ペアリングワイン

トスカーナ流!パンとワインのペアリング

今日家でワインを飲みたいけれど、おつまみになりそうなものが何もないし、かといってこれから料理を作るのも面倒、ということは、ワイン好きにはありがちだと思います。そんな時、家にバゲットなどのパンとちょっとした食材だけあれば、今日のワインをより美味しく楽しむことが出来ます。

今回はイタリア、トスカーナ州の州都フィレンツェで学んだ、パンを使った気軽なレシピでワインをトスカーナ気分で楽しみたいと思います。

トスカーナのパンについて

生ハム、トリッパ、イノシシ肉のラグーといったトスカーナの地方料理は、全体的に塩気が強いです。逆に、この地方のパンについては塩はおろか砂糖、バターやオリーブオイルも使わない為、いい意味では素朴な味、別の意味ではボソボソして小麦以外の味がありません(なので、日本のパン屋さんで造られたパンの方が美味しいと思う方が大半だと思います。)。

また、トスカーナのパンは、時間が経つと乾燥するので、焼いてから数日経ったパンは文字通り歯が立たないほどカチカチに固くなります。

しかし、トスカーナの昔からの知恵で、古くなったパンを何とか再利用できないか、と様々に工夫したものが、今日でも伝統料理として残っています。また、不思議なことにトスカーナのパンは、塩がきいたイタリア料理と一緒に食べたり、料理に使うことでとても味わい深くなります。

今回の料理に使うパンも(固くなったパンをあえて用意する必要はありませんが)、なるべくバゲットやカンパーニュなど、シンプルなパンの方が、料理にした際に合わせやすくなると思います。

トマトのブルスケッタ × サンジョヴェーゼ

ブルスケッタは、シンプルなガーリックトーストのことです。この上にマリネした角切りトマト(ケッカソース)をたっぷりのせるだけで、絶好のワインのおつまみになります。

ポイントは材料を混ぜ合わせたら、油とトマトから出た水分をよく混ぜてトロリと乳化させることです。オリーブオイルは、是非ともエキストラヴァージンオリーブオイルを使ってください。

▼材料(4人分)
バゲット(薄切り)…8枚
ニンニク…1片
エキストラヴァージンオリーブオイル…適量
ケッカソース
トマト(小角切り)…2個
エキストラヴァージンオリーブオイル…20cc
ホールトマト(汁ごとつぶしたもの)…少量
塩、コショウ、砂糖…各適量

▼作り方
① トマトは湯むきし、2つ割にしてトマトの種を抜き、角切りにする。

② ①をボールに入れ、塩コショウする。トマトの味が物足りない時はホールトマトとひとつまみの砂糖を入れて混ぜ合わせる。分量は味を見て調節。

③ 最後にエキストラヴァージンオリーブオイルを加え、材料をまんべんなく混ぜ合わせる。

④ 油と水分がトロリと白濁したドレッシング状態になるまで、しっかり混ぜ合わせる。使用するまで冷蔵庫で保存する。

⑤ フランスパンの薄切りを焼き色がつくまで焼く。

⑥ ⑤の片面にニンニクの切り口をすり込んで香りをつけ、エキストラヴァージンオリーブオイルをかける。④のケッカソースをたっぷり盛り付ける。

【ペアリングワイン】

▶︎カンティーナ・フラテリベリーニ・キアンティ・フィアスコボトル

ブルスケッタに使われるトマトの酸味 、風味は 、オリーブオイルとニンニクがいいつなぎ役となって 、トスカーナ地方のサンジョヴェーゼを使った赤ワインの酸味 、 ボディとよく合います。ここは定番のキアンティがおすすめです。

今回紹介するワインは、生き生きとした酸味にイチゴや ラズベリーを想わせる果実味を持つミディアムボディで 、トスカーナ現地の伝統的なトラットリアで提供される テーブルワインと同じタイプの赤ワインです。

渋みが強くなく食事に合わせやすいので、 トスカーナ名物の生ハム 、肉料理などともよくマッチします 。その中でも、昔ながらの藁に包まれたフィアスコ ・ ボトルは雰囲気が出ます。お持ちの方は、カラフェに移して召し上がるのもオススメです。

パンツァネッラ × ヴェルメンティーノ

パンツァネッラは、パンをオリーブオイルとヴィネガーで和えるトスカーナの定番サラダです。伝統的にはカチカチに硬くなったパンを 、 水で柔らかく戻してから使いますが 、日本のパンの場合は小さく切ってヴィネガーなどの水分でしっとりさせるくらいでも 、美味しく召し上がれます。

▼材料(4人分)
パン(1cm強の角切り)…300g
粗塩小さじ…1と1/2
プチトマト…適量
タマネギ(繊維に垂直に薄切り)…100g
ケッパー(酢漬け)…20g
バジルの葉…数枚
ペコリーノチーズ(5mmの角切り)…80g
エキストラヴァージンオリーブオイル…100ml
白ワインヴィネガー…30ml

