ペアリングワイン

ニュージーランド・マールボロ地方で開催される『地元ワイン×パイ』のペアリングコンペティション

ワインに携わっていると、思いもよらぬペアリングに出逢うことがあります。その度に、世界にはまだまだ知らないペアリングで溢れているんだなとワクワクしてきます。

相性の良いペアリングを探す要素として、「濃厚な味わいの食事には重厚なワインを」「淡泊な味わいの食事には軽めのワイン」などいくつかポイントがあります。

中でも、その土地に根付く郷土料理とワインのペアリングというのは、ワインを語る上で欠かせない大切な要素ではないでしょうか。

旧世界にはワインの歴史とともに育まれ、定番と呼ばれるペアリングがいくつもあります。

例として、『イタリアトスカーナのサンジョベーゼ×トマトをたっぷり使ったタリアテッレ(トマトパスタ)』のように、このワインはこのペアリングを生み出すために生まれたのではないかと思ってしまうほど相性抜群のもの。

一方で、『フランスボルドー地方の甘口ワインソーテルヌ×フォアグラ』のように、素人では思いもつかないようなハッとする組み合わせもあります。

今回ご紹介するのは、ニュージーランド最大のワイン産地でもあるマールボロ地方に根付くペアリグです。ニュージーランドのワイン造りが本格的に始まったのは、1970年代。ワインの歴史自体も浅く、まだまだ発展途中です。

そんな新しい産地だからこそ、生産者や地域の人たちが知恵を絞って常日頃新たな試みを考えています。そのひとつでもあるのが、今回ご紹介するThe Great Burleigh Pie Pairingです。

地元の人気パイ屋で開催されるペアリングコンペティション!

The Great Burleigh Pieはマールボロ地方の中心部ブレナムの町の大人気パイ専門店です。手のひら程はあるであろう大きなパイに、ずっしりと具が詰まった絶品パイが有名で、ブレナムと言えばここ!という有名店です。

ニュージーランドはイギリスの植民地であったこともあり、パイやフィッシュ&チップスなどイギリスから伝わった多くの料理が独自変化を遂げてニュージーランドの郷土料理となりました。(ニュージーランドのコンビニのホットフードコーナーには、肉まんではなくパイが並んでいます!)

The Great Burleigh Pieで一番人気なのが、Pork Belly Pie(豚の角煮パイ)です。アジアからの移民も多いニュージーランドならでは、洋風×アジアンが融合したパイが誕生しました。

この、The Great Burleigh Pieが年に一度開催するペアリングコンペティションが「The Great Burleigh Pie Pairing」。10種のパイに合わせて、マールボロ産のワイン、ビール、サイダーの3部門でベストペアリングが決定されます。

ワイナリーがそれぞれのパイと合うペアリングを考え、応募します。2020年度は47のワイナリーが参加しました。10種すべてのベストペアリングはご紹介しきれませんが、厳選して3つのペアリングをご紹介します。どんなペアリングか一緒に想像しながら、読んでみてくださいね!

2020年度 ベストペアリング3選

①Chicken, Leek & Mushroom Pie × Misty Cove Wines Landmark Chardonnay
チキン、リーク&マッシュルームパイとミスティコ―ヴワインズ ランドマークシャルドネ

リークとは、長ネギの2倍ほどの大きさもある「西洋ネギ」のことです。ニュージーランドには、日本でいう長ネギ使った料理とはスタイルの違うリーク料理がたくさんあります。

身が大きい分食べ応えがあり、グリルすると甘みも増し玉ねぎとも長ネギとも違った美味しさです。鶏肉にリーク、そしてマッシュルームの組み合わせが最高で、私の中では一番のお気に入りのパイです。

