ペアリングワイン

お家でツーリズム!この映画を観ながらこのワイン

お家にいながら映画の世界に浸って、その作品所縁のワインを愉しむ贅沢で新しい楽しみを提案させていただきます。

秋の夜長に是非いかがでしょうか?

バベットの晩餐会

『バベットの晩餐会』は、1987年に公開されたデンマーク映画です。アイザック・ディネーセンの同名小説の映画化作品で、同年度のアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞しました。

舞台は19世紀の重苦しい雰囲気のユトランド半島の田舎町で、繰り広げられる貧しくも美しい生活に、牧師の生誕100年を祝う晩餐会では、かつてパリの有名な高級レストラン『カフェ・アングレ』の料理長であったバベットの作る素晴らしいフランス料理の数々。

そしてワインも登場し、まるで、フランス料理のフルコースとそれぞれに合わせてワインを楽しんだかのような満足感が観た後に感じられます。良いレストランでの食事のひとときは人を幸せな気持ちにさせますね。

ちなみに、このカフェ・アングレは実在したレストランで、トゥール・ダルジャンのオーナーの曽祖父が経営し、パリ万博の際にはロシア皇帝アレクサンドル2世と皇太子、プロシア皇帝ヴィルヘルム1世の3人が食事をした有名なエピソードが語り継がれています。

この映画を観ながら飲みたいワインは、ヴーヴ・クリコのシャンパンとクロ・ド・ヴージョの赤ワインです。作品中に登場するのは、シャトー・デュ・クロ・ド・ヴージョのワインですが、現在はワインの生産をしておらず、博物館になっているので、どなたでも観光で訪れることができます。

▶︎ヴーヴ・クリコ・ラ・グラン・ダム

1722年創業のヴーヴ・クリコ・ポンサルダン。こちらのキュヴェ は未亡人で会社を経営し、偉大なシャンパーニュ・メゾンへと導いたマダム・クリコへ捧げるトップ・キュヴェ です。

レモン、ブラック・カラント、スモーキーなニュアンス、アーモンド、アカシアの花の蜜、ジンジャークッキー、ブリオッシュなどの洗練された芳醇な香り、やや厚みのある熟度の高さを感じさせる果実味に、フレッシュでしなやかな酸、豊かなミネラルの与える骨格のしっかりしたシャンパーニュです。

* 原産国:フランス
* 産地:シャンパーニュ
* 品種:ピノ・ノワール、シャルドネ
* 生産者:ヴーヴ・クリコ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

▶︎クロ・ド・ヴージョ アラン・ユドロ・ノエラ

クロ・ド・ヴージョは畑の面積が広く、品質のクオリティにばらつきが大きいことで知られていますが、アラン・ユドロ・ノエラの区画は、シャトー・デュ・クロ・ド・ヴージョのすぐ周辺で『法王のキュヴェ 』と呼ばれる特別な区画です。

ラズベリーやイチゴのコンポート、ローズポプリ、リコリス、シナモン、紅茶、インク、鉄釘、チョコレート、ヴァニラなどの甘やかで芳醇な香り、甘やかな果実味に、しなやかな酸とミネラルが広がり、フィネスを纏ったエキス分、きめ細やかに溶け込んだタンニンが奥深く妖艶な味わいを感じさせます。

* 原産国:フランス
* 産地:ブルゴーニュ
* 品種:ピノ・ノワール
* 生産者:アラン・ユドロ・ノエラ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

プロヴァンスの贈りもの

2007年に公開された『プロヴァンスの贈りもの』は、フランスのプロヴァンスにワイナリーを所有しているリドリー・スコット監督がブティック・ワインの噂話を友人の小説家ピーター・メイル氏に話し、その話を元にメイル氏が小説を執筆し、リドリー・スコット監督が映画化しました。

この作品はのんびりとしたプロヴァンスの時間の流れを感じさせます。もちろんこの映画を観ながら飲みたいのは作中にも登場するドメーヌ・タンピエのワインで、少年時代の主人公に叔父がワイン造りの素晴らしさを教える場面で『真実を伝える美酒』として印象的に登場しています。

▶︎ドメーヌ・タンピエ バンドール・キュヴェ・カバッソウ

原産地呼称バンドールの立ち上げに尽力し『バンドールの父』と呼ばれるリュシアン・ペイローが創設者で、現在は、天才醸造家ダニエル・ラヴィエが受け継いでいます。

このカバッソウは、フランス語で急斜面という意味があり、急斜面の小さな1ヘクタールほどの畑は、ミストラルの強風から守られ、棚状の畑を上ってくる暖かい風や豊富な日照により、ムールヴェドルが完熟するミクロクリマになっています。

ダークチェリーやブラックベリーのコンポート、スミレ、鞣革、シナモン、ナツメグ、ヴァニラの香り、凝縮した果実味にフレッシュな酸、滑らかに溶け込んだ豊富なタンニンが纏まり、長い余韻へと繋がります。長命な素晴らしいワインです。

* 原産国:フランス
* 産地:プロヴァンス
* 品種:ムールヴェドル、シラー
* 生産者:ドメーヌ・タンピエ
* 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
* 容量:750ml

大統領の料理人

『大統領の料理人』は、2012年公開のフランスの伝記映画で、フランス大統領官邸史上初の女性料理長として2年間フランソワ・ミッテラン大統領に仕えたダニエル・デルプシュさんをモデルに描かれています。

登場するお料理がどれも美味しそうで、そして、リアル。育った世界が全く違う二人を繋げたのが料理でした。お料理に合わせてワインもいくつか登場し、実際に合わせたくなる方も多いはず。

この作品を観ながら飲みたいのは、作品に登場するワインでは無くて、給支長役で俳優として登場しているドメーヌ・ルーロの当主ジャン・マルク・ルーロ氏のワインです。なんでも以前は、俳優が本業だったそうですが、今は当主にもなり、ワイン造りが本業で、副業が俳優だそうです。

▶︎ムルソー ドメーヌ・ルーロ

1830年から続く歴史あるムルソーの造り手ドメーヌ・ルーロ。ムルソーを代表する偉大な生産者ですが、本国フランスと比べて、日本ではいまいち認知度が低いのが不思議です。

フレッシュレモン、グレープフルーツ、レクチェ種の洋梨、ライムストーン、マグノリア、アーモンド、澄ましバターの香り、滑らかな質感で、ピュアで旨味の深い味わいの果実味、しなやかな酸とミネラルがシームレスに広がります。

村名クラスですが、豊潤な旨味がありながらも、洗練された繊細さも感じさせる素晴らしいワインに仕上がっているのは、さすがはルーロですね。

* 原産国:フランス
* 産地:ブルゴーニュ
* 品種:シャルドネ
* 生産者:ドメーヌ・ルーロ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

今回は個人的にもおすすめしたい映画とワインを紹介させていただきました。お楽しみいただけると幸いです。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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