ペアリングワイン

プチ贅沢!お寿司とワインの万能ペアリング

お寿司と聞くとテンションが上がってしまうのは私だけでしょうか?お寿司は江戸時代から楽しまれている、日本の伝統料理のひとつです。

一見、高級なイメージもありますが、今やスーパーの鮮魚売り場などでも本格的なネタを使ったお寿司がリーズナブルに販売されています。

また、『ネタ』により味わいも様々です。醤油、たれ、塩で食べたり、シメサバのように酢で締めたものや、香ばしい炙り仕立てにしたものなど食べ方によっても楽しめます。

今回はそんな日本の代表料理ともいえる『寿司』と『ワイン』のペアリングについてのお話です!

ワインのペアリングの基本『料理の色に合わせる』

まずワインと料理のペアリングの基本として、『その料理の色合い』に合わせるという方法があります。

簡単な例では、『白身魚のカルパッチョに白ワイン』、『ビーフシチューに赤ワイン』などです。これは、料理や食材の色合いの濃淡により『味の濃淡』も同調する傾向にあるからです。

また余談ですが、人間の脳は『色を見て味わいを感じる』感覚があるともいわれています。色の濃い料理を見ると『味も濃いような感じがする』というように。

では、お寿司の場合はどうなんでしょうか?寿司ネタの特徴とともに相性の良いワイン見ていきましょう。

お寿司とワインの相性

お寿司は基本的に『酢めし』と『魚介』を材料にした料理です。魚種により『白身』や『赤身』、そのほか個性的な味わいの『貝類』やマグロのような『脂の濃淡のある魚』など味わいは様々です。

また、近年では『ローストビーフ』などの肉を使用した『肉寿司』なども注目されています。

代表的な寿司ネタと相性の良いワインのタイプにはどんなものがあるのでしょう?

白身魚

◎鯛(たい)

鯛と名の付くものは沢山ありますが、『真鯛』など数種以外は『あやかり鯛』といわれ厳密には『鯛』とは違う魚種となります。

ただし、あやかり鯛のなかには『キンメダイ』や『甘鯛』のように真鯛よりも高級なものもあります。

季節や獲れる海域にもよっても脂ののり具合は異なりますが、基本的には『さっぱりとした淡白な味わい』と歯ごたえが特徴ですので、比較的さっぱりとした辛口の白ワインが良いでしょう。

◎平目(ひらめ)

沖縄以外、北海道から九州まで各地で水揚げされています。天然と養殖で脂ののり具合は異なりますが、基本的には鯛と同じように『淡白な味わい』が特徴です。

エンガワには『程よい脂と旨味』にコリコリとした食感もあります。身の部分はキレのある辛口白、エンガワには少しコクのある白ワインが良いでしょう。

白身魚のお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎ドメーヌ ムーラン カミュ ミュスカデ・セーヴル エ・メーヌ シュール リー

* 原産国:フランス
* 産地:ロワール地方(AOC ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ)
* 生産者:ドメーヌ・ムーラン・カミュ
* 品種:ミュスカデ100%
* タイプ:(白)辛口☆★☆☆☆甘口
* 度数:12%
* 飲み頃温度:8~10℃

フランスの中央から西に流れる、ロワール河最下流の地域『ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ』にある生産者の程よい辛さの白ワインです。

ビオロジック(有機農法)により栽培された『ミュスカデ』を100%使用しています。

『海底の堆積物』が年月とともに地上に隆起した『シスト(片岩質)』といわれる土壌がワインにミネラル感を与えてくれます。

発酵後に『澱(おり)』とワインを一緒に寝かせる『シュール リー』を行うことで、穏やかな酸味とコクのある酒質になります。

※シュール リー(仏語で澱の上)=surシュール(~の上)、Lie リー(澱)。ワインを澱の上で熟成させ、アミノ酸などの旨味成分を抽出させる製法。

【ペアリングのポイント】
ミュスカデの産地は『ナント』という港町で、海産物も豊富です。そのため、お寿司とのペアリングにはとても相性が良いです。海岸沿いの『潮風』の影響もワインに表れているため、『昆布塩』や『藻塩』などで食べるとよりマッチします。美味しい塩を常備しておくと良いでしょう。

▶︎クライン ザルゼ セラー セレクション シュナン・ブラン ブッシュヴァイン

* 原産国:南アフリカ
* 産地:ステレンボッシュ / パール地区
* 生産者:クライン ザルゼ ワインズ
* 品種:シュナン・ブラン100%
* タイプ:(白)辛口☆★☆☆☆甘口
* 度数:13%
* 飲み頃温度:8~10℃

