ペアリングワイン

日本人醸造家のつくるニュージーランドワイン その2

前回ご紹介した、「日本人醸造家のつくるニュージーランドワイン」に引き続き、ニュージーランドで活躍する日本人醸造家のストーリー、そして彼らの造るおすすめワインをご紹介します。

日本人醸造家のつくるニュージーランドワイン

①URLAR
・醸造家:小山 浩平
・産地:マーティンボロー / 北島
・ブランド:2018年~

小山さんが醸造責任者としてスタートしたGLADSTONE URLARは、2018年に始動。小山浩平さんは東京大学卒業後、東京・海外を拠点とする金融マンとして活躍していました。ニュージーランドワインとの出逢いは赴任先のイギリス。兼ねてから農業に携わりたいという想いを持っていたことと、3.11の経験が重なり、人生を見つめなおしワイン業界への転身を決意されたそうです。

ニュージーランドへ移住後は、リンカーン大学でワイン学を学び、その後国内ワイナリーで醸造家として実績をつみました。2014年には自身で「グリーン・ソングス(旧アタマイ・ビレッジ・ワインズ)」を立ち上げ、その実績と経験を買われ2018年からはマーティンボーロに場所を移しGLADSTONE URLARをスタートさせました(現在もグリーン・ソングスのブランドは続いています)。

URLAR、小山さんについてはこちらの記事でインタビューにもお答えいただいていますので是非ご覧ください。

▶︎GLADSTONE URLAR Pinot Noir

・品種:ピノ・ノワール
・容量:720ml

ブルーベリーやカシスのようなベリー系果実、ナツメグや甘草のようなスパイスの香り。フレッシュながら香りからも複雑性が感じられます。口に含むとバランスの取れたタンニンと酸が感じられ余韻まで続きます。南半球のブルゴーニュとも称されるマーティンボローのピノ・ノワールの魅力を大いに感じる1本です!

②Folium Vineyard
・醸造家:岡田 岳樹
・産地:マールボロー / 南島
・ブランド:2010年~

フォリウム・ヴィンヤードは、岡田さんがお一人でブドウ栽培と醸造を行っている小さなワイナリーです。HPのチーム紹介には一緒に働く動物たちが紹介されており、何とも温かいお人柄がにじみ出ています。

ワインの名前でもあるフォリウムは、ラテン語で「葉」を意味します。「葉は光合成をし、果実の生成に必要な大きな仕事を行っている。自分はそれをアシストしているだけ」と話す岡田さん。

フォリウム・ヴィンヤードでは、現在ソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールの2種を造っています。ソーヴィニヨン・ブランはハーブ香のニュアンスの強いキャラクターではなく、フランスロワールのソーヴィニョン・ブランを彷彿とさせるような繊細な香りと味わいを持ちます。

日本でも見かける機会が少ないワインです。見つけるチャンスがあったらすぐにゲットしましょう!

▶︎Sauvignon Blanc Folium Vineyard

・品種:ソーヴィニヨン・ブラン
・容量:720ml

レモンやライムなどの柑橘類、青リンゴやリンゴのような爽やかな果実の香りが特徴的。味わいは、果実をギュッと絞ったようなみずみずしさと綺麗な酸がうまく調和し、余韻まで酸が長く続きます。このソーヴィニヨン・ブランは、お刺身や寿司などと相性抜群!と岡田さんのお墨付き(ワイナリー紹介ビデオではちらし寿司と合わせていらっしゃいました)。和食ともピッタリなワインです!

③Sato Wines
・醸造家:佐藤 嘉晃・恭子
・産地:セントラルオタゴ / 南島
・ブランド:2009年~

サトウワインズは、佐藤 嘉晃・恭子さんご夫婦が世界最南といわれるワイン産地、セントラルオタゴで始めたワイナリー。嘉晃さん、恭子さんともに前職は銀行マン。

ワイン好きなお二人のワインへの想いが募り、ワインを学ぶ為ニュージーランドに移住。リンカーン大学でワイン学を学んだのち、自然派ワインの代名詞「フィリップ・パカレ」などヨーロッパのワイナリーでも研修の経験を積みました。

帰国後は、セントラルオタゴに位置し、ニュージーランドを代表するワイナリーのひとつフェルトンロードで醸造家のキャリアをスタートしました。

そののち、セントラルオタゴのパイオニア的ワインメーカー、マウントエドワードで経験を積み、この地のテロワールを熟知し2009年にサトウワインをスタートしました。

ヨーロッパで自然派ワインに感化されたこともあり、有機かつバイオダイナミック農法でつくられたブドウを使用、SO2(亜硫酸)を極力使用しないなど、自然に極力近いワイン造りを徹底しています。

