ペアリングワイン

プチ贅沢!お寿司とワインの万能ペアリングその2

前回に引き続き、お寿司とワインのペアリングについてお話ししたいと思います。

今回は貝類やエビなど、人気の寿司ネタと相性の良いワインのご紹介です。

ちょっと個性的なものから、最近ブームの食材まで様々あるお寿司にペアリングする際のヒントにしてみてください。

海老・イカ・貝類

◎海老

『車エビ』や海外産の『ブラックタイガー』、その他『甘エビ』など種類も豊富です。ボイルした『海老のにぎり』は噛むほどに旨味が増し、『生海老』の場合は特有の甘みを強く感じます。

海老は『グルタミン酸』や『イノシン酸』などの旨味成分が豊富なのも特徴です。ミネラル感たっぷりの辛口白かロゼワインが良いでしょう。

◎イカ

世界中で食べられていて、約450種ものイカがいます。日本で一般的なのは『アオリイカ』や『ヤリイカ』などがありますが、寿司店で多く使われているのは『モンゴウイカ(紋甲いか)』だそうです。

シンプルに『醤油』で食べる他、『一夜漬け』にしたり『ゆずの皮』を添えたりと様々です。シンプルに食べるならキレのある辛口白ワイン、漬けにした場合は軽めのタンニンの少ない赤ワインも良いでしょう。

◎帆立(ほたて)

日本では主に『北海道』や『東北地方』など北部で水揚げされています。一般的な貝類として人気の帆立は『肉厚』で『甘み』があるのが特徴的です。

また肝機能にも良いといわれる『亜鉛』も豊富に含まれているので、酒飲みの人にとっても嬉しい寿司ネタです。

濃厚な帆立の旨味には少しコクのある辛口白ワインが良いでしょう。

◎赤貝(あかがい)

昔は『東京湾』でも盛んに獲れていた赤貝も近年では漁獲量が減り、高級な寿司ネタとなっています。

『歯ごたえのある食感』と『オレンジの色合い』が特徴で、味わいも他の貝類と違い個性的です。

『磯の香り』も強く、貝類好きにはたまらないネタのひとつです。この独特の風味は赤貝に含まれる『ヘモグロビン』に由来していて、味わいにも『鉄分』が感じられます。

個性的な風味のある品種を使用した辛口白ワインやオレンジワインなどが良いでしょう。

海老・イカ・貝類のお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎トマダ デ カストロ フロール デ ヴェラーノ

* 原産国:スペイン
* 産地:ガリシア州 / リアス バイシャス
* 生産者:ボデガス トマダ デ カストロ
* 品種:アルバリーニョ100%
* タイプ:(白)辛口★☆☆☆☆甘口
* 度数:12%
* 飲み頃温度:8~10℃

スペインの北西でポルトガルに隣接している産地、ガリシア州の『リアス バイシャス』で造られる白ワインです。

生産者は、1988年創業の『ボデガス トマダ デ カストロ』です。リアス バイシャスとは『リアス式海岸』の意味で、日本の『岩手県・三陸海岸』のように複雑に入り組んでいます。

【ペアリングのポイント】
海の潮風を受けた『アルバリーニョ種』からは、爽やかな柑橘系の果実味に少し塩味を感じるワインが造られます。海鮮の産地でもあるため、様々な魚介類に良くマッチします。特に『甲殻類』や『貝類』など旨味成分豊富な寿司ネタとの相性は抜群です。

ウニ・いくら

◎ウニ

軍艦巻きのネタとして人気の『ウニ』も全国で水揚げされています。

『ムラサキウニ』や『バフンウニ』などがあり、『濃厚な甘み』ととろける食感が特徴的です。後味に『ほのかな苦味』も感じます。

ウニにワインを合わせるのは少し難しいので、比較的シンプルな味わいのスパークリングワインが邪魔をしなくて良いでしょう。

◎イクラ

イクラは『鮭』や『鱒(ます)』の魚卵を塩漬けや醤油漬けにしたものです。名前はロシア語が由来で、チョウザメの卵から造られる『キャビア』からヒントを得たそうです。

プチっとした食感に魚卵特有のとろみと甘みがあり、味わいとしては『醤油』の旨味がメインに感じられます。

濃厚な塩気のある魚卵には、少しコクのある格上のスパークリングワインが良いでしょう。

ウニ・いくらのお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎ドメーヌ・デリアンス クレマン・ド・ブルゴーニュ ブリュット・レゼルヴ