南アフリカの生産者『クライン ザルゼ ワインズ』が造る白ワインです。

アフリカというと暑いイメージですが、アフリカ大陸最南端にある南アフリカは、赤道からも離れているため意外と冷涼なんです。

ワインは、ビオロジック(有機農法)で栽培された『シュナン・ブラン』を100%使用しています。

シュナン・ブランは、フランスのロワール地方原産の品種で、南アフリカでは『スティーン』という別名でも広く栽培されています。

パインのような果実味に柑橘系の風味を感じる、しっかりとした酸味と程よいコクを感じる辛口タイプです。

【ペアリングのポイント】
爽やかな柑橘系の風味とバランスの良いコクと酸味が、『平目』のような淡白な白身とエンガワの濃厚なとろみなどに幅広くマッチします。また、平目は『ポン酢』とネギや紅葉おろしなどの『薬味』と一緒に食べることも多いので、柑橘系のポン酢にもよく合います。

赤身魚

◎鮪(まぐろ)

日本をはじめ世界各地で数多く食用として水揚されている魚です。『黒マグロ』や『キハダマグロ』など種類も様々ですが、寿司ネタとして一般的なのは黒マグロ(本マグロ)です。

味わいは部位により大きく異なります。赤身には『鉄分』が多く、トロには『濃厚な脂と旨味』が感じられます。

また、赤身は『漬け』にしたりと、同じ寿司ネタでも味のバリエーションがあるのがマグロの特徴です。

黒マグロ以外の種類は比較的『脂も穏やか』なものが多く、『カジキマグロ』などは割と淡白な味わいです。

赤身や醤油漬けには軽やかな赤、トロには少しタンニンのある赤ワインが良いでしょう。

◎鰤(ぶり)

成長とともに呼び名の変わる出世魚(しゅっせうお)です。小さいサイズを関東では『イナダ』や『ワラサ』、関西では『ハマチ』と呼び、80cm以上になると『鰤』と呼ばれます。

身は白いですが、血合いが多いため『赤身魚』の仲間に分類されています。

マグロの赤身とトロが合わさったような味わいといった感じで、冬場の『寒ブリ』になると大トロのような『濃厚な脂と旨味』が特徴となります。

白と赤の中間的なロゼワインや近年ブームのオレンジワインなどが良いでしょう。

赤身魚のお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎クラヴァン ワインズ ピノ・グリ

* 原産国:南アフリカ
* 産地:ステレンボッシュ
* 生産者:クラヴァン・ワインズ
* 品種:ピノ・グリ100%
* タイプ:(白/オレンジ系)辛口☆★☆☆☆甘口
* 度数:12%
* 飲み頃温度:8~10℃

2014年に南アフリカのステレンボッシュに設立された比較的新しい生産者『クラヴァン ワインズ』の白ワイン(オレンジワイン)です。

オレンジワインとは、分類上は白ワインですが、製法が赤ワインと同様に『醸し(かもし)』という工程を行います。

醸しはブドウの『果肉』と一緒に『果皮』、『種子』も漬け込むことで、ワインにコクのある風味と濃い色調をもたらしてくれます。実際このピノ・グリも見た目は『淡い赤ワイン?』と思うほど濃い色調です。

ピノ・グリは『フランス・ブルゴーニュ地方』が原産ですが、今や世界各地で栽培されています。産地により呼び名も変わり、イタリアでは『ピノ・グリージョ』、ドイツでは『グラウブルグンダー』などがあります。

【ペアリングのポイント】
ワインの特徴はオレンジを帯びたルビー色で果実味には『桃』や『プラム』の風味が感じられます。酸味とミネラルのバランスが良く、醸しにより果皮から『タンニン』も抽出されます。また、フレンチオーク(フランス産の樽)での熟成も行うため、ほのかなビターさもあります。脂ののった『鰤』や『マグロ』の赤身などにマッチします。

▶︎マコン ヴェルゼ ルージュ ジョブリーヌ

* 原産国:フランス
* 産地:ブルゴーニュ地方 / AOCマコン
* 生産者: ジョブリーヌ
* 品種:ガメイ100%
* タイプ:(赤)ライトボディ☆☆☆★☆フルボディ
* 度数:13.5%
* 飲み頃温度:10~13℃