▶︎Misty Cove Wines Landmark Chardonnay

・ワイナリー:ミスティコ―ヴワインズ
・産地:マールボロ地方
・品種:シャルドネ
・容量:750ml

お肉と野菜の旨みが溢れるパイには、リンゴのような爽やかさと白桃のように熟した果実味、ほんのりと加わるトースト香など複雑な香りと味わいを持つミスティコ―ヴワインズのシャルドネが選ばれました。味わいに厚みがありながら、優しい酸を感じられるので脂質の少ない鶏肉にはピッタリな組み合わせではないでしょうか。

②Pork Belly Pie × GREYWACKE : Chardonnay
ポークベリーパイとグレイワッキシャルドネ

先程ご紹介した店一番人気の角煮パイです。ゴロっとした角煮がこれでもかという程ずっしりと詰まっています。角煮とパイ、その相性は?!と食べる前は少し不安でしたが、角煮自体の味付けはそこまで濃くないので不思議とパイにもマッチします。ボリューミーですが気付いたら1個まるまる間食できてしまう、後を引く味わいなんです。

▶︎GREYWACKE Chardonnay

・ワイナリー:グレイワッキ
・産地:マールボロ地方
・品種:シャルドネ
・容量:750ml

これは驚きました!ポークベリーパイに合わせるなら断然ピノ・ノワールだろうと予想していました。しかし、グレイワッキのシャルドネとなれば頷けます。

このワインには良くある新世界のシャルドネとは全く違う個性があります。ナッツをスモークしたような燻し香とスパイスのニュアンス、グレープフルーツやリンゴの蜜のような果実味を感じます。

とても凝縮度の高い味わいですが、ドライな後味は豚肉の脂身をすっきりとリフレッシュさせてくれるでしょう!

③Jamaican Lamb Pie × Astrolabe Wines Spätlese Riesling
ジャマイカンラムパイとアストロラーベワインズ エスペーアートレーゼリースリング

そして、最後にご紹介するペアリングは2020年度の最優秀ペアリングに輝いたジャマイカンラムとアストロラーベワインズ リースリングのペアリングです。

これぞ、「ソーテルヌとフォアグラ」のように意表を突くペアリングではないでしょうか。甘口ワインは、デザートとの組み合わせや食後酒として提案されることが多いですが、まだまだ想像もつかないようなベストマッチがあることを証明してくれました。

「リンゴのような爽やかな甘みがスパイスとうまくマッチした」と評価コメントが添えられています。残念ながら、エスペーアートレーゼリースリングは現在日本では入手することができないようなので、代わってドライリースリングをご紹介します。味わいは違えど、アストロラーベワインズの味わいを感じていただけるでしょう。

▶︎Astrolabe Wines Spätlese Riesling

・ワイナリー:アストロラーベワインズ
・産地:マールボロ地方
・品種:リースリング
・容量:750ml

白い花の花束のような可憐な香り、ライムやレモンの皮、リンゴのような爽やかな果実味を感じます。味わいはドライで心地よい酸が余韻まで続きます。

生春巻きや香草サラダを合わせれば、ジャマイカンラムとアストロラーベワインズ エスペーアートレーゼリースリング以上の高評価が獲得できるかもしれません!

おわりに

実はこのコンペティション、ペアリングだけではなく一般の方が考案したパイのレシピの審査も行っています。

2020年度、チャンピオンに輝いたのはなんと8歳のMyalくんが考案した「パルメザンチーズのペストリーがたっぷり入ったトスカーナビーフパイ」でした!

地域を巻き込み、盛り上がるイベント。そして、このコンペティションで集まった$2,350(約17万円)は貧困層に食料を配給するボランティア団体マールボーロフードバンクへ寄付されました。

楽しみながら、社会へ貢献する。日本でもこんなイベントが身近に開催されると良いなと思います!

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高橋 宗子

【お家で楽しむワイン提案のワインエキスパート】
ニュージーランドワイン好きが高じて、ワイナリー・ブドウ畑巡りをする為ニュージーランドへ移住。
都内ワインインポーターにて星付きレストランにもワイン紹介をしてきた経験を活かし「お家でも気軽に楽しめるワイン時間」を提案しています。 高橋 宗子の記事一覧 

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