ペアリングワイン

ビオワインと酸化防止剤にまつわるエトセトラ

皆様は、ワインに含まれる酸化防止剤に関して普段意識されていますか?お店に行くと、酸化防止剤を最小限に抑えたワイン、酸化防止剤無添加ワインなどと紹介されています。では、この酸化防止剤とは一体どういうものなのでしょうか。

今回は、酸化防止剤にまつわる色々な疑問について少しでも解消いただけるようお話していきたいと思います。

ワインに使用される酸化防止剤とは?

酸化防止剤というのは、酸化による劣化を防ぐ目的としてワイン以外にも様々な食品に使用されています。種類も多種にわたり、人工的なイメージが強いですが、カテキンなどのようにナチュラルなものもあります。

その中で、ワインに使用される酸化防止剤としては亜硫酸塩(SO2、二酸化硫黄とも呼ばれる)が挙げられます。ワイン業界ではこの亜硫酸塩は古代から使われていたと言われることが多いのですが、本当は一般的に使用され始めたのは最近(19世期頃から) ではないかという説があります。

硫黄自体は古代から火山などの自然界に存在するもので、天然の硫黄は古代ローマ時代から、ワインの容器の表面を修復するためや、毛虫退治などに使用されていたという見聞がみつかっています。

この特性を生かして、ワイン造りにも、樽などの道具の消毒のために亜硫酸塩が使われ始めたといわれています。ただ、古代から「ワインを保存する為に酸化防止剤として亜硫酸塩を使用していた」ということはないとされています。

なぜワインの酸化防止剤として亜硫酸塩が使われるようになったのか?

では、亜硫酸塩がワインの酸化防止剤として使われるようになったのはいつ頃からどんな経緯があったのでしょうか?

イザベル・レジュロン著書の「自然派ワイン入門」(株式会社エクスナレジ発行)によると、『確かなのは、18世紀末までにワインの樽を(多くは運送のために)保護してワインを安定させるために硫黄の芯を燃やすこと(これはオランダ人の貿易業者が普及させた手法)が、常識となったということ』とされています。

つまり商業的な理由により出荷後ワインを変色させたり、雑菌の増殖による品質の低下がないように亜硫酸塩を使用されるようになったということです。

その後、19世紀末、石油化学産業が発達したことで、亜硫酸塩が手軽に入手できるようになり、またビジネスを加速する為にワインが安定する前に早い段階で出荷させるリスク回避として亜硫酸塩の使用が広まり現代に至るということです。

ビオワインにおける亜硫酸塩の使用

一方で、ビオワインの生産者の間では、亜硫酸塩などワインには必要がないという声も少なくありません。ある生産者は、「ワインは亜硫酸塩がなくても酸化に耐えうる丈夫なものだ。」と唱えています。

また、亜硫酸塩を添加することで、ワインそのものの特性が失われしまうリスクもあります。こういったことで、多くのビオワインの生産者には、亜硫酸塩を一切使用しない、あるいは、極力使用しない方法で取り組んでいます。

また、添加はしていないが、ワイン造りをする上で微量の亜硫酸塩が自然に発生する為に、ラベルに亜硫酸塩含有と書かれていることも少なくありません。

酸化防止剤や亜硫酸塩は、食品表示法で表記が義務付けされているため含有されていれば表記が必要となります。ただ、含有量の記載はないため、どれくらい含まれているかを知ることは難しい状況です。

酸化防止剤無添加ワインとビオワインの違い

他にも、スーパーなどでよくみる安価な酸化防止剤無添加ワインがありますが、こちらはビオワインとは全く異なるワインです。

日本では、他国からぶどうの「果汁」を輸入してワインを造ることができます。南米などからリーズナブルなぶどう果汁を仕入れ、日本で発酵、醸造しワインとして販売することができるのです。

面白いことに、日本のワイン生産量のランキングの上位に、ワイナリーがほとんどないにもかかわらず神奈川県が入っています。これは、輸入したワイン果汁を大手のワインメーカーが神奈川県で生産しているということですね。

そして、この輸入したぶどう果汁を確かに酸化防止剤無添加で作っているのですが、雑菌を繁殖させないために、ぶどう果汁を煮沸処理するといった人工的な処理を加えていることもあるようです。

そのようなことから、単純に酸化防止剤を添加しないワインと、畑やぶどう造りから、醸造段階の細部までこだわり、ワインのより良い状態を考慮して酸化防止剤の使用を控えているビオワインは全く別物と言えるでしょう。

ワインの酸化防止剤については、様々な意見があります。

ワインを造る上でメリットもありますが、ワインそのものの特性が失われてしまうデメリットもあります。また、アレルギーといった、人体への影響もないとは言い切れません。

自分にとって酸化防止剤をどうとらえるか、一度意識してみるのも良いかもしれませんね。

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時本 早緒里

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
365日違うワインを呑むをモットーに、自然派ワインを毎日嗜んでいます。
造り手さんの思いや製造工程に興味があり、人と地球に優しいワインを大切にその良さを伝えるワインセミナーを不定期で開催しています。
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