ペアリングワイン

カリッ!じゅわ!旬の焼き魚とワインのペアリング

本当に暑い今年の夏、みなさん、お元気でお過ごしですか?とは言え、アブラゼミ一色だったセミの鳴き声に「カナカナカナカナ…」というヒグラシの声も加わって、夕暮れを過ぎれば少しずつ秋の気配を感じる頃になりました。

こんな時期は体調管理にご注意を。夏バテで不足しがちだと言われている「タンパク質」を、今、一番美味しくて栄養も乗っている「旬の魚」で補いましょう。

調理法は、旬の味だからこその旨味をそのまま堪能出来るシンプルな「焼き魚」で。カリッと焼き上げた香ばしい皮の下から、じゅわっと染み出る旨味にぴったりのワインもご紹介します♪

「さんま」とワイン

秋の味覚のひとつと言えばさんま。このところ毎年この時期になると、さんまの高騰がニュースになりますが、今年もちょっとお高いようで。せっかく手に入った日は、“焼き魚前のひと手間”をお試し下さい。どの魚にも応用出来ますよ。

①さんまを洗う。エラの部分を中心に全体的に水洗いし、キッチンペーパーで表面の水分をふき取る。

②全体的に塩をふり、手のひらで、さんまを包みこむように軽く握りながら、さんま全体に塩をなじませ、その後10分程時間を置く。

③上の画像のように、全体的にパラパラと二度目の塩をふる。頭と尾は多めに。

さんまに二度塩をふることで、身の中に入り込んだ塩分と表面の塩分が、さんま本来の味わいをダブルで後押し。きっと落語の「目黒のさんま」さながらに、秋の醍醐味を存分に満喫出来ますよ。

そして、さんまの塩焼きにぴったりのペアリングワインは、こちら。

▶︎ムーラン・ナ・ヴァン・シャトー・デ・ジャック ルイ・ジャド

ボージョレ・ヌーヴォーでおなじみのカジュアルなワインを作り出すフランスはボージョレ地区。その中でもワンランク上のワインを醸す「AOCクリュ・デュ・ボージョレ」の「ムーラン・ナ・ヴァン」から、今回は、ブルゴーニュの老舗「ルイ・ジャド」が所有する名門「シャトー・デ・ジャック」をおすすめします。

軽く、透明感のある果実味が特徴の葡萄品種ガメイ100%ですが、こちらのワインのスパイスを加えて煮詰めた苺ジャムのような凝縮感、薔薇や紅茶のようなやさしい酸味をまとったドライなニュアンスは、まるでピノ・ノワールのよう。

梅干しの程よい酸味で、さんまのくせを取る「さんまの梅干し煮」を彷彿させます。もちろんクリュ・デュ・ボージョレのガメイならではなストレートな果実味も健在で、さんまの「血合い」の苦みもお味のアクセントに変えていく粋なペアリングです♪

「鮎」とワイン

禁漁が解禁された6月頃から旬が始まる鮎は、澄み切った清流の中のきれいな藻類を食べて成長するため、スイカのような独特の青や緑をイメージさせる香りを放ちます。

それが「香魚」と呼ばれる所以ですが、秋の鮎も、産卵のために川を下ってきた熟成した味わいの「落ち鮎」、プチプチッと卵が弾ける「子持ち鮎」など、一味重ねた美味しさで楽しませてくれます。

こちらの画像は、とある「梁(やな)」。河川の両岸に設置された石や木材などで川の流れをせき止め、誘導されてきた魚の行き先をふさいで捕獲する梁漁が行われている「観光やな」の写真です。

「やな」では足元でピチピチと飛び跳ねている、とれたて天然鮎のお刺身やフライなどの鮎尽くしを堪能できるのが醍醐味ですが、鮎の香しさ、何匹でも食べられる、あっさりとした旨味を堪能出来るのは、やはり塩焼きでしょうか。

鮎の塩焼きにぴったりのペアリングワインは、こちら。

▶︎ガヴィ デル コムーネ ディ ガヴィ ブリク サッシ ロベルト サロット

イタリア、ピエモンテ州のDOCG「ガヴィ」。昔ながらの葡萄品種「コルテーゼ」を100%使用した白ワインのみが認められたDOCGです。

大昔は海底だったという土壌から生まれる豊富なミネラル。クリスピーな口当たりを伴うひきしまった酸。ライムやグレープフルーツなどのジューシーな柑橘系アロマとハーヴィーなニュアンス。

