ペアリングワイン

「追悼」ニュージーランドワインのパイオニアJoe Babichのワインをご紹介

みなさん、「Babich Wines(バビッチ ワインズ)」というワイナリーを耳にしたことがありますか?

日本では、ニュージーランドワインの認知度はまだまだ低いですが、世界的にはその品質の高さと価格のバランスに夢中になるワインファンが多く、年々人気が高まっています。

ニュージーランドワインの歴史はまだ浅く、今も発展の途中です。しかし、その発展の過程でニュージーランドワインを世界に広め、ニュージーランドワインの産業を大きく変えた一人の生産者がいます。

それが、タイトルにもある通りニュージーランドワインのパイオニア“Joe Babich(ジョー・バビッチ)”です。そのジョー・バビッチは、残念ながら今年2022年1月13日に天国へ旅立ちました。

今回の記事では、追悼の意を込めて彼が残した功績を辿り、彼が人生を捧げて育てたBabich Winesのおすすめワインをご紹介していきたいと思います。

記事を読んでいただき、Babich Wines、そしてニュージーランドワインを手に取っていただくきっかけになれば嬉しいです。

Babich Wines の歴史

ニュージーランドワインの歴史を語る上で、欠かせない存在のひとりが「Josip Babich(ジョシップ・バビッチ)」です。その名の通り、ジョー・バビッチの父で、Babich Winesの創設者です。

ジョシップ・バビッチはクロアチアで生まれ、14歳の時にニュージーランドへ移民として移り住みました。

当時、ジョシップの家族は化石樹脂の採取で生計を立てていましたが、ジョシップと2人の兄弟は、化石樹脂を採取する木が植えられていた土地に、ブドウの木を植えたのです。これが、Babich Winesの始まりとなりました。

ブドウの木を植えた4年後、1916年に、「バビッチ・ブラザーズ」という名前でワインの販売をスタート。その後、現在もワイナリーとセラードアがあるオークランド西部のハンダーソンへ移り、本格的にワイン事業をはじめました。

また、北島のホークスベイや南島のマールボロにもヴィンヤードを広げ、徐々にその規模を拡大させてきました。そして、1980年にはニュージーランドワインを始めてヨーロッパ(ドイツ)へ輸出。2016年には、創業から100年を迎え、現在は3代目となる世代を中心に発展を続けています。

Joe Babichの功績

創業者ジョシップ・バビッチの後を継ぎ、兄のピーターと共にBabich Winesを育ててきたジョー・バビッチ。

ジョーはもともと、薬剤師を目指していましたが、18歳で家業に入り、今年その生涯を終えるまで64年間に渡りニュージーランドワインの発展に貢献してきました。

父の代では「酒精強化ワイン」に力を入れていましたが、ジョーはピーターと共にテーブルワインの生産に注力しました。そして、第二次大戦終了後の1950~60年にかけて、ニュージーランドのワイン産業は徐々に広がっていきました。

その頃、ジョー・バビッチや、ニュージーランドのリーディングワインカンパニー「ヴィラ・マリア」の創設者ジョージ・フィストニッチを含む若手ワインメーカーは、毎週のように集まりニュージーランドワインの発展について話し合いました(一年に一度の開催に減りましたが、現在もその会は行われているんだそうです)。

彼ら、若手ワインメーカーの熱き想いが、ニュージーランドワインの品質を徐々に発展させ、1980年のワインの輸出を皮切りに、Babich Winesを始めとしたニュージーランドワインは国内外から高い評価を受けるようになりました。

また、時代の変化とともにワイン造りを発展させてきたジョー・バビッチは、約15年前からオーガニックワイン造りをはじめ、2009年にはBio-Gro organic認証取得。現在では7つのオーガニックワインを造っています。

こういった彼の功績が称えられ、ニュージーランドワインメーカーオブザイヤーの審査員、ニュージーランド航空ワイン賞の審査委員長など、多くのニュージーランドワイン産業の重役を担ってきました。

また、ニュージーランド産業を支える卓越した努力、能力と貢献を示した人物へ授与される「New Zealand Order of Merit」という勲章(日本でいう国民栄誉賞のようなもの)も受章しています。

