ペアリングワイン

スパイシー&ヘルシー!タイ料理とワインペアリング

美味しい料理と美味しいお酒は、日々の楽しみであるとともに、明日も頑張ろうといった活力になると思います。そんな中で今日は、気分を変えてタイ料理はいかがでしょうか?

香辛料やハーブをたっぷりと使用し、かつ米や発酵調味料を使ったタイ料理は刺激的かつ日本人の口にも合う味わい。さらにたっぷりの野菜やスパイス、ハーブの新陳代謝作用でデトックス効果が期待できるとのことで高い人気を誇ります。

日本でも本格的なタイ料理屋が増え、食材や調味料が手に入りやすくなったことに加え、様々なレシピが紹介されるようになり、気軽にタイ料理が楽しめるようになりました。

エキゾチックでオリエンタルな雰囲気を演出でき、健康的かつ刺激的、それを気軽に楽しめるようになったことで、タイ料理は日本にも定着してきたように思います。

今回の記事では、タイ料理をワインと合わせられないか?を考えていきたいと思います。欧米のイメージが強いワインとアジアのオリエンタルな雰囲気のタイ料理を合わせることに、違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本では世界の様々な料理が気軽に楽しめるわけですから、せっかくならヨーロッパもアジアも一緒に楽しんでしまおうというわけです。

タイ料理とは?

ペアリングの前に、タイ料理についても少し考えたいと思います。日本でタイ料理が浸透している理由として、タイ料理と日本料理にはいくつかの共通点があり、日本人には受け入れやすい料理であるためと考えられます。

まず、タイ料理は米を主食にしている点で、もち米やインディカ米がよく食べられています。そのため、おかずはご飯を美味しくたくさん食べるための引き立て役という位置づけになるという点は、日本の食卓も似ていると言えます。

次に、タイでは魚をたくさん食べます。日本人も魚が大好きで、昔から魚介類は貴重なタンパク源です。元々が川と田んぼの民であるタイ族と、海に囲まれている日本人とは一見違うようではありますが、魚や貝を食べてきたという祖先からの暮らしには互いに共鳴するものがあると思います。

最後に、料理に発酵食・調味料を取り入れることも特徴です。魚を使った発酵調味料のナムプラーはタイ料理に欠かせません。タイ族の故地である中国南部から西南部にかけては納豆もあれば豆腐もあります。

タイ料理の底流にも発酵食の文化が滔々と流れており、それが味噌と醤油を味の土台とする日本人の味覚に共鳴するのではないかと思います。

このように食文化の基層はよく似た日本とタイでありますが、食材、調理法、味付けは異なっている面も多いです。

主に唐辛子による辛味とナムプラーや塩による塩味が特徴的ですが、そこにライムなどによる酸味、ココナッツミルクのまろやかな甘味、そして魚介やナムプラーによって生まれる旨味も加わり、一皿もしくは複数の皿を組み合わせて非常に複雑な味わいを創り出しているのが、タイ料理の特徴です。

タイでは各テーブルに4種類の調味料が置かれています。これらを駆使して、タイ料理は各自で辛さ・酸味・甘さ・塩辛さを調節して、自分好みの味に調整して食べられます。

これは「クルアン・プルン」と呼ばれ、それぞれの容器には粉末唐辛子、酢漬け唐辛子、砂糖、ナムプラーが入っていることが多いようです。ラーメンの味を卓上の香辛料、調味料で自分好みにカスタマイズするものと理屈は同じですね。

タイの日常の飲み物について

少し話がそれますが、タイでは普段食事の時に何か飲んでいるのか、ですが、タイ料理の正当な飲み物は冷えた水です。

アルコール飲料としてはビールが浸透していますが、タイのビールは「シンハー」がタイで初めて1933年に生産を開始するなど、歴史としてはまだ新しいです。

タイのビールは日本のものよりアルコール度数が高く、6%くらいが普通です。価格が安く薄口な味わいが人気の「チャーン」、前述した初のタイ国産プレミアムビール「シンハー」は定番の濃口なビールです。

世界のビールの品揃えが多い酒売り場なら、2種類とも日本でも割合手に入れやすくなっています。ビール以外の酒となると安く酔いたいという庶民派にはスピリッツ、つまり焼酎が人気で、メコンが有名です。

このように、タイ現地ではまだワインが日常に根付いているわけではないので、ワインペアリングもまた一般的ではありません。とはいえ、私たちの周りでは、特に最近はよりカジュアルにリラックスしてワインを楽しむ機会が増えている中で、みんなでワイワイ楽しんで食事をするイメージがあるタイ料理とワインを合わせられないか、と考えることは不自然ではないと思います。

