインの伝道師ニコラ・ジョリーとは?

ビオワインは、昨今では世界的なブームとなっています。ビオワインの正式な定義はありませんが、ぶどうがビオディナミ農法で栽培されているというのが大きな特徴です。

ビオディナミ農法とは、ルドルフ・シュタイナー氏が提唱する、農薬や除草剤を使用せず、月の満ち欠けなどを利用し地球のリズムに添った循環型の自然な農法です。

戦後すぐの時代には、農薬や除草剤は効率の良いぶどう栽培方法として生産者だれもがあたりまえと考えていました。そんな中、フランスの1人の生産者がビオディナミでワイン造りを始めた人物がいました。その人物が、「ビオディナミの伝道師」と呼ばれる、ニコラ・ジョリーです。

もともとは金融ビジネスマンのニコラ・ジョリー

ニコラ・ジョリーは、もともとはアメリカのウォールストリートで金融のエキスパートとしてモルガン銀行に勤務するビジネスマンでした。

その頃、彼は化学薬品工業への投資部門の責任者という立場で、ビオディナミとは全く反対の仕事をしていました。順調に出世街道を歩んでいましたが、1976年フランスに帰国し、実家が運営していたワイナリーを継ぐことになりました。

当初は、ビオディナミをとりいれた生産者は周囲には誰一人おらず、彼も他の生産者と同様、除草剤や化学肥料を使ってぶどうを栽培していました。

ビオディナミを取り入れることになったきっかけとは?

ある時、ニコラは畑に昆虫がいなくなり、土壌に異変が起きていることに気づきます。それは、農薬や除草剤が原因ではないかと考え始めます。

そして、1980年代初めに、シュタイナー氏の提唱するビオディナミを取り入れたぶどうの栽培を始めました。ビオディナミを取り入れた当初は周囲から冷ややかな目で見られましたが、その3年後には、畑に昆虫が戻り畑が生き返りました。

ニコラは、多くの生産者が、評価の高い「美味しい」ワインを目指す中、「美味しいワインである前に、その土地固有の特性を表現した本物のワインでなくてはならない。」と、本来のAOC(原産地呼称統制法)の意味の原点にもどることを提唱しました。

本来のAOCの意味とは、その土地ならではのテロワールを生かしたぶどうの特徴を表したワインであることを証明し、守っていくということでした。結果、評価の高いワインと評されることになったのです。

しかしながら、テロワールを無視し、世間が美味しいという売れるワインを生産者が目指すようになり、人工的に手を加えることにより、その土地のぶどう本来の特徴がなくなってきてしまっていることに、ニコラは疑問を持ったのです。

ニコラ・ジョリーがビオディナミの伝道師と呼ばれる理由は?

そして、ニコラは遂に、実家であるAOCサヴニエールの中にある最高区画「クロ・ド・ラ・クレ・ド・セラン」の畑を「ビオディナミ」農法に変えることに成功したのです。

その結果、彼のワインは世の中から称賛され、ブルゴーニュの一流ドメーヌ「ルロワ」にビオディナミを伝授するほどになりました。

2001年には、「Return to Terroir」というビオディナミの団体を立ち上げ、世界中の生産者に伝授する活動を積極的に行なっていることから、「ビオディナミの伝道師」と呼ばれています。

日本にも来ることがあり、パワフルで、講演では常に時間オーバーするほど、多くの情報を余すことなく伝えてくれる熱意に誰もが感心させられます。

ニコラ・ジョリーのおすすめワイン

ニコラ・ジョリーはフランスのロワール地方に複数の畑を所有していますが、中でも有名なのが単独所有するクレ・ド・セランです。ここで造られるシュナンブランは、夕方になっても太陽を浴びる抜群の日当たりで、骨格があり、果実味たっぷりのワインになります。

トップキュヴェは、ロバート・パーカー氏が、"ロワールのモンラッシェ"と絶賛した「クロ・ド・ラ・クレ・ド・セラン」です。濃密でボリュームのある複雑なアロマと共に、キレのある酸やミネラル感があるため、非常にエレガントなワインです。ヴィンテージによって違いがあるので、ヴィンテージ毎に飲み比べるのも面白いです。

今買って、数年セラーで寝かせてから飲むのがおすすめです。高価なワインですので、大切なタイミングの一本として準備するのもいいですね。

もう少しお手頃なセカンドライン「サヴニエール・レ・ヴュー・クロ」もおすすめです。こちらもヴィンテージにより違いはありますが、クロ・ド・ラ・クレ・ド・セランより、早のみができます。こちらも、ナッツやフルーツの複雑なふくよかさに、綺麗な酸があり、エレガントさを十分に感じることができます。

ニコラ・ジョリーは、ワイン造りの原点にもどり、素晴らしいワインにするためにビオディナミを取り入れることの大切さを、より多くの生産者に伝授することに今も努力を惜しみません。

彼の努力と共に、フランスだけではなく、世界に素晴らしいビオワインの生産者が増えています。こうした生産者に感謝をしながら、ワインを味わうとさらに深みを感じることができますね。

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時本 早緒里

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
365日違うワインを呑むをモットーに、自然派ワインを毎日嗜んでいます。
造り手さんの思いや製造工程に興味があり、人と地球に優しいワインを大切にその良さを伝えるワインセミナーを不定期で開催しています。
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