▶︎Sato Wines Pinot Noir Northburn

・品種:ピノ・ノワール
・容量:720ml

ラズベリーやカシスなどのベリー系果実の香り、ナツメグのようなスパイスの香りもほのかに感じられます。口当たりは優しく、果実のジューシーさの後から優しい酸とタンニンが加わります。繊細ながらも、どこか力強い印象を受けます。一年の寒暖差が激しい地域ならでは、他の地域とはまた違った複雑な味わいを感じられるピノ・ノワールです。

④KOYAMA WINES
・醸造家:小山 竜宇(たかひこ)
・産地:ノースカンタベリー / 南島
・ブランド:2009年~

小山さんもまた、変わったストーリーを持った醸造家のおひとり。小山竜宇さんは、お父様のお仕事の関係で幼少~中学生までを台湾で過ごしました。

アメリカの大学へ留学するなど海外で長く時を過ごしたのち、日本へ帰国。その後はイベント会社で勤務されていました。しかし、ものづくりに携わりたいという強い想いからワイン業界の道へ。

リンカーン大学でワイン学を学んだのち、ノースカンタベリー(クライストチャーチから北に約1時間)にあるMount ford estateで醸造家としてのキャリアをスタートさせました。

6年間アシスタント・ワインメーカーとして経験を積み、世界各国でもワイン醸造を経験、2009年には自身のラベル「コヤマワインズ」をスタートさせました。現在は、コヤマワインズとMount ford estateの醸造責任者2足のわらじを履いて活躍されています。

▶︎Tussock Terrace Vineyard Riesling

・品種:リースリング
・容量:720ml

ニュージーランドのリースリングを飲んだことがない!という方に是非飲んでいいただきたいのがこちら。オレンジピールやライムのような柑橘類の香り、はちみつや花梨などの華やかな香りが調和します。味わいは酸とコクのバランスが素晴らしく、ひとくち飲むたび満足感があるのにもう一杯と手を止められないワインです。

⑤九能ワインズ
・醸造家:中野雄揮
・産地:ネルソン / 南島
・ブランド:2017年~

九能ワインズを手掛ける中野雄揮さんは、今注目する日本人醸造家のおひとり。日本、オーストラリア、ニュージーランドの3拠点でワイン醸造に携わっています。

ワインとの出逢いは留学で訪れたオーストラリア。イタリア、オーストラリア、日本、ニュージーランドで醸造の経験を積み2017年~久能ワインの醸造をスタートさせました。

ニュージーランドでは、ネルソンにあるDON&KINDELIワイナリーとともにワイン造りを行っています。そのワインのスタイルは今までの常識を覆す、まさに「大型新人」。

ワインに名付けた「久能ワインズ」の久能(クノウ)とは、おばあ様方の苗字だそうで、この希少な名前を世に残したいという想いでワインに名付けたのだそうです。

ニュージーランドにもこういうスタイルの醸造家がいるんだ!となんだか嬉しくなる、同世代ながらに応援していきたい醸造家さんです。

▶︎Paper Bag Princess White

・品種:ピノ・グリ 50%、リースリング 50%
・容量:720ml

「レモンイエローと明るいオレンジの中間」といったような鮮やかなきれいな色。トロピカルフルーツや柑橘類などの明るいフルーツのニュアンスの香り。味わい自体もパッと明るい印象ですが、ミネラル感と酸が加わり全体をうまくまとめています。また白コショウのようなアクセントも感じられ、ひとくち飲むたびにもっと味わいの奥深さを感じたくなる、そんなワインです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。前回に引き続き計8名のニュージーランドで活躍する日本人醸造家のみなさんをご紹介しました。ワインをひとくち飲めば、さらにその造り手のことが知りたくなること間違いなしです。

ニュージーランドには、今回ご紹介しきれなかったワイン産業で働く隠れた日本人の方々もいらっしゃいます。いつか、そんな方たちのストーリーもご紹介出来たらと思います。

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高橋 宗子

【お家で楽しむワイン提案のワインエキスパート】
ニュージーランドワイン好きが高じて、ワイナリー・ブドウ畑巡りをする為ニュージーランドへ移住。
都内ワインインポーターにて星付きレストランにもワイン紹介をしてきた経験を活かし「お家でも気軽に楽しめるワイン時間」を提案しています。 高橋 宗子の記事一覧 

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