ペアリングワイン

ジビエ料理とワインのペアリング

ジビエとワイン

寒くなってくると食べたくなるジビエ料理。ジビエとは狩猟によって捕えられた鳥獣のお肉のことで、独特の野生の風味が魅力です。野生の鳥獣は秋になると冬を越す為に、木の実や虫などを沢山食べて栄養を蓄えるので特に肉質が良くなります。

合わせるワインも野趣ある香りのものや、血液のニュアンスや鉄の香りのあるものなど、料理によって様々なワインと合わせて楽しめます。

今回は、ジビエ料理と相性の良いとワインを紹介させていただきます。

雷鳥

日本では天然記念物に指定されているニホンライチョウは、日本