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ソムリエ&チーズコーディネーター直伝!ワインとチーズの合わせ方~シェーブル編~

シェーブル…。「聞いたことないわ」、「名前は知っているけれど、食べたことはないよ」というあなた!ぜひ、チャレンジしてください。今回はワインとシェーブルチーズの合わせ方をご紹介します。

シェーブルって何?

シェーブルは、山羊の乳からつくるチーズのこと。形は、ピラミッド、細長い円筒形、まんじゅう、平らな円形など、バラエティ豊かで、ユニークです。

表面は、白いカビと酵母の一種であるジオトリカムに覆われていますが、木炭の粉をまぶした黒っぽいものもあります。

ナイフで切ると、断面は、まっ白。山羊の乳がイエロー、オレンジ、レッドなどの色素(カロテン)をもたないからです。

また、乳酸によって、乳の中のタンパク質(カゼイン)を凝固させるので、酸味が強く、さっぱりした味わいになります。鼻腔に残る特有の獣臭がクセになるチーズ。

山羊の乳のタンパク質と脂肪の粒子は、牛や羊よりも小さいので、シェーブルは、もろくて崩れやすいのですが、その分、消化がよく、赤ちゃんの離乳食に利用されます。

世界で名高いシェーブルは、ほとんどがフランス産。フランスのロワール河流域のサントモール・ド・トゥーレーヌ、クロタン・ド・シャヴィニョール、セル・シュール・シェール、ヴァランセなどが、有名です。

シェーブルチーズに合うワインは?

シェーブルチーズに合うのは、スパークリングワインとライトボディの白ワイン。

それぞれの特徴をみてみましょう。

★スパークリングワイン
スパークリングワインは、発泡性のあるワインのこと。フランスのシャンパン、イタリアのスプマンテ、スペインのカヴァなどが有名です。

ワインの炭酸の刺激とシェーブルの酸味が同調します。ワインの香味に合わせて、シェーブルにフルーツ、ハチミツ、ハーブ、スパイスなどを添えると、グレードの高いマリアージュになります。

★ライトボディの白ワイン
ライトボディの白ワインは、清涼感が漂うシャープな酸味のある白ワインのこと。

爽やかでスリムな印象。ほとんどは、テーブルワインです。白ワインの酸味とシェーブルの酸味が同調します。

主なブドウの品種は、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、甲州など。フランスのロワール河流域のシェーブルとマリアージュするなら、ロワール地方産のソーヴィニヨン・ブランがベストでしょう。

フランスロワール地方産の白ワイン「ソーヴィニヨン・ブラン・アティテュード」

「ソーヴィニヨン・ブラン・アティテュード」は、ロワール地方で「ソーヴィニヨン・ブランの魔術師」とよばれる醸造家パスカル・ジョリヴェが仕立てる白ワイン。

パスカル・ジョリヴェは、農薬を使わない、手摘み、天然酵母を使う、重力システムを利用するなど、自然派スタイルでワインを醸造しています。

ワイン名の「アティテュード」とは、ワイン造りの姿勢がクラシック・バレエの美的で重要なポーズ「アティテュード」のようだという意味でしょう。ソーヴィニヨン・ブラン100%。

キュルキュルキュル…。トクトクトク…。透明で輝きのある麦わら色です。グラスに鼻を近づけると、カリン、洋梨、パイナップル、ハチミツなどの甘いアロマが漂います。

口に含むと、なめらかなテクスチャーと共に、甘味とほどよい酸味が舌を包みます。

アフターフレーバーは、カリン、ハチミツ、パイナップル、リンゴ…。余韻は、山菜のような苦味とアルコールのボリューム感…。

あれ?最後は、キャラメルとナッツ?清涼感があるのに、複雑で手ごわい印象です。さすが!魔術師のワイン。

「ソーヴィニヨン・ブラン・アティテュード」とヴァランセのマリアージュ

ヴァランセは、フランスのロワール河流域のヴァランセ村でつくられるシェーブルチーズです。形は、てっぺんが平らなピラミッド型ですが、以前は、先が尖っていたとか…。

タイムマシンに乗って、この理由を探しに行きましょう。

ブ~ン!18世紀、ナポレオンの帝政時代です。ロワール河流域には、王侯貴族の美しい城が乱立しています。その中に、ヴァランセ城があります。城主は、外相のタレーラン。

さて、ナポレオンがエジプト遠征に失敗し、帰国しました。ナポレオンの食事のテーブルにピラミッド型のヴァランセが出されます。

すると、ナポレオンは激怒。タレーランは、ヴァランセのピラミッドの尖端を切り落とします。

てっぺんが平らなのは、ナポレオンのせいだったのですね。包みを開けます。黒みがかった灰色の山に白い雪が積もったようなヴァランセ。

黒い粉は、木炭、白い粉のようなものは、白カビとジオトリカムです。香りは、レモングラス、ヨーグルト、夏草、ナッツ…。味わいは、爽やかな酸味、明確な塩味、旨味、甘味です。

鼻から抜けるアフターフレーバーのアーモンド香が高貴なので、まるで、威勢のよい男爵のようです。あれ?獣臭は?「ソーヴィニヨン・ブラン・アティテュート」とヴァランセのマリアージュは、冷涼なロワール生まれの者同士の相性のよさが感じられます。

それぞれにある酸味とナッツ香が同調。ヴァランセの後に「ソーヴィニヨン・ブラン・アティテュード」を飲むと、ヴァランセに熟したフルーツを添えて、ハチミツをかけたようなイメージになります。

第3のテイストですね。ワインの苦味とヴァランセの塩味は、複雑な皇帝ナポレオンの心境とシンクロします。

ロワールの城とナポレオンに思いを馳せながら、ヴァランセをほお張り、「ソーヴィニヨン・ブラン・アティテュード」を飲む…。この世の極上のひとときに酔いしれます。

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高階 明子

フリーライターとして活動中。
日本ソムリエ連盟のソムリエ資格、チーズコーディネーター協会のチーズコーディネーター資格をもっています。
ワインショップでソムリエをした経験もあります。
大のワイン好き!夫と二人暮らし。
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