そんな“さっぱり系”の代表選手のようなガヴィですが、その中でも、こちらのガヴィは認定地域の中で最も伝統ある畑で作られた一本。

恵まれた日照条件で育まれた程よいボリューム感は飲み応えがあり、凝縮度を増したコルテーゼ特有の爽やかなアロマは川魚特有の臭みを消し、“香しい魚”鮎の香り、美味しさをより一層引き立てます♪

「秋鮭」とワイン

川で誕生した鮭が北の海まで冒険の旅に出て、成長し、産卵のためにまた生まれた川へと帰る。どうして生まれた川へと帰るのか、それは未だに謎だそうですが、秋鮭は、そんなドラマティックな鮭の一生のいわばクライマックス。

生まれ故郷の川に上る前の秋鮭は、脂の乗った体に筋子と呼ばれる卵をこぼれんばかりに抱え、最高の旬を迎える美味しさです。

秋鮭は是非「コンフィ」で。「コンフィ」と言えばオイルに漬け込みながら、じっくりと低温加熱する煮込み料理ですが、今回は最後に表面をこんがりと焼き上げる“焼き魚仕立て”をご紹介します。

捨てるところがないと言われるほどの秋鮭の栄養、美味しさをオイルの中で閉じ込めて、よりジューシーに、半生のような触感で仕上げる一品です。

【秋鮭のコンフィ】

▼材料(2人分)
生鮭…2切れ(生食用)
a 水…360㏄
a 塩…約35g
a 砂糖…約20g
b オリーブ油…75㏄
b サラダ油…75cc
b ブラックペッパー…5~6粒
b タイム…5~6枝
b ローリエ…2枚
b にんにく…1片

①深めのバットにaを入れ、よく溶かし、鮭を漬ける。冷蔵庫で45分ほど寝かせ、下味をつける。

②にんにくは4~6等分にスライスしておく。

③鮭の表面の水分を拭き取り、ジップ付き袋にbをすべて入れ、空気を抜いて、しっかりと封をする。

④40~50度のお湯の中に②の袋をそのまま入れて、お好みの仕上がりまで10~30分ほど置く。お湯の温度は40~50度にキープしておくのが理想的ですが、沸騰させて一度落ち着かせた鍋の中に②を入れて蓋をし、10~30分程置いておく方法もおすすめ。時折、鮭の色味や硬さなどを確認しながら仕上げると、火を通しすぎずに仕上がります。

⑤食べる前に鮭の表面をカリッと焼き上げ、出来上がり。

そして、秋鮭のコンフィにぴったりのペアリングワインはこちら。

▶︎サン ジョセフ ブラン デシャン M.シャプティエ

フランスはローヌ地方の葡萄品種「マルサンヌ」100%。「ルーサンヌ」とブレンドすることが多いバイプレイヤー的な葡萄品種を、名門ワイナリー、シャプティエが堂々たる主役に据えた1本です。

以前、魚のグリルに合うワインを探しに来られたお客様にこちらのワインを紹介し「石を焼いたような香りがお料理にぴったりだった!」とのうれしいお話をいただいた思い出のワインです。

花崗岩の土壌で育った葡萄に現れる香り「ガンフリント」が、マルサンヌの特徴のひとつです。真夏の太陽で熱く熱された石が、突然の夕立でジュッと水蒸気を放ったような香りとでも言いましょうか。オイルでじっくりと蒸された秋鮭が表面を焼くことによって放つ香ばしい香りとは相性抜群です!

ミネラルを伴った、ドライフルーツや蜂蜜のようなとろりとしたニュアンスも、料理のオイリーな口当たり、下味で含ませたほのかな甘みと調和して、夏の疲れがほどけていくような、優しいエネルギーにあふれたペアリングです♪

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Yuko Imai

ボーダレスなお酒の楽しみ方を見つけると心躍るソムリエ兼唎酒師、お客様の欲しいものを探し出すことに至福の喜びを感じるワインアドバイザー、その道のプロフェッショナルな方々とコラボしながらお酒を楽しむ会の企画運営など、いつも冒険の旅の行き先を探しています。
一日も早い健やかな日々の訪れを心から願いながら。 Yuko Imaiの記事一覧 

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