ペアリングワイン

夏に食べたい鍋!タジン料理とワインペアリング

今のような猛暑の中、熱々でボリュームたっぷりのシチューや煮込み料理、鍋物が食べたくなる気にはあまりなれませんが、モロッコのタジンの場合は話は別です。

スパイスを効かせれば、夏の暑い時期にも食べたくなるような料理が手軽に作れ、なによりタジンにはアフリカの砂漠地帯を想わせる異国情緒が感じられます。

基本的には、素材の味わいを生かした様々な料理ができますので、ワインとのペアリングも様々な可能性があります。そこで今回は、タジン料理とワインのペアリングについてご紹介したいと思います。

タジンとは?

タジン鍋で作る煮込み料理全般を「タジン」と呼びます。タジン鍋は、モロッコなどアフリカ北西部に伝わる調理器具で、とんがり帽子のような形のフタが特徴的な鍋です。

調理方法はいたって簡単で、野菜や肉などの具材を入れて弱火にかけるだけ。じっくりと火を通した食材から出た水分がフタのてっぺんまでのぼり、いったん冷やされることで水滴が落ちる、ということを繰り返すので、肉や野菜の水分だけで蒸し煮にすることができます。

これにより、素材の旨味と栄養が凝縮されるだけでなく、カサがかなり減るので沢山の野菜を入れても食べやすくなります。さらに調理に使う油も最小限でよく、タジンはヘルシーな料理として既に認知されています。健康志向の方でしたら、ぜひ一度は試してみたい鍋かもしれません。

また、タジン鍋は、調理してからテーブルにフタをしたまま運ばれることを前提とした調理器具です。そのため、そのまま食器として使えるだけでなく、ちょっとしたパーティーなどにも使え、フタを開けた時に立ち上る蒸気でテーブルを囲む人たちに素敵な高揚感をもたらしてくれるのも、大きな魅力です。

タジンの味付け

タジンに限らずモロッコ料理全般に言えることですが、特徴として様々なスパイスが効いています。これは料理に合わせてサフラン、クミン、シナモン、パプリカ、ターメリックなど様々な香辛料を多用するためです。唐辛子はあまり使われないので、アジア料理の舌を刺すような辛さとは趣の異なる奥深いスパイシーさがあります。

スパイス以外では、コリアンダーやイタリアンパセリなどのハーブ、オリーブ、デーツ、アーモンドなどのナッツ類やレモン、りんご、アプリコットなどのフルーツなどで味付けがされます。

味わいとしては、スパイスの刺激と香味食材、フルーツの甘みの甘辛ブレンドが、何ともいえないエキゾチックな深みを与えています。

レストランなどで食べるタジンは、大抵どっしりとした重いものですが、家庭の味はサッパリ柔らかな味わいです。スパイスを減らし野菜を多めに使えば、煮物のような親しみやすい味わいになります。

美味しく作るコツは、弱火でじっくりと時間をかけて、肉や野菜がホロホロクタクタになるまで柔らかく煮込むことです。モロッコではこのトロトロの煮込みをパンですくい上げていただきます。

鶏肉とレモンのタジン × プロヴァンス・ロゼワイン

タジンの定番といえば鶏肉とレモンのタジンです。鶏肉は大ぶりに切ったモモ肉を使い、塩コショウに加えてクミン、コリアンダーなど各種スパイスも調味に使われます。

レモンは生でも十分美味しいのですが、モロッコでは「シトロン・コンフィ」という、いわゆる塩レモンを使うそうです。塩レモンの塩気、酸味、皮が熟成した渋みが、全体の味わいを複雑にさせるとともに、鶏肉をサッパリとした味わいに仕上げます。

▶︎ミラヴァル コート・ド・プロヴァンス・ロゼ

フランス南部プロヴァンスの辛口ロゼワインの持つ華やかなアロマ、チャーミングな果実味はフードフレンドリーで、このタジン鍋にも寄り添います。

ロゼワインは、気軽に飲むワインとしてヨーロッパでは若者に人気が高いようですが、個人的には日本でも安くて美味しいロゼワインが気軽に買うことが出来るようになり、もっと人気が出てほしいと思います。

* 原産国:フランス
* 産地:プロヴァンス
* 品種:サンソー、グルナッシュ、シラー、ロール
* 生産者:ミラヴァル (ジョリー・ピット&ペラン)
* 容量:750ml

