ペアリングワイン

日本人醸造家のつくるニュージーランドワイン

「ニュージーランドワイン」と聞いて日本人醸造家のワインを思い浮かべる方も多いかもしれません。現在、世界各国に日本人ワイン醸造家がいますが、ニュージーランドは特にその数が多いことでも知られています。

その理由はどこにあるのでしょうか?その理由を紐解きながら、2回に分けて日本人醸造家がつくるニュージーランドワインをご紹介していきます。

ニュージーランドで日本人醸造家が活躍する理由

1. 言語のハードルが低い
世界を舞台に活躍したい。その初めの壁となるのが言語ではないでしょうか。ニュージーランドの公用語は英語(一部マオリ語)。「英語が話せない」という日本人は多いと思いますが、義務教育で学んできた英語がベースにあるため、旧世界ヨーロッパの言語やその他国の言語を一から学ぶよりハードルが低く生活に馴染みやすいといえます。

2. 移民に寛容
ニュージーランドは、世界的にみても移民の多い国の一つです。移民比率でいうと、移民受け入れ数トップのアメリカを超える28%(2020年度)。もちろん地域によってバラつきはありますが、特にワイン産業や農業は季節労働者として、外国人が多く働いている事もあり、多くの人種が暮らしています。そのため疎外感を感じにくいというのもポイントです。

3. 起業しやすい
2. 「移民に寛容」の理由の一つとしても考えられるのが、起業のしやすさです。実はニュージーランド、起業におけるハードルを項目化したランキングで、起業しやすさ第1位を4年連続で獲得しているんです。これは、ニュージーランド国民だけではなく、移民も同等の扱いを受けることができます。人種や性別に関係なく、自分でビジネスをはじめるのに優しい環境が整っています。

4. リンカーン大学
ワイン産業においては、南半球最古の農業大学である「リンカーン大学」があることも影響しているのではないかと思います。リンカーン大学は、国外からの留学生も多く、国内の有名醸造家にもリンカーン大学の卒業者が多数います。他国でワインを学ぶとなると、2〜3年掛かることが一般的ですが、リンカーン大学では最短1年でワイン学を学ぶことができるのも大きな点です。大学では、農業試験場やワイン畑やワイン醸造所などを保有しているため、ワイン産業について一から学ぶことができます。

5. 住みやすさ
そして、最後に上げられるのがなんといっても「住みやすさ」ではないでしょうか。 これはわたし自身も実際にニュージーランドに住んでみて感じたことです。どうしても日本に住んでいると、周囲のペースを気にしてしまい「日々生き急ぐ」ことに慣れてしまいますが、ニュージーランドの持つ「Take it easy(気張らずいこう)」という雰囲気が土地に人を根付かせるのではないかと思います。

日本人醸造家のつくるニュージーランドワイン
①クスダ ワインズ

・醸造家:楠田浩之
・産地:マーティンボロー / 北島
・ワイナリー設立:2001年

言わずとしれた「クスダワイン」。ニュージーランドにおける日本人醸造家の先駆け的存在でもある楠田さん。もともと大手メーカー勤務、のちオーストラリアシドニーの総領事館で勤務するなど華々しいキャリアを積んできました。

しかし、ワインへの想いが募り仕事を辞めドイツへ渡ります。ラインガウでブドウの収穫に携わったのち、ガイゼンハイム大学にてワインについて学びました。その後、縁がありニュージーランドへ移住。2001年にクスダワインを設立。

現在では、日本のみならず世界各国のワイン評論家から高い評価を獲得しファンが多いクスダワイン。ワインは入手困難、新ヴィンテージもすぐに完売してしまうほど。ここぞというときに飲みたい憧れのワインです。

▶︎KUSUDA ピノ・ノワール

・品種:ピノ・ノワール
・容量:720ml

KUSUDA ピノ・ノワールは、JAL国際線のファーストクラスでも提供されています。香りは、プラムのなどの熟した果実、クローヴやシナモンのようなスパイスのニュアンスが混ざり合います。心地良い酸とやわらかいタンニンのバランスが良く、味わいに複雑さと深みがあります。

②キムラセラーズ

・醸造家:木村滋久
・産地:マールボロ / 南島
・ワイナリー設立:2009年

ニュージーランド最大のワイン産地マールボロでワイン造りをしているのが「キムラセラーズ」。キムラセラーズは、滋久さんと奥様の美恵子さんのお二人で運営するブティックワイナリー。

滋久さんは、とにかく柔らかく謙虚なお人柄。もともと東京の大手ホテルでホテルマンとして働いていました。在職中、ワインスクールに通った際に出逢ったフランス人醸造家に感化され、ワイン造りの道へ進みました。

先にもご紹介したリンカーン大学でワイン学を学び、その後2008年にキムラセラーズを設立。2018年~は自社畑にてブドウ栽培を開始。現在ではニュージーランドワインの審査員としても活躍されています。

ワインラベルは、日本を象徴する桜でKoru(ニュージーランドを象徴するシダ)の形を表しています。これは日本とニュージーランドの調和を意味しているのだそうです。

▶︎キムラセラーズ マールボロ・ソーヴィニョン・ブラン

・品種:ソーヴィニョン・ブラン
・容量:720ml

レモンやグレープフルーツなどの柑橘系果実と洋ナシなどの甘美な果実の香りが混ざります。味わいは、豊かな果実味にフレッシュな酸が加わり、ライト~ミディアムボディのボリューム感です。日本人醸造家のつくるニュージーランドのソーヴィニョン・ブラン、是非お試しください。

③大沢ワインズ

・醸造家:大沢泰造
・産地:ホークスベイ / 北島
・ワイナリー設立:2006年

大沢さんもまた、ストーリーのある人生を歩まれたおひとり。建設会社を経営されていたお父様の後を継ぎ、会社社長に就任。その後も経営者として事業に関わってきましたが、こどもの頃からの夢であった「海外で農業をする」という夢を叶えるために、なんと55歳でニュージーランドに土地を購入しそのまま移住。

「安全で美味しいワイン造りは、最高のぶどうを作る事から始まる」という理念から、自然環境保護やサスティナビリティへ高い意識をもつニュージーランドを選ばれたそうです。現在は、現地ニュージーランド人醸造家たちとチームを組みワイン造りを行っています。

ご紹介する醸造家のなかでも、唯一北島ホークスベイにワイナリーを構える大沢さん。他とはまた違った個性をもつニュージーランドワインを楽しむことができます。

▶︎ワインメーカーズ コレクション シャルドネ

・品種:シャルドネ
・容量:720ml

Air New Zealand Wine AwardsやNew Zealand International Wine Showなど国内のコンペティションでも賞を受賞する実力派ワイン。リンゴや洋ナシ、ほのかに香るナッツやバニラなどのオークの香り。口に含むと、ジューシーな果実味と柔らかな酸が調和し、ドライフルーツなどの複雑味も感じます。ニュージーランドシャルドネの実力を感じる1本です。

まとめ

おひとり、おひとり、ここではご紹介できないくらい魅力にあふれる方ばかりです。「日本人醸造家のつくるニュージーランドワインその2」へ続きますので乞うご期待!

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高橋 宗子

【お家で楽しむワイン提案のワインエキスパート】
ニュージーランドワイン好きが高じて、ワイナリー・ブドウ畑巡りをする為ニュージーランドへ移住。
都内ワインインポーターにて星付きレストランにもワイン紹介をしてきた経験を活かし「お家でも気軽に楽しめるワイン時間」を提案しています。 高橋 宗子の記事一覧 

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