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ソムリエ&チーズコーディネーター直伝!ワインとチーズの合わせ方~青カビ編~

青カビのチーズを「おいしい!」という人は、かなりのチーズマニア!?

ワインであればどんなものを合わせますか?今回は、青カビのチーズとワインの合わせ方をご紹介します。

青カビのチーズとは?

青カビのチーズは、青カビが、大理石のように、または、斑点のように、生えているチーズのこと。

青カビの胞子を混ぜるか、付着させるなどの工程をへて、3か月以上、熟成し、つくります。

青カビは、熟成の間、乳の脂肪を分解し、独特な香味を形成。青カビの強い塩味、舌を刺す刺激、鼻から抜ける揮発香は、チーズマニアを虜にします。

タンパク質を分解する力は弱いので、チーズの硬さは、熟成が進んでも、半硬質のまま。

青カビのチーズで高名なのは、フランスのロックフォール、イタリアのゴルゴンゾーラ、イギリスのスティルトン。この3つは、世界の3大ブルーチーズ(青カビのチーズ)といわれています。

このほか、フランスのブルー・デ・コース、ブルー・ドーヴェルニュ、フルム・ダンベール、スペインのカブラレス、デンマークのダナブルーなどが、よく知られています。

青カビのチーズにピッタリなワインは?

青カビのチーズにピッタリなワインは、フルボディの赤ワインと甘口タイプのワインです。

★フルボディの赤ワイン
フルボディの赤ワインとは、濃厚でタンニンの渋みが強く、複雑な香味のある熟女のような赤ワインのこと。

青カビのチーズの強い塩味、舌を刺す刺激と、フルボディの赤ワインの濃厚な果実味、舌を収斂させるタンニンの渋みがマッチします。

味わいの強さと舌の刺激の同調ですね。香味の点では、第3のテイストを楽しむ合わせ方になります。

★甘口タイプのワイン
甘口タイプのワインとは、主に、貴腐ワインやアイスワインなどのデザートワインのこと。

貴腐ワインは、貴腐ブドウから造った極甘口のワインです。貴腐とは、カビの一種であるボトリティス・シネレア菌が付着し、果粒の成分が凝縮したブドウの状態。

貴腐ワインは、黄金色に輝き、花のような香りを漂わせ、究極の甘味をもっています。寿命は100年という噂。100歳の老女を見つけて、ハグしたい気分です。

貴腐ワインで著名なのは、フランス・ボルドー地方・ソーテルヌ地区のソーテルヌです。その頂点に君臨する「シャトー・ディケム」は、ソーテルヌの格付けで唯一、最上のプルミエ・クリュ・シュペリュール。ソムリエなら、一度は飲みたいワインです。

また、フランスのソーテルヌは、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイ・アスー・エッセンシアと共に、世界の3大貴腐ワイン。

アイスワインは、冬の凍ったブドウから造った甘口のワイン。ドイツとカナダが有名です。

青カビのチーズとマリアージュすると、青カビのチーズの力強い塩味と甘口タイプのワインの力強い甘味がひとつになって、チーズの塩味はマイルドに、ワインはパンチの効いた味わいになります。

チーズだけ、ワインだけのときよりも美味!新しい味わい、つまり、第3のテイストの誕生です。

貴腐ワイン「ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ」

「ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ」は、ボルドーの偉大なシャトー・ムートン・ロートシルトを所有するバロン・フィリップ・ド・ロートシルトが仕立てる貴腐ワイン。

ブドウは、ソーテルヌの格付けプルミエ・クリュのシャトー・クーテから買い取るので、極上の貴腐ワインになります。

ブドウの品種は、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデル。透明なワインボトルは、ソーテルヌの美しい色が存分に放たれるようになっています。

キュル、キュル、キュルとソムリエナイフを回します。スーッとコルクが抜けました。ワインをグラスに注ぎます。

濃い黄金色のボディと熟したパッションフルーツジャムのような香味は、妖艶な美女の印象。時計の針が進むと、花のアロマが生まれ、香水をシュッ!と吹きかけられたようになります。

アルコール感には、若さを感じますね。ソーテルヌのプライドのようなボトリティス・シネレア菌のひねたクセは、今回の2016は、穏やかです。

「ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ2016」とブルー・ドーヴェルニュをいただきます!

ブルー・ドーヴェルニュは、19世紀の中頃、フランスのオーヴェルニュ地方で生まれたチーズ。

ライ麦パンに生えた青カビを凝固乳(カード)に植え付け、針で空気穴を開けて、熟成したのが起源です。チーズの歴史の中では、ニューフェイス。

切り口の断面を見ると、孔が点在し、その中にダークな青緑のカビが生えています。

鼻を近づけると、塩の香りが漂います。パクリ! テクスチャーは、ボソボソ、ざらざら、ムッチリ…。

チーズの表情が口の中でアレコレと変わります。味わいは、力強い塩味と旨味。アフターフレーバーは、ふんわりと鼻をくすぐるナッツ香です。青カビの辛味、舌を刺す刺激、揮発香は弱く、マイルドな印象。

ブルー・ドーヴェルニュを食べ、「ムートン・カデ・レゼルヴ・ソーテルヌ2016」を飲むと、ブルー・ドーヴェルニュの強烈な塩味をなだめすかせるのは、ソーテルヌの強力な甘味だけだ!といった感じです。

チーズだけ、ワインだけでは実現できない究極の世界。第3のテイストです。相性のよさは120%かな。また、青カビとボトリティス・シネレア菌の同調は、マリアージュ全体に複雑さを与えています。

今日から、あなたはコレね!グラスにワイン、お皿に青カビのチーズ…。

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高階 明子

フリーライターとして活動中。
日本ソムリエ連盟のソムリエ資格、チーズコーディネーター協会のチーズコーディネーター資格をもっています。
ワインショップでソムリエをした経験もあります。
大のワイン好き!夫と二人暮らし。
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