ペアリングワイン

密かな人気!シードルに合う料理

高まるシードル人気

近年シードルの人気が高まっていることをご存知ですか?シードルはリンゴを用いたお酒で、ラテン語で『果実を発酵させてできたお酒』という意味があります。

近年は、ヨーロッパの自然派ワインの生産者が手掛けた高品質なシードルをワインショップなどで見かけるようになったり、日本でもリンゴの産地を中心に小規模生産者が造るこだわりのシードルが増えて密かに盛り上がっています。

アルコール度数が2〜8度前後とワインと比べて低いので、アルコールに弱い方や休日のお昼からゆるゆると楽しむのにもぴったりです。

ちなみに『シードル』とはフランスでの呼び名で、イギリスやニュージーランドでは『サイダー』スペインでは『シドラ』そしてアメリカでは『ハードサイダー』『アップルサイダー』と呼ばれています。

アメリカでは、ハードサイダーがかつてはビールよりポピュラーな飲み物だったそうですが、近年クラフトビールとともにクラフトハードサイダーブームが再び到来しています。特にハロウィンや感謝祭やクリスマスシーズンには温めてスパイスを加えて楽しまれています。

日本のシードルは紅玉など食用のリンゴを用いることが多く、水分が多いため繊細でスッキリとした味わいのものが多いです。フランスのノルマンディーでは、食用リンゴよりも酸味が豊かで小ぶりで凝縮した味わいのリンゴを用いて造られるので果実の豊かな風味が感じられます。

風味別に苦味種(アメール amère)、甘苦味種(ドゥース=アメール douce-amère)、甘味種(ドゥース douce)、酸味種(アシデュレ acidulée)の4種類に分別されたリンゴから数種のブレンドや、中には数十種をブレンドして造られたものもあります。

様々な生産者がこだわりのシードルを造っていますが、中でもおすすめはノルマンディーにあるドメーヌ・デュ・フォール・マネルです。有機栽培のリンゴを使った風味豊かなシードルで生産量は多くはありませんが、ナチュラルな旨味が感じられます。見つけた際には、是非手にとってみてくださいね。

ドメーヌ・デュ・フォール・マネル

ドメーヌ・デュ・フォール・マネルは、カマンベールチーズで有名なカマンベール村とリヴァロ村の間に位置するサン・ジョルジュ・アン・オージュ村の小さなドメーヌで、育てることの難しい有機栽培のリンゴから素晴らしいシードルを造り出しています。

1765年からシードルを造り始めて樹齢80〜200年にも及ぶ高樹齢の木々からは凝縮感のあるリンゴの実が収穫できます。そして、当時から続く伝統的な製法で手造りされたシードルは、どのキュヴェもそれぞれの味わい深さが楽しめます。

▶︎シードル・ブリュット・パー・ナチュール

約2週間陰干しして旨味が凝縮したリンゴを用いた濃厚で複雑な風味が特徴で、リンゴの風味がたっぷりと詰まっています。八朔や生姜の爽やかでピリピリした風味に、金木犀、べっこう飴の芳醇で甘やかな香り、洗練さというよりは田舎っぽく麦わらの風味など複雑味があり、余韻が長く続きます。

2018年は温暖でリンゴも完璧に熟し豊作な年でした。味わいはやや辛口な仕上がりで、食中酒として脂ののった魚の刺身にワサビ醤油をつけて合わせてみると意外ですが非常に良く合います。

品種:ジョリルージュ40%、グワンダンヌ30%、ドゥースモワンヌ30%

▶︎シードル・デュ・フォール・マネル・グルニエ

屋根裏で極限まで陰干しのできる気候条件の特別な年のみに製造される限定キュヴェのシードルで、濃厚で甘美な果実感が堪能できます。約2ヶ月半に及ぶ長期の陰干しのシードルは腐敗のリスクと隣合わせの中、細心の注意を払って造られます。手間暇かけて造られたシードルは驚く程濃厚で、複雑な風味が溢れます。

洋梨のレクチェ、花梨のコンポート、タルトタタン、カラメル、ラム酒のような芳しい香り、果実の凝縮感があり、豊かな甘みに、力強いミネラル感、溌剌とした酸味などコントラストのある上質な味わいです。

タルトタタンなどのデザートや、ブーダンノワール、黒酢酢豚など味わいのしっかりとした料理ともバランスよく味わえる素晴らしいクオリティのシードルです。

品種:ドメーヌ40%、オーポラン20%、ビスケ10%、ジョリルージュ30%

シードルと相性の良い料理

果物からできるシードルは甘くて食事には合わないと思っている方がいらっしゃいますが、是非知っていただきたいのがシードルには相性の良いお料理が豊富にあるということです。

★お野菜や魚介の天ぷら、唐揚げ、コロッケなどの揚げ物
お野菜の甘みに寄り添い、ペティアンの弾ける泡立ちが揚げ物といただくとサッパリとした余韻になるため相性良く楽しめます。ワインのようにミネラル感を感じるシードルは魚介の風味ともマッチするので、魚介の天ぷらともばっちりです!

★ブルターニュ名物のガレット
ガレットとは、円形状に平らにして焼いたお料理全般を指します。ブルターニュ名物のそば粉のガレットとシードルは最も有名な組み合わせで、現地では可愛らしい絵柄の描かれた陶器のボウルにシードルを注いでガレットともにいただきます。じゃがいものガレットとも良く合います。

★カマンベールチーズ
カマンベールチーズとシードルは同郷ノルマンディーの鉄板の組み合わせです。

★タレの焼鳥
タレの甘やかな味わいの焼鳥とも良く合います。コクを深めてくれる優秀な調味料のような組み合わせです。

★豚肉料理
豚肉料理とシードルは間違いのない組み合わせです。牛肉の風味とリンゴの風味はあまり合わないのですが、豚肉ならばっちり!香ばしく焼き上げた生姜焼きや豚のステーキに合わせてみてください。

★ブーダン・ノワール
ブーダン・ノワールとは、豚の血を使ったソーセージのことです。説明だけ聞くとちょっと引いてしまう方もいますが、ほんのりと優しい甘みがあってジューシーでとっても美味です!日本ではあまり見かけませんが、フランスではビストロやワインバー、シャルキュトリーのお店で人気のメニューです。このブーダン・ノワールは付け合わせにリンゴのソテーやじゃがいものピューレを添えるのが一般的で、リンゴのソテーを添える代わりにシードルを合わせてみると、最高のマリアージュが楽しめます。

★中トロのお寿司や生牡蠣
シードルの産地ブルターニュでは豊富な魚貝類が採れるため、現地では魚貝類とシードルは定番の組み合わせです。中でも中トロや生牡蠣といったミネラルと素材の甘みを感じる生の魚介類と相性良く楽しめます。中トロのお寿司と合わせる際には、山葵を多めにつけることによりシードルとの味わいのバランスが良くなります。生牡蠣と合わせる際にはコンソメのジュレや、意外ですがメープルシロップを数滴かけていただくとシードルとの相性がより高まります。

★アップルパイやタルトタタン
リンゴを使ったケーキや、ショーソン・オ・ポムといったリンゴのパイ包み焼きなどリンゴのスイーツと定番で間違いのない組み合わせです。

リンゴから造られたシードルもワインと同様に、幅広いお料理と相性良く楽しめる大きな魅力があるのです。お食事によって今日はワインよりシードルの方が合うかな?なんて日には、是非合わせて味わってみてくださいね!

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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