おすすめBabich Wines3選

Babich Winesの歴史とJoe Babichについてご紹介してきました。ここでは、実際に日本でも買えるおすすめのワインをご紹介します。

①Babich Marlborough Sauvignon Blanc

手ごろな価格帯で、ニュージーランドワインを飲んだことがない方にも是非おすすめしたいのがこちら。

お値打ちながら、ロバート・パーカーを始めとした世界のワイン評論家から高く評価されている1本です。

パッションフルーツやライム、青草の香りがし、マールボロのソーヴィニヨン・ブランの特徴がよく表れています。

味わいは、中程度のボリューム感があり、飲みごたえがあります。余韻にかけて、グレープフルーツのような酸味が加わり、フレッシュな印象も感じられます。

白身魚やホタテのカルパッチョ、ささみのフライなど鶏肉料理とよく合います。

・原産国:ニュージーランド
・産地:南島 / マールボロ
・品種:ソーヴィニヨン・ブラン
・容量:750ml

②Headwaters Organic Pinot Noir Babich Wines

こちらは、オーガニック認証を受けたヴィンヤードで造られたピノ・ノワールの赤ワインです。酵母は野生酵母を使っているので、ナチュールワイン好きにもおすすめの1本。

香りは、ラズベリーやいちご、そしてナツメグなどのシナモン系のニュアンスもふわりと感じられます。

口に含むとプラムやブラックチェリーの様な熟した果実と、少しずつ広がるタンニンからくる奥深さが感じられます。

味わいに複雑さがありますが、するりと滑らかな飲み口です。サーモンのグリルや、ローストビーフなどなどとよくマッチします。

・原産国:ニュージーランド
・産地:南島 / マールボロ
・品種:ピノ・ノワール
・容量:750ml

③Babich Wines THE PATRIARCH

「Babich Winesは既に飲んだことがある」、「そのクオリティは説明がなくとも知っている」という方におすすめなのが、こちら。創業者ジョシップ・バビッチに敬意を表し、造られるBabich Winesのフラッグシップワイン。

‟THE PATRIARCH”とは、日本語で ‟家元“などを意味します。 カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、マルベックのブレンドで造られますが、そのブレンド比率は年ごとに変わります。

木樽で16か月熟成されたこのワインは、長期熟成にも適しており、香りにはカシスやプラムなど黒ベリー系の果実の層とシナモンなどのスパイスの層がはっきりと感じられます。

口当たりはまろやかですが、プラムやブルーベリーなどの凝縮した果実の味わいに、ダークチョコレートのようなコクが加わります。上品さに力強さを兼ね備えたワインです。

もちろん、今飲んでも良し、今後数年寝かせても良し、ワイン愛好家にとってはお値打ちワインではないでしょうか?

・原産国:ニュージーランド
・産地:北島 / ホークスベイ
・品種:カベルネ・ソーヴィニヨン54%、メルロ32%、マルベック14%
・容量:750ml

おわりに

改めて、ジョー・バビッチがニュージーランドワインの発展に与えた影響を調べてみると、彼の持つユーモアや、温かい人柄が軸となり、周りの人々へプラスの影響を与えたことが大きかったのだと深く感じました。

今回、Babich Winesから写真を提供いただきましたが、どの写真にも彼の人柄がとても良く表れていると思います。彼なしに、「ニュージーランドワインの発展はなかった」ということは間違いありません。

創業者ジョシップ・バビッチ、そしてジョー・バビッチの想いを受け継ぎ、今後もBabich Winesはニュージーランドワインを支えていきます。

是非、この機会にBabich Winesのワインを飲んでみてはいかがでしょうか?

高橋 宗子

【お家で楽しむワイン提案のワインエキスパート】
ニュージーランドワイン好きが高じて、ワイナリー・ブドウ畑巡りをする為ニュージーランドへ移住。
都内ワインインポーターにて星付きレストランにもワイン紹介をしてきた経験を活かし「お家でも気軽に楽しめるワイン時間」を提案しています。 高橋 宗子の記事一覧 

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