ペアリングワイン

ソムリエ&チーズコーディネーター直伝!ワインとチーズの合わせ方~ウオッシュ編~

「臭い!」と叫びながら、ウオッシュのチーズをニコニコ顔で食べるのがチーズマニア。

今回は、クセのあるウオッシュタイプのチーズとワインの合わせ方をご紹介します。

ウオッシュのチーズは、臭い!

ウオッシュのチーズは、オレンジ色で弾力のある匂いの強いチーズです。凝固乳(カード)を円筒状の型(モールド)に入れ、水分を抜き、成型。

リネンス菌を含む塩水(モルジュ液)などで、チーズの表面を洗う、拭う、ブラッシングするなどのウオッシングをし、オレンジ色で粘着性のある匂いの強い表皮を形成します。

リネンス菌は納豆菌の仲間。3週間以上、熟成し、完成。コクのある味わいになります。

ウオッシュのチーズで有名なのは、フランスのマンステール、ピエ・ダングロワ、マロワール、エポワス、ポン・レヴェック、リヴァロ、モン・ドール…。イタリアのタレッジオです。

リヴァロは、フランス北西部のノルマンディー地方でつくられるチーズ。円筒形のチーズの側面に葦の茎(または、紙テープ)が5本線で巻かれます。

型崩れを防ぐためですが、フランスの陸軍大佐(ル・コロネル)の階級を示す5本線に似ているので、コロネルという愛称をもっています。

モン・ドールは、フランス東部にあるジュラ山脈のモン・ドール山(黄金の山)一帯でつくられるチーズ。

この地域では、生産量NO.1のハードタイプのコンテが高名ですが、かつて、モン・ドールは、コンテをつくった後の残った牛乳でつくられていました。

生産時期が8月15日から3月15日までなので、秋になると、「モン・ドールの季節だ!」とチーズマニアが浮き立ちます。

熟成が進み、トロトロになったら、スプーンで食べます。

ウオッシュのチーズとラブラブのワイン

ウオッシュのチーズは、強い匂いとコクのある味わいが特徴なので、マリアージュに最適なワインは、フルボディの白ワイン、ライトボディの赤ワイン、フルボディの赤ワインの3タイプ。代表的なウオッシュのチーズと3タイプのワインとの相性は次の通りです。

マンステールは、ほのかな酸味があるので、3タイプのワインなら、すべてO.K。ピエ・ダングロワは、クセが弱いので、フルボディの白ワインとライトボディの赤ワインがよく合います。

マロワールは、クセがやや強いので、赤ワインがgood。エポワスは、ブルゴーニュ地方のブドウの搾りカスからつくる蒸留酒のマール・ド・ブルゴーニュでウオッシングするので、複雑でコクの深い味わいになります。フルボディの赤ワインとマリアージュするとよいでしょう。

イタリアの赤ワイン「ヴァルポリチェッラ」をポン!

ヴァルポリチェッラは、イタリア北部にあるヴェネト州の代表的な赤ワインです。

ヴェネト州は、水の都ヴェネチアが州都。州の西側には、ロミオとジュリエットの町ヴェローナがあります。

「ヴァルポリチェッラ」は、ヴェネト州にあるNO.1ワイナリーのアレグリーニが仕立てるスタンダード・キュヴェ。ブドウの品種は、イタリア固有のコルヴィーナ・ヴェロネーゼ65%、ロンディネッラ30%、モリナーラ5%です。

ソムリエナイフでコルクを抜きます。グラスに注ぐと、完熟した果実と腐葉土のアロマが放たれます。

口に含むと、フレッシュな果実の甘味とタンニンの収斂性が感じられ、そのあと、フレッシュでしっかりとした酸が続き、全体をキュッと引き締めました。

余韻は、ミネラルの塩味。ペアリングするチーズは、イタリア北部でつくられるタレッジオがおすすめです。

北イタリアで生まれた「ヴァルポリチェッラ」とタレッジオ

タレッジオは、5~6世紀頃から、イタリア北部のロンバルディア州にあるヴァル・タレッジョ渓谷でつくられているチーズ。6~10月にヴァル・タレッジョ渓谷に放牧されるブルーノ・アルピーナ種の牛乳からつくられます。この非常にコクのある牛乳だけがタレッジオに変身!

タレッジオの包みを開くと、オレンジ色の湿ったチーズが現われます。外皮のアンモニア臭のほか、搾りたての濃厚なミルクの香りが漂います。

ひと口食べると、アンモニアのやや強い含み香と共に、ミルクの強いコクと甘味が感じられ、その後に続く、やや強めの酸味と塩味が全体を引き締めました。

さっそく、「ヴァルポリチェッラ」とペアリング。北イタリアで生まれたワインとチーズの相性は?

あれれ…。「ヴァルポリチェッラ」とタレッジオの味わいがそっくり!どちらも、甘味の後に酸味と塩味が続き、全体を引き締めています。

つまり、ワインとチーズの味わいは、ほぼ100%同調。チーズを食べ、ワインを飲むと、お互いの酸味と塩味が強調され、全体がキリッとした印象になりました。

チーズにワインの果実の甘味が、ワインにチーズのアンモニア臭の複雑さが加わる点は、第3のテイストといえるでしょう。口の中に残る酸味と塩味の余韻に浸ると、アルプス山脈の冷気やアドリブ海の潮風を感じます。

イタリアの自然に思いを馳せながら、ワインとウオッシュのチーズを楽しんでみては、いかがですか?

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高階 明子

フリーライターとして活動中。
日本ソムリエ連盟のソムリエ資格、チーズコーディネーター協会のチーズコーディネーター資格をもっています。
ワインショップでソムリエをした経験もあります。
大のワイン好き!夫と二人暮らし。
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