* 原産国:フランス
* 産地:ブルゴーニュ
* 生産者: ドメーヌ・デリアンス
* 品種:ピノ・ノワール 50%、シャルドネ 30%、アリゴテ 20%
* タイプ:(白泡)辛口★☆☆☆☆甘口
* 度数:12%
* 飲み頃温度:8~10℃

ブルゴーニュの『コート・シャロネーズ地区』の生産者『ドメーヌ・デリアンス』の造るクレマン(スパークリングワイン)です。

クレマンとは、フランスのシャンパーニュ地方以外の認定された地域で、シャンパーニュと同じ『瓶内二次発酵』により造られたスパークリングワインです。

除草剤を使わず、『リュットレゾネ(減農薬農法)』を取り入れたブドウ栽培と『自然酵母』と『培養酵母』を併用した醸造を行っています。

【ペアリングのポイント】
リュットレゾネ(減農薬農法)により栽培された『 ピノ・ノワール』、『 シャルドネ』をメインにアリゴテという土着の白ブドウ品種がブレンドされています。

ほぼシャンパーニュと同じ品種を使用しているため、その味わいも『リッチ』でコクのある辛口タイプとなっています。おそらく知らずに飲むとシャンパーニュだと思ってしまうでしょう。

シャンパーニュとキャビアをペアリングするような感覚で、イクラとウニを合わせるとマッチします。ピノ・ノワールを使用しているので、醤油との相性も良いでしょう。

煮物

◎穴子(あなご)

江戸前寿司の代表的な寿司ネタともいえる煮穴子。『真穴子(まあなご)』という種類が使われることが多く、煮汁を煮詰めた『ツメ』というタレによる旨味が特徴的です。

お店によりツメの濃さは異なりますが、基本的に『醬油ベース』の味わいとなります。濃い醤油味には完熟した果実味を感じる赤ワインが良いでしょう。

煮物のお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎エスピノ メルロー ヴィーニャ ウィリアム フェーヴル チリ

* 原産国:チリ
* 産地:マイポヴァレー
* 生産者: ヴィーニャ ウィリアム フェーヴル チリ
* 品種:メルロー85%、カベルネ・フラン15%
* タイプ:(赤)ライボディ☆☆☆☆★フルボディ
* 度数:13%
* 飲み頃温度:13~15℃