フランスのブルゴーニュ地方『マコネ地区』にあるヴェルゼ村で100年以上続く生産者です。

ブドウ樹の平均樹齢は『25年』でビオロジック(有機農法)や『土壌の生命の維持』など地球環境を考えたワイン造りを行っています。

ボージョレなどでもお馴染みの『ガメイ』という品種を100%使用しています。ガメイの特徴は、ラズベリーのような果実味とスパイス香があり、口当たりには滑らかなタンニンも感じられます。

【ペアリングのポイント】
赤ワインの中でも、程よい酸味とタンニンのある『ミディアムフルボディ』といった感じなので、『漬けマグロ』や『中とろ』などの旨味のある脂にも良くマッチします。醤油との相性も良く、脂を流してくれる適度なタンニンは、濃厚な味わいのお寿司全般に合わせやすいのではないでしょうか。

青魚・光もの

◎鯵(あじ)

全国的に流通する大衆魚で『光もの』の代表魚です。癖のないシンプルな味わいですが、大分県の『関アジ』など近海物のブランド鯵には『酸味』や『脂』がのっています。

寿司ネタでは『すりおろした生姜』や『刻みネギ』が一緒に添えられている事が多く、全体的な味わいは『さっぱりとした爽やかさ』と『薬味の辛味』が特徴的です。

薬味の風味に合わせて、柑橘やハーブ香のある白ワインが良いでしょう。

◎鯖(さば)

鯵とならび代表的な光ものです。『本サバ』や『ゴマサバ』などの種類があり、特に秋口に脂がのって美味しいです。

鮮度が落ちるのが早いため『しめさば』など酢で締めたものが一般的ですが、地域によっては『生さば』で食べられることもあります。

比較的さっぱりとしていますが、『炙り』にしたものは香ばしく一味違った味わいが楽しめます。

酢が強い場合は、逆に酸の穏やかな辛口白のワインの方がバランスが取れてよいでしょう。

青魚・光もののお寿司と相性の良いワインペアリング例

▶︎ドメーヌ ミットナット フレール キュヴェ ギョタク

* 原産国:フランス
* 産地:アルザス地方
* 生産者: ドメーヌ ミットナット フレール
* 品種:リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ、ピノ・グリ、ピノ・ブラン
* タイプ:(白)辛口☆★☆☆☆甘口
* 度数:12%
* 飲み頃温度:8~10℃

フランスのアルザス地方の生産者『ドメーヌ ミットナット フレール』の造る白ワインです。

アルザスの中でも有機農法の『ビオディナミ(バイオダイナミック)農法』の造り手として特に注目されています。

ちなみに当主の『クリストフ ミットナット氏』の奥様は『由佳さん』という日本人の方で、フレンチのシェフもされていました。

由佳さんは札幌出身でもあるため、『お寿司に合うワイン』を造りたいという思いからクリストフ氏と試行錯誤を重ねてきたそうです。

【ペアリングのポイント】
このワインは様々な寿司ネタや酢めし、醤油、ワサビなどとの相性も考えて研究した結果『5種類の品種』に辿り着きました。使用されているのは『リースリング』、『ゲヴュルツトラミネール』、『ミュスカ』、『ピノ・グリ』、『ピノ・ブラン』です。スッキリと爽やかなリースリングにゲヴュルツトラミネールの『スパイシー感』と少し甘い果実味のあるミュスカなどをブレンドすることにより、様々なお寿司と楽しめるようになっています。

まとめ

お寿司とワインのペアリングはいかがでしたでしょうか?今回は代表的な寿司ネタと相性の良いペアリングワインをご紹介しました。

淡白な味わいの白身魚から、マグロのトロのように脂が特徴の魚など、お寿司といっても味わいは様々です。

また、醤油やポン酢など調味料によっても変わってきます。味の濃淡は食材の色調にもリンクするので、迷った時はネタや調味料の色合いにワインの色を合わせてみるのも良いでしょう。

次回は、貝類やエビなどお寿司好きにも人気の魚介類とのペアリングワインをご紹介したいと思います。

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【ネタ別】寿司 × ワインペアリング

クボイツヨシ

JSA認定シニアソムリエ、ワインコーディネーター、ワインライター

アカデミー・デュ・ヴァンにてワインを学び、株式会社セブンシーズ・インターナショナル(旧レストラン・ロアラ・ブッシュ)でワイン業務に従事。
後に九州へ帰郷、2005年にJSA認定シニアソムリエ資格を取得。
現在は酒販会社のワインアドバイザー兼、飲食店様へのワインコーディネイト、ワイン関連サイト各種への執筆やワイナリーを訪問してのトラベルライターとしても活動中。 クボイツヨシの記事一覧 

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