知られざるチェコ産ワインの魅力とフードペアリング
Dobrý den! (ドブリーデン/チェコ語でこんにちは!)
今回はチェコ産ワインと、チェコで愛されているフードペアリングをご紹介します!

まずは、チェコがどんな国なのか簡単にご紹介しますね。
正式名称は『チェコ共和国』。ドイツ、ポーランド、オーストリア、スロバキアに四方を囲まれた中欧に位置します。
公用語はチェコ語。風光明媚な街並みの首都プラハをはじめ、郊外にも見どころの多いとても美しい国です。
お酒事情でいえば、チェコは完全にビール大国。ビールの消費量は世界一で、なんと一人当たり年間181Lも飲まれています。
日本でも主流となっているピルスナースタイルのビールは、チェコ西部のピルゼン発祥なんです!
チェコのワイン事情とは!?
チェコ産ワインの95%以上はモラヴィア地方で生産されています。
モラヴィア地方は、チェコの南東部に位置し、スロヴァキアとオーストリアの2国境に接する地域です。
【モラヴィア地方のキヨフに広がる小麦畑の大草原!】

モラヴィア地方の中でも、特にワイン造りが盛んなのはズノイモ市です。
ズノイモ市は、神聖ローマ帝国の時代から高品質の白ワインの産地として知られており、「白ワインの貴婦人」「白ワインの女王」などと呼ばれ、数々のワインコンクールで最高賞を獲得しています。
そんなチェコ産ワインですが、生産量自体が他のヨーロッパ諸国と比べて小規模のため、そのほとんどが国内で消費され海外に輸出される量は少ないのが現状です。
【ズノイモ市の聖ニコラス教会】

日本でも買える!おススメのチェコ産白ワイン

* 生産地:モラヴィア地方
* 生産者:ジョージ ウヘレク
* 品種:パラヴァ100%
* タイプ:白、やや辛口
* 容量:750ml

ジョージ ウヘレクの所有する8haのブドウ畑では手摘みでの収穫が行われています。
パラヴァは、チェコ産ワインを代表する土着の白ブドウ品種です。ミュラートゥルガウとゲヴェルツトラミネールの交配品種であり、マスカットや桃のような甘い香りに、わずかなスパイシーさを併せ持った唯一無二の白ワインを生み出す品種です。
今回ご紹介するこちらのワインも、パラヴェの特徴がハッキリと出た上質な仕上がりとなっています。
アプリコットのような豊かな果実味とほのかな甘みが魅力で、キリリとした酸味が非常に印象的です。
《チェコの伝統料理、ペチェナー・フサとのペアリング!》

ペチェナー・フサ(pečená husa)とはガチョウのローストのことです。
チェコは海の無い内陸国という事もあり、魚を使った料理はほとんど存在しません。
畜産や農業が盛んな為、お肉をメイン食材とした料理が多いのが特徴です。
ガチョウはチェコの食卓には頻繁に登場し、特に11月11日の聖マルティンの日にはガチョウ料理を食べる伝統があります。
塩とクミンなどの香辛料で味付けされたガチョウをオーブンで焼くシンプルなレシピながら、ガチョウの肉は臭みもなく、ほどよく脂ののった肉質と、香ばしい皮目が絶品!
付け合わせには赤ワインとコンソメで煮込んだ紫キャベツを添えることが多いようです。
でも、日本ではガチョウの肉はなかなか手に入りませんよね。ペアリングをされる際には、鶏の骨付きもも肉のローストでも十分に気分が味わえると思います。
日本でも買える!おススメのチェコ産オレンジワイン