チリの『アンデス山脈』の標高600~1000mという山間で栽培を行うウィリアム フェーヴル チリ。山から吹き降りる冷涼な風の影響で上質なブドウが生まれます。

収穫は全て『手摘み』で、ブドウが劣化しないように気温の低い『早朝』に行われます。

品種はボルドーワインでも知られる『メルロー』と『カベルネ・フラン』を使用していて、醸造後にはフレンチオーク(フランス産の樽)で約8 ヶ月熟成されます。

メルロー特有の滑らかな果実味と甘酸っぱさに、樽のニュアンスからくる『香ばしくビター』な味わいが感じられます。

【ペアリングのポイント】
ほのかな果実の甘みと香ばしい濃厚なコクが『穴子のツメ(タレ)』に良くマッチます。ウナギの蒲焼の握りとあわせてもよいでしょう。

その他

◎サーモン

輸入の発達により人気となった寿司ネタです。伝統的なネタではないため、高級店ではあまり見かけることがありません。

日本の『鮭』とは異なり、一般的に『トラウトサーモン』といわれる淡水魚の『鱒(ます)』です。

寿司ネタとして使われるのは『アトランティックサーモン』という海水で養殖されたものが中心です。

脂ののった『トロサーモン』や『炙りサーモン』の他、チーズやアボカドなどバラエティに富んだ食べ方も特徴的です。

少し濃厚な辛口の白ワインやロゼワインが良いでしょう。

サーモンのお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎グラディウム ガルナッチャ ロゼ

* 原産国:スペイン
* 産地:カスティーリャ ラ マンチャ
* 生産者: ボデガス カンポス レアレス
* 品種:ガルナッチャ100%
* タイプ:(ロゼ)辛口☆★☆☆☆甘口
* 度数:12.5%
* 飲み頃温度:8~10℃

1950年スペインの南部『ラ・マンチャ』に設立された『ボデガス カンポス レアレス』の造る辛口ロゼワインです。

平均樹齢30年の品種『ガルナッチャ』を使用しています。ガルナッチャはフランス南部原産の『グルナッシュ』と同じ品種です。

果実味の強い品種なので、口当たりは滑らかながらもコクのあるロゼワインとなっています。

【ペアリングのポイント】
しっかりとした辛さもあるのでサーモンの旨味はもちろん、アボカドやチーズなどの組み合わせにもバランスよくマッチします。

◎肉寿司

近年のブームにより人気となっている『肉寿司』は、肉本来の味わいを楽しむために工夫された寿司ネタといえます。

海鮮寿司とは少し異なり、酢めしの酢が控えめなところも特徴です。またネタには『馬肉』や『ローストビーフ』などがあり、口の中でとろける味わいと肉の旨味が堪能できます。

タンニンと酸味のバランスの良い赤ワインが良いでしょう。

肉寿司のお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎シャトー・レ・トロワ・クロワ

* 原産国:フランス
* 産地:ボルドー地方 / フロンサック
* 生産者: シャトー・レ・トロワ・クロワ
* 品種:メルロ 85%、カベルネ・フラン 15%
* タイプ:(赤)ライボディ☆☆☆☆★フルボディ
* 度数:14.0%
* 飲み頃温度:13~15℃

高級ワインの代名詞『ムートン』や『オーパスワン』を手掛けた『パトリック レオン氏』の家族経営のシャトーです。

ボルドーの右岸『フロンサック』で『リュットレゾネ(減農薬農法)』を取り入れた栽培を行っています。

近隣に銘醸地としても名高い『サンテミリオン』や『ポムロール』があり、同じ粘土石灰質土壌のため、ワインの味わいにも特徴が反映されています。

スモーキーなスパイス香と力強いタンニンのあるエレガントな味わいです。

【ペアリングのポイント】
心地よい酸味もあるのでローストビーフや馬肉などの肉系の寿司ネタに良くマッチます。基本的に常温で良いですが、夏場など暑い時は少し冷やして飲むのがおすすめです。

まとめ

お寿司とワインのペアリングはいかでしたでしょうか?どれも共通点は『酢めし』ということもあり、酸の成分により旨味が構成されているワインとは非常に相性が良い料理です。

また、豊富な『寿司ネタ』や炙りなどの『調理法』、醤油やタレの『調味料』によって合わせるワインのチョイスが増えるのも楽しみのひとつです。

是非、寿司ネタの『色合い』とともに、味の濃淡を考えて気軽にペアリングしてみてはいかがでしょうか?

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クボイツヨシ

JSA認定シニアソムリエ、ワインコーディネーター、ワインライター

アカデミー・デュ・ヴァンにてワインを学び、株式会社セブンシーズ・インターナショナル(旧レストラン・ロアラ・ブッシュ)でワイン業務に従事。
後に九州へ帰郷、2005年にJSA認定シニアソムリエ資格を取得。
現在は酒販会社のワインアドバイザー兼、飲食店様へのワインコーディネイト、ワイン関連サイト各種への執筆やワイナリーを訪問してのトラベルライターとしても活動中。 クボイツヨシの記事一覧 

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