ラムとフルーツのタジン × ガメイ

モロッコで肉といえばラム肉がよく使われますが、先に述べた通り、タジンでは甘い味付けがされることが多いです。その味付けには、イチジクやアプリコットのようなドライフルーツやデーツが使われています。

私が食べたときに使われていたのは、プルーンとアプリコットでした。コクのあるラム肉にプルーンとアプリコットの甘酸っぱい風味、アクセントのゴマの風味も感じられ、エキゾチックという言葉がぴったりな味わいの鍋です。

▶︎マルセル・ラピエール モルゴン

ラム肉に合わせて、定石通りにボルドーの赤ワインとのペアリングも良いですが、ガメイもおすすめです。ガメイは、未だにボージョレ・ヌーヴォーのイメージが強いですが、今や世界各地で成功を収め、最も注目されているブドウ品種の一つです。

その中でも、ボージョレ地方北部の限られた区画はクリュ・デュ・ボージョレと呼ばれ、ガメイを使ってブルゴーニュのピノ・ノワールに匹敵する品質の高い赤ワインを生み出すとされています。

モルゴンは、そのクリュ・デュ・ボージョレの一つで、このワインの上品できれいな酸味と果実味がラムとフルーツのタジンとうまく生かされたペアリングです。

* 原産国:フランス
* 産地:ボージョレ
* 品種:ガメイ100%
* 生産者:マルセル・ラピエール
* 容量:750ml

ケフタと卵のタジン × テンプラニーリョ

ケフタとは、クミンパウダー、パプリカパウダー、チリパウダーなど数種のスパイスとひき肉を混ぜ込んだミートボールのことで、モロッコの定番料理です。卵を崩しながら食べると、全体をまろやかにつなぐソースになります。ケフタに使う肉の定番もやはりラム肉で、ラム肉の風味にトマトの酸味、スパイスの風味が溶け込んだパンチのある味わいです。

▶︎マルケス・デ・リスカル ティント・レセルバ

おすすめのワインは、スパイシーなラム肉との相性から、羊料理に合わせる定番の一つ、スペイン・リオハの赤ワインです。何度も体験していますが、テンプラニーリョの赤いフルーツの風味、優美な味わいと樽熟成に由来するスパイシーなニュアンスが、羊肉の旨味と相まって、お互いを引き立て合うから不思議です。

* 原産国:スペイン
* 産地:リオハ
* 品種:テンプラニーリョ、グラシアノ、マスエロ
* 生産者:マルケス・デ・リスカル
* 容量:750ml

パエリア × カヴァ

タジン鍋で作る煮込み料理とは少し違ってきますが、タジン鍋は煮込み以外にも様々な料理を作ることができますので、最後にご飯物でパエリアを。

タジン鍋を使って生米からパエリアを作ることも出来ますが、予め固めに炊き上げたサフランライスを使う方が簡単です。使う具材は海老やアサリ、ムール貝といった魚介類、鶏肉や、今の時期トマトやズッキーニといった旬の野菜を使っても美味しく出来ます。

▶︎フレシネ コルドン・ネグロ・ブリュット

ワインも具材のアレンジによって何でも合わせられますが、やはり暑い時期に合わせるなら、スペインの定番カヴァをキンキンに冷やして、テーブルを華やかに彩ってみてはいかがでしょうか。

カヴァは肉、魚、野菜など具材を選ぶことなく、オールマイティーに合わせられます。フレシネは、カヴァの代表的なブランドで、スペインでも定番です。日本でも気軽に手に入れることができます。

* 原産国:スペイン
* 産地:カタルーニャ
* 品種:パレリャーダ、マカベオ、サレーロ(チャレッロ)
* 生産者:フレシネ
* 容量:750ml

いかがでしたでしょうか?タジンは、基本的に具材を弱火にかけてじっくり火を入れるだけの料理なので、具材と時間さえあれば調理に手間がそれほどかかりません。

ル・クルーゼやストウブなど他の無水鍋でも代用して作ることが出来ますので、旬の野菜や身近に手に入る食材を使って、美味しいワインをお供にたまにはスタミナのつく料理を食べて、この夏も乗り切りましょう。

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HIROTSUGU SAKIMOTO

J.S.A.認定ソムリエ

イタリア留学中にワインを知り、帰国後はホテル・レストラン、ワインショップ、輸入業者などワイン一筋の職務経験を経て、現在は地元の酒屋に勤務。
イタリアで身につけた、ワインは気軽に料理と合わせて楽しむものという考えの基、なるべくブランドや先入観に囚われないよう、世界各国の様々なワインとの楽しみ方を日々模索しています。
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