現に世界に目を向けると、各国のワインラヴァーやソムリエは、それぞれの国で当たり前のようにワインに合わせられる王道のペアリングだけではなく、様々な各国料理とワインの楽しみ方を色々模索しており、その中でタイ料理とワインのペアリングについても、様々な実験や各々の考え方が紹介されています。

ここからは、ワインペアリングについて考えてみたいと思います。今回は、そのペアリングの中でも、なるべく近くのワイン売場で購入しやすい、気軽に合わせられるものをいくつかご紹介します。

タイ料理とワインのペアリング
①生春巻き × トロンテス

▶︎クマ・オーガニック・トロンテス

生春巻きは基本的に生野菜をライスペーパーで巻いた料理なので、フレッシュで軽い口当たり、素材の風味を生かした一皿なので、ワインも軽めのものを選ぶのが良いでしょう。

アルゼンチンのトロンテスは、白いバラやジャスミン、白桃やレモンの風味を想わせる豊かな香りを持ち、爽やかな酸味はフレッシュな生春巻きと理想的なペアリングを生み出します。

②ガパオライス × ロゼスパークリング

▶︎ドゥーシェ・シュヴァリエ・ドライ・ロゼ・ブリュット

ガパオライスは、具には豚や鶏肉、野菜が使われ、ライム、ミントなどのハーブ類、唐辛子、ナムプラーで味付けがされ、添えられた卵や米と混ぜることで、味わいのハーモニーを楽しむ料理です。

スパークリングワインの清涼感が口に残るスパイスをまろやかにするとともに、ロゼの果実味が調和します。

③パッ・タイ × ピノ・ノワール

▶︎ロバートモンダヴィ・ウッドブリッジ・ピノ・ノワール

海老やモヤシ、ニラ、ピーナッツなど沢山の具が入る事で、旨味を含むこの料理には、フルーツの風味が前面に立ち、かつタンニン分が立ち過ぎていないピノ・ノワールが調和します。ピノ・ノワールの酸味は、パッ・タイのリッチな味わいとのバランスを保ちます。

④グリーンカレー × シュナン・ブラン

▶︎KWVクラシック・コレクション・シュナン・ブラン

唐辛子やナスなどの野菜がココナッツミルクやナムプラーで調味される、タイカレーの中では最もスパイシーなこの料理に合わせるのは、甘味があり、コクのあるクリーミーなココナッツミルクの風味に合う酸を持つ、オフドライなシュナン・ブランがオススメです。

洋ナシ、ジャスミン、生姜の風味を持つシュナン・ブランは、スパイス類の尖った風味と調和します。

⑤ココナッツチキンスープ × ピノ・グリ

▶︎トリンバック・ピノ・グリ・レゼルヴ

ココナッツチキンスープは、ココナッツミルクがもたらす甘くクリーミーな風味と、カレーペーストや唐辛子のスパイシーな風味のコンビネーションに加えてマッシュルームのアーシーな風味を持つ複雑な味わいなので、ワインもこの複雑な味わいを包み込むものを選ぶ必要があります。

ピノ·グリ、特にフランスアルザス地方のものは、生姜やハチミツ、溌剌とした酸や果実味を与えてくれます。料理をリッチに仕上げるココナッツミルクの味わいとバランスを取る十分な酸味があります。

前述の通り、タイ料理とワインのペアリングは、同じ土地の食材とワインを合わせるいわゆる地産地消、伝統的なペアリングとは異なる考え方なので、今回ご紹介した一例以外にも様々なペアリングが存在しますし、今後も考えられるでしょう。

ワインの世界もファッションのようにトレンドの移り変わりが早く、現代ではオーセンティックよりも気軽さ、親しみやすさが好まれるようになっていると言われています。

もちらん地方料理にその地方のワインを合わせる、定番のペアリングを知ることは大事ですが、まずは自分が今日何を飲みたいか、何を食べたいかから始めて、気軽に自由にワインを楽しんで頂けたらと思います。

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HIROTSUGU SAKIMOTO

J.S.A.認定ソムリエ

イタリア留学中にワインを知り、帰国後はホテル・レストラン、ワインショップ、輸入業者などワイン一筋の職務経験を経て、現在は地元の酒屋に勤務。
イタリアで身につけた、ワインは気軽に料理と合わせて楽しむものという考えの基、なるべくブランドや先入観に囚われないよう、世界各国の様々なワインとの楽しみ方を日々模索しています。
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