イタリアトスカーナの必須チーズ
イタリアには20ある州ごとに、さまざまなチーズがあります。イタリアを旅すると、その土地ごとに変わるチーズを食べるのも醍醐味です。
今回は、トスカーナ州のチーズとワインペアリングをご紹介します。
イタリアトスカーナのチーズ
フィレンツェが州都のトスカーナ州のチーズといえば、なんといってもペコリーノチーズ。羊(ペコラ)のミルクからつくられるチーズです。
ペコリーノチーズは、トスカーナでは家庭でもレストランでも必須です。家庭では、ほとんど毎日チーズを食べますので、ペコリーノチーズは冷蔵庫の常備品。レストランの前菜の「チーズの盛り合わせ」には、必ずペコリーノチーズが入っています。
ひとことでペコリーノチーズといっても、フレッシュなものから熟成タイプまで多種多様です。やわらかいパルミジャーノチーズやかたいモッツァレラチーズは存在しませんが、ペコリーノチーズはやわらかいものからかたいものまで千差万別。熟成期間によりかたさが違ってきますし、熟成方法、産地によっても味わいが異なります。
ペコリーノチーズの名高い産地は、ピエンツァ。世界文化遺産に登録されているピエンツァの街の周辺でつくられるペコリーノチーズは、リッチな味わいで、トスカーナのみならずイタリア全土で知られています。
また、承認の条件が最もきびしいカテゴリーであるDOP(保護原産地呼称)の認証を受けているペコリーノもあり、それらはよりコクがあり、羊乳のマイルドな旨味を堪能することができます。
フレッシュなペコリーノチーズとワインペアリング
フレッシュなペコリーノチーズ「ペコリーノ・フレスコ」は、製造から数週間で出荷されます(フレスコはイタリア語でフレッシュの意味)。
白っぽい色で、やわらかく、出来立ての味わいを楽しむことができます。特に、3月(マルツォ)あたりに出回るペコリーノ・フレスコは「マルツォリーノ」と呼ばれ、特別扱い。春の新芽を食べた羊が出すミルクでつくられるため、1年のうちで最も味わい深いのです。
ライトな口当たりですが、コクのあるペコリーノ・フレスコは、アロマ豊かな白ワインと好相性です。トスカーナの名産ペコリーノチーズには、やはりトスカーナのワインがぴったり。
おすすめは、コルドルチャのピノ・グリージョ。洋梨の香りが広がる華やかな白ワインで、ペコリーノ・フレスコに適しています。
セミハードのペコリーノとワインペアリング
フレッシュなタイプのペコリーノ・フレスコに対し、熟成タイプの「ペコリーノ・スタジョナート」は、コクのある味わいで、チーズ好きにはたまらないおいしさです。
チーズは、熟成がすすむにつれて水分が抜けてかたくなり、塩気が強くなり、黄色っぽい色になります。そして、深みのある風味が出てきます。4か月熟成のスタジョナートはマイルドなコクを楽しむことができ、1年熟成のものは凝縮した味わいです。
熟成期間中に腐敗しないよう、表面に加工が施されます。皮がオレンジ色っぽいものは、トマトをすりこんであるもの、茶褐色のものはオリーブオイルを塗ってあるもの、赤いものはブドウの搾りかすを付けてあるものです。
また、藁(わら)やクルミの葉に包んだり、土の下や洞窟に入れたり、熟成方法もいろいろです。熟成方法により、風味も異なります。
大きさによっても熟成のスピードが違うため、サイズも選ぶときのポイントです。小さなものは熟成が早くすすみ、大きなものはゆっくりと熟成します。
深みのあるチーズには、深みのある赤ワインを!モンテプルチアーノ地方のヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノはなめらかな味わいで、ペコリーノ・スタジョナートとよくマッチします。
アヴィニョネージのヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノは、ベリー系の果実味とやわらかいタンニンのバランスがよい優美な赤ワインです。
ハードタイプのペコリーノとワインペアリング
ペコリーノ・スタジョナートよりさらに熟成の長い、「リセルヴァ」または「ヴェッキオ(よく熟したの意)」と呼ばれるペコリーノチーズは、包丁で切るとポロポロ崩れるくらいかたい質感です。熟成の旨味が頂点に達し、滋味豊かな味わいです。
チーズの余韻が非常に長く続くので、ワインもどっしりとしたテイストのものを選びましょう。偉大なワインであるブルネッロ・ディ・モンタルチーノがしっくりきます。
カパルツォのブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、芳醇で複雑味があり、ペコリーノ・リセルヴァと合わせると、心に染みるペアリングが完成します。
まとめ
味わいの幅が広い分、ワインのペアリングの幅も広がるペコリーノチーズ。今も昔も、トスカーナの人々に欠かすことのできない、そして、地元のワインとともに楽しまれているイタリアならではの味わいです。《関連記事》
・ワインに合う!チーズレシピ集
・チーズフォンデュとワインのペアリング
・パルミジャーノとランブルスコはポー川の霧が育む美味!
イタリア在住ワインコーディネーター
2003年にフィレンツェに料理&ワイン留学。
2004年よりフィレンツェ在住。イタリアソムリエ協会ソムリエ資格保持。
トスカーナのワイナリーツアーを企画・主宰し、通訳案内もしている。
1日の終わりに、手作り料理とワインをペアリングすることが何よりの楽しみ。
▶︎フィレンツェ・イン・タスカ
太田 由歌の記事一覧
新着口コミ
ワインペアリングを楽しめるお店、レストランを探す
都道府県から探す