ペアリングワイン

シャンパーニュテロワール探求!Part2

近年注目が集まるコート・デ・バール

フランスのシャンパーニュ地方南部に位置するオーブ県トロワの街の南に広がるブドウ栽培地域「コート・デ・バール」。

1927年にシャンパーニュの一部として正式に認められましたが、かつてはシャンパーニュ地方の括りから除外されたり、格下の扱いを受けてきましたが、現在は大手シャンパーニュメゾンのブレンド用として欠かせない存在であったり、こだわりのある小規模生産者が集まる注目の地域となっています。

今回は、そんなコート・デ・バールの魅力を少しでもお伝え出来ればと思います。

コート・デ・バールの特別なテロワールについて

気候は大陸性気候で、土壌は一般的にはシャブリと同じキンメリジャン土壌と一部ポートラディアン土壌も混ざります。コート・デ・ブランよりも南に位置し、熟度の高いブドウを収穫できます。

伝統的に黒ブドウの栽培が多く、フィロキセラ(ブドウネアブラムシによる害)以前は、ガメイやグエ・ルージュなど、今はピノ・ノワールが多く植えられています。

良質なピノ・ノワールが栽培できることから、リセイ村からはフランスの3大ロゼワインの一つ「ロゼ・デ・リセイ」が造られています。

そして、近年は温暖化の影響もあり良質な白ブドウも生産され注目が集まっています。コート・デ・バールにおいてシャルドネを使った素晴らしいシャンパーニュを造りだす産地として注目されているのが、モングー村です。

フランスで最も人気を誇るシャンパーニュ・メゾン「ニコラ・フィアット」で生産されるプレステージシャンパーニュ「パルム・ドール」をご存知でしょうか?

このキュヴェは、モングー村のシャルドネを5%使用しているがためにプルミエ・クリュ或いはグラン・クリュの表示記載ができません。モングー村の畑は、プルミエ・クリュにもグラン・クリュにも格付けされない畑だからです。

それでもセラー・マスターは、モングー村のシャルドネを欠かすことが出来ない重要な存在と捉えているのです。一体モングー村のシャルドネにはどんな魅力があるのでしょう?

コート・デ・バールの宝石!モングー村のシャルドネ

シャンパーニュにミネラルをもたらす白亜質土壌は、コート・デ・ブランの南側で深く沈み込み、コート・デ・バールのモングー村の丘陵で再び地上に現れます。

現在、モングー村全体で186haある畑の85%はシャルドネが植えられており、「第2のコート・デ・ブラン」と呼ばれています。

コート・デ・ブランのシャルドネと比べると、より南に位置し、コート・デ・ブランは東向きの斜面なのに対し、モングー村は南東向きでより日照に優れた環境です。

よってモングー村のシャルドネは熟度が高く、ボリューム感があり、マンゴーやパッションフルーツなどのエキゾチックフルーツの香りがするシャンパーニュに仕上がるわけです。

◎日本と意外な関係のあるモングー村

日本ワインの歴史を語る上で欠くことのできない二人の青年、高野正誠と土屋龍憲が1876年に果樹の栽培研究をしていた農学者シャルル・バルテのもとで栽培や醸造について学んだと伝えられていますが、実はこの二人が学んだ土地がモングー村です。

二人は約2年間モングー村で学び、100本の苗木を日本に持ち帰りましたが、これによって日本のブドウ栽培や研究が大幅に進みました。

この歴史を知ってぜひ楽しんでいただきたいのが、こちらジャック・ラセーニュのエマニュエルのシャンパーニュです。

日本愛溢れる!ジャック・ラセーニュ

モングー村に畑をもつ家族経営の小さな造り手。1964年に父ジャックによって設立され、それまではネゴシアンにブドウを売っていましたが、現在は息子であるエマニュエル・ラセーニュが引き継ぎ、モングー村やジャック・ラセーニュの名を高めています。

約4haの畑には、樹齢45〜65年の古樹のブドウ樹があり、ブルゴーニュの小樽、ジュラのヴァン・ジョーヌを熟成させた樽、500ℓのフードルなど多彩な樽を使い、野生酵母で発酵させ、マロラクティック発酵させ、醸造中にSO2(二酸化硫黄)は使わないという様々なこだわりがあります。

エマニュエルは経済を専攻した大学時代4ヶ月を東京で過ごした親日家です。

彼が新たに生み出したプレステージ・キュヴェ「クロ・サン・ソフィ」は日本との関わりを強く感じさせます。

エチケットに描かれている菊の絵は、シャルル・バルテが勲章を授与されたお礼として明治天皇のために品種改良した菊を贈ったことに因んでいます。

このシャンパーニュは、その素晴らしい味わいからシャンパーニュのモンラッシェと讃えられています。

ジャック・ラセーニュをまだ飲んだことがない方は、まずはこちらから!

▶︎ヴィーニュ・ド・モングー

モングー村の9つの区画のブレンドした名刺代わりの1本です。グレープフルーツ、パッションフルーツ、マンゴー、白い花、ヘーゼルナッツ、トーストの香り。きめ細やかな泡立ちにまろやかな果実味、豊富で厚みのあるミネラル、穏やかな酸がゆったりと旨味を運んでくれます。

熟度の高さからくるエキゾチックなアロマから、ドザージュゼロとは思えないリッチな味わいが本来のブドウの質の高さを感じさせます。

このシャンパーニュ、実は抜栓して5日間ほど半分ほど残してセラーの中で忘れていたことがありました。もう難しいかと思いながらも試飲してみると驚きました。

泡は抜けますがフレッシュでバランスが崩れることなく美味しかったのです。ブドウの質、シャンパーニュの質が良くないとここまでは持ちません。

抜栓してからの経過をみながらゆっくりとお楽しみいただけるシャンパーニュです。ぜひモングー村に想いを馳せてお楽しみくださいませ。

* 原産国:フランス
* 産地:シャンパーニュ
* 品種:シャルドネ100%
* 生産者:ジャック・ラセーニュ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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