▼作り方
① パンと具を混ぜる。ボールにエキストラヴァージンオリーブオイルと白ワインヴィネガーを合わせて、タマネギを入れてよく混ぜてしっとりとさせる。
② ①にケッパー、ペコリーノチーズを順番に混ぜ合わせていく。
③ パンと具を混ぜる。
④ イタリアンパセリをふり、木べらでさっくり混ぜる。
⑤ ラップで覆うか密閉容器に入れ、冷蔵庫で30分間休ませて味をなじませる。

【ペアリングワイン】

▶︎ピエロ・マンチーニヴェルメンティーノ・ディ・サルデーニャ

ワインは、地中海に浮かぶサルデーニャ島の白ワイン、ヴェルメンティーノがおすすめです。ヴェルメンティーノは、サルデーニャ島で有名な地元のブドウ品種ですが 、この島に来る国内外のリゾート客を楽しませる魅力的な白ワインが造られています 。

こちらのワインの生産者ピエロ・マンチーニは 、 サルデーニャ島を代表する造り手の一人です。暑い夏にピッタリの清涼感のある白ワインで 、グレープフルーツなどの柑橘系 、洋ナシの果実の香りに 、シナモンのニュアンスをほのかに感じる味わいは 、喉の渇きを潤してくれます 。

特に魚介料理の相性の良さで知られるワインですが 、野菜やヴィネガーを用いてサッパリとした味わいに仕上げたパンツァネッラともよく合います。

パッパ・アルポモドーロ × プロセッコ

パッパ・アルポモドーロは、固くなったパンをトマトで煮て、お粥のように柔らかくしたトスカーナ料理です。

よく熟したトマトと香りの強いバジリコで作る、夏に美味しい料理です。本来は温製ですが、冷製で前菜にもアレンジできます。

▼材料(4人分)
パン(1cm弱の角切り)…250g
トマト(二等分して繊維に垂直に角切り)…1kg
ニンニク(輪切り)…30g
玉ねぎ(繊維に垂直に薄切り)…220g
バジリコの葉…数枚
粗塩…小さじ1
ブイヨン…90ml
エキストラヴァージンオリーブオイル…50ml

▼作り方
① 鍋にエキストラヴァージンオリーブオイルとニンニクを入れ、中火にかけて炒める。
② 香りが立って色づき始めたら、玉ねぎを炒める。水分を飛ばしながら、しんなりするまで炒める。
③ パンを入れて全体を混ぜ合わせる。油分を吸ったらトマトを入れ、再び混ぜ合わせる。
④ 塩をふり、ブロードを入れて混ぜる。弱火でふつふつと沸騰させて20分間ほど煮る。
⑤ 煮汁に濃度が出てねっとりすれば煮上がり。湯気を飛ばして粗熱を取ってから冷蔵庫で冷やす。盛り付けの時にバジリコの葉を飾る。

【ペアリングワイン】

▶︎ベッレンダプロセッコ・ヴァルドッビアーデネ・ブリュット

今回は料理を冷製に仕上げておりますので、よく冷やしたスパークリングワインがおすすめです。冷たい料理にはよく冷やしたワインを合わせるなど、料理とワインの温度帯はなるべく合わせることがペアリングのコツの一つです 。

イタリアのスパークリングワイン、プロセッコは食卓を華やかに彩るとともに、フードフレンドリーで料理に合わせやすいワインです。

こちらのワインの造り手のベッレンダは、質の高いプロセッコを造る生産者として評価されており、特にイタリアワイン専門家やレストラン関係者にその名を良く知られています。

プロセッコの泡と酸味が口の中の料理の風味とマッチし 、飲んだ後にほのかに口に残る苦みは料理とのつなぎ役としていい仕事をしてくれます。

美味しいパンとチーズさえあればワインのおつまみは充分、とも言われるように、美味しいパンはそれだけでワインを引き立てます。もし時間が経ってしまったパンも、ちょっとした手を加えるだけで、このように簡単に美味しい料理になります。

ワインを普段から召し上がられている方は特に、お気に入りのパンを常備して、ワインライフを充実させましょう!

HIROTSUGU SAKIMOTO

J.S.A.認定ソムリエ

イタリア留学中にワインを知り、帰国後はホテル・レストラン、ワインショップ、輸入業者などワイン一筋の職務経験を経て、現在は地元の酒屋に勤務。
イタリアで身につけた、ワインは気軽に料理と合わせて楽しむものという考えの基、なるべくブランドや先入観に囚われないよう、世界各国の様々なワインとの楽しみ方を日々模索しています。
HIROTSUGU SAKIMOTOの記事一覧 

新着口コミ

もっと見る

ワインペアリングを楽しめるお店、レストランを探す

都道府県から探す