ブーム到来!自然派シャンパーニュ
ビオのシャンパーニュ
シャンパーニュ地方の都市ランスの市役所では毎年、ACB (Association des Champagnes Biologiques) によってプロ向けにビオのシャンパーニュ限定サロンが開かれています。
シャンパーニュのレストランで働くソムリエの中でも話題の催しで、それもそのはず、シャンパーニュでビオディナミやビオロジック栽培を行っている今話題の造り手たちが大集合するからです。
自然な栽培や醸造によってワイン造りを行うところが増えていますが、シャンパーニュも例に漏れず、それぞれ思想の違いはあれど、品質を重視してそれぞれのシャンパーニュ造りに精を出しています。
大手メゾンにブドウを卸して高値で買い取ってもらう農家の中には、生活の為に質より量を取る栽培をしているところも少なくない中、ビオに取り組んでいる造り手たちは、手間がかかり収穫量も減ってしまう事をものともせず、何よりも美味しいシャンパーニュを造ろうと力を尽くしているのです。
ビオのシャンパーニュは今でこそ市民権を得ていますが、昔は周りの生産者からもの凄く馬鹿にされたそうです。信念を貫いた先人たちがいたおかげで今の人気があり、守り抜かれた土壌があります。
今では大手のシャンパーニュ・メゾンの中でも(プロモーションも含まれていますが)自然な栽培や醸造に切り替えるところが幾つも出てきています。
自然派=美味しいではないので注意が必要ですが、美味しいシャンパーニュやワインを選ぶには、何よりも造り手をしっかり選ぶことが大切です。
今回は自然派の造り手の息吹が感じられるようなシャンパーニュを紹介させていただきます。
ルクレール・ブリアン
1872年にルクレール家がキュミエール村に設立した『ルクレール・ブリアン』は、シャンパーニュにおけるビオの元祖と呼ばれています。
1955年に4代目当主のベルトラン・ルクレールがシャンパーニュで初めてビオロジックに取り組み、その後の1985年には5代目となる息子のパスカル・ルクレールがシャンパーニュで初めてのビオディナミに取り組みました。
パスカルが急逝し、残された4人の娘たちは若過ぎて存続が危ぶまれたため売りに出され、大手グループの傘下に入りかけましたが、元モエ・エ・シャンドンのディレクターであるフレデリック・デメットと出資家のアメリカ人、エルヴェ・ジュスタンが共同オーナーとなり、ルクレール・ブリアンを譲り受けました。
エルヴェはオーナー兼醸造責任者として、栽培だけでなく醸造に関してのビオディナミを求めて実験と研究を繰り返しながら理想とするシャンパーニュ造りを行っています。
自然派シャンパーニュを代表する造り手であり、素晴らしい人間性の持ち主であるエルヴェ。口に含んだ瞬間からエルヴェの存在を感じさせるようなピュアで豊かなエネルギーが感じられます。
こちらのブリュット・レゼルヴはルクレール・ブリアンの中で最もお手頃な価格でエルヴェのシャンパーニュの魅力を垣間見ることができるキュヴェです。
シトラスフルーツの爽やかな果実香にクロワッサンやブリオッシュを彷彿とさせる香ばしさ、ピュアな果実味にきめ細やかなミネラルと美しい酸味が旨味とともにしなやかに広がります。
初めてこのシャンパーニュを飲む際に、エネルギーを感じるシャンパーニュなんてちゃんちゃらおかしいと思っていた私も、飲んだ瞬間からそれだと感じとってしまい、それがエルヴェ本人から感じられる雰囲気と同じでとても心地良く、彼自身がテロワールなんだと感じました。
白身魚のカルパッチョや、平目のムニエルなどお魚料理と相性が良く特におすすめです。
* 原産国:フランス
* 産地:シャンパーニュ
* 品種:ムニエ、ピノ・ノワール、シャルドネ
* 生産者:ルクレール・ブリアン
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml
クリストフ・ミニョン
黒ブドウ品種ムニエの代名詞的存在となったクリストフ・ミニョンは、ヴァレ・ド・ラ・マルヌの中央南側のフェスティーニの地に僅か6haの自社畑を所有し、ここで栽培されたムニエから造られるシャンパーニュはムニエ最高峰の魅力を発揮しています。彼のムニエはこの地の他の生産者と比べて、例年アルコール度数にして1%高い原料ワインを生み出すことも有名な話です。
樹齢45年のムニエを100%使ったムニエへの情熱を表現したキュヴェ。キュヴェ名のADNとは、DNA(遺伝子情報)の事です。クリストフのムニエは充分に味わいがあるため、ドサージュに多くの量を必要としません。このキュヴェのドサージュ量は3g/Lのみです。
小規模生産者のRM(レコルタン・マニピュラン)としては珍しく、リザーヴワインが50%を占めます。そして、40ヶ月の瓶熟成も特筆すべきポイントです。
蜜リンゴ、レモンやグレープフルーツ、アーモンドの花、蜂蜜、フリンティな香りなど豊かな香り。蜜っぽさを感じる果実味に溌剌としてキュッと締まるような酸が特徴的です。
味わいの厚みも感じられ、補助品種として扱われることの多いムニエを昇華させ魅力を存分に引き出していて、クリストフのムニエにかける情熱を感じます。
味わい的にはこれからの時期にもピッタリで、やや厚みがあるのでエビフライなど甲殻類のフリットと合わせるのがおすすめです。
* 原産国:フランス
* 産地:シャンパーニュ
* 品種:ムニエ
* 生産者:クリストフ・ミニョン
* 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
* 容量:750ml
リュペール・ルロワ
シャンパーニュの南に位置するオーブ県エッソワ村の外れでエマニュエル・ルロワとベネディクト・リュペールの二人によって運営されているリュペール・ルロワ。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌよりもブルゴーニュのシャブリの方が近く、グラン・クリュもプルミエ・クリュもない地で高品質で類まれなシャンパーニュが造られているのをご存知でしょうか?
二人はワイン造りの父として、ジュラのピエール・オヴェルノワや、同じくオーブ県にドメーヌがあるヴェット・エ・ソルベのベルトラン・ゴトロの名を挙げ、素晴らしい自然派の造り手である二人から大きな影響を受けながらシャンパーニュ造りを行っています。
栽培を担当するのはベネディクトで、醸造を担当するのはエマニュエル。二人はシャンパーニュの権威に臆することなく自分たちのスタイルを貫いています。
このキュヴェは、赤粘土主体の粘土石灰質土壌の区画に植わるピノ・ノワールとシャルドネを用いてステンレスタンクで澱とともに約6ヶ月熟成し、2年の瓶内熟成を経てドサージュなしで完成させます。
柔らかく温かみのあるピノ・ノワールと、繊細で硬質なミネラルを感じさせるシャルドネの個性がうまく融合しています。アロマティックな柑橘や白桃、ハーブの爽やかな香りがアクセントになっています。自然派ならではの旨味をしっかり感じさせながらもスルスルとした優しい飲み心地が特徴的なシャンパーニュです。
白桃とブラータチーズ、セルヴェル・ド・カニュなど、クリーミーな前菜と良く合います。是非お試しください。
* 原産国:フランス
* 産地:シャンパーニュ
* 品種:ピノ・ノワール、シャルドネ
* 生産者:リュペール・ルロワ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml
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JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。
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