* 原産国:チェコ共和国
* 生産地:モラヴィア地方
* 生産者:シファニ
* 品種:パラヴァ 50% / ヴェルシュリースリング 50%
* タイプ:白、やや甘口
* 容量:750ml
造り手のシファニは南モラヴィアのヴルビツェ村に拠点を構えています。
代々農家の家系で、葡萄畑は約40haありますが、そのうち2/3の葡萄は地元のワイン生産者に販売し、最も高品質な葡萄のみを使用してシファニのワインを生産しています。
これまで受け継いできた土地を次世代にも健全な状態で残していきたいという思いから、ビオディナミ農法を実践しており、野生酵母を用い、SO2も最低限の使用に抑えています。
今回ご紹介するこちらのワインは、チェコの主要な白ブドウ品種のパラヴァとヴェルシュリースリングを収穫後、全房のまま数週間かけて発酵を行っています。
パラヴァ種由来のアプリコットのような華やかな果実感と程よいタンニン、ヴェルシュリースリングの骨格を併せもつ複雑な味わいとなっています。
無濾過・無清澄で瓶詰めされ、SO2の添加も瓶詰前に最低限の量を使用。地元モラヴィア産のアカシアを熟成樽に使うなど、テロワールを意識したナチュラルなワインです。
《チェコで愛される料理、シュニッツェルとのペアリング!》

シュニッツェル(Schnitzel)は薄切りの牛肉や豚肉に、目の細かいパン粉をつけて揚げたカツのことです。
揚げたてに、レモンを絞っていただく、ドイツやオーストラリアでも愛される欧州の定番料理。パン粉にレモンの皮を削って入れるレシピもあるようです。
カラッとキツネ色に揚がったシュニッツェルとオレンジワインは見た目から相性抜群!お肉の旨味と脂の味わいを、ワインの軽快なタンニンと酸が何倍にも美味しく感じさせてくれます。
ヴェルシュリースリングが持つ柑橘のニュアンスと絞ったレモンが相乗効果となって最高の食卓を約束してくれるでしょう!
日本でも買える!おススメのチェコ産赤ワイン

* 原産国:チェコ共和国
* 生産地:モラヴィア地方
* 生産者:スクラプ・パデサトースム
* 品種:アンドレ100%
* タイプ:赤
* 容量:750ml
スクラプ・パデサトースムは、大学のクラスメートであったヤコブとフィリップが2016年に設立したワイナリーです。
2人は大学卒業後、古いセラーをリフォームして小さな醸造所を手作りしました。自身のぶどう畑を購入することは困難であったため、オーガニックぶどう栽培者の下で働き、その畑からぶどうを入手しています。

チェコの土着品種であるアンドレは、シラーズのように濃い色調と、独特の酸味と土のようなニュアンスを持った黒ブドウです。
今回ご紹介するワインはフレッシュなラズベリーの香りに、梅のようなニュアンス。しっかりとした骨格のある味わいの中に優しい酸が溶け込んでいます。
印象的なラベルは発酵中に起こる小宇宙を表現しており、独自のスタイルと哲学に基づいた純粋で自然なワインです。
《チェコで愛される料理、グラーシュとのペアリング!》

グラーシュ(Gulasch)は、お肉のパプリカ煮込みのこと。
ハンガリー起源の料理で、ドイツやチェコなどの近郊の国でも定番料理として食べられています。
ビーフシチューに近いイメージですが、パプリカパウダーの溶け込んだソースがとても美味しく、本場では具材にもパプリカが入っていないとグラーシュとは呼ばないようです。
よく煮込まれたビーフの旨味に、ボリュームのある赤ワインがベストマッチします。
また、パプリカ由来の甘酸っぱいニュアンスと、今回のワインの梅のような香りは唯一無二の美しいマリアージュを発揮してくれます。
まとめ

いかがだったでしょうか?私は2020年の1月にチェコのプラハを旅行してきました。
美しい街並み!食べても飲んでも素晴らしく美味しい!ヨーロッパの中では物価が安い!と、今思い出しても最高の旅行になりました。
ぜひ、皆様にもチェコワインを味わっていただけたら嬉しいです。
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JSA認定ソムリエ / フリーライター
横浜で30年以上の歴史を持つオーセンティックバーのマネジャーを経験。
ウイスキー、ワインをはじめとした酒類全般、ペアリングの分野で幅広い見識を持つ。現在はこれまでの経歴を活かしフリーライターとして、酒類やペアリング、翻訳業など、執筆を生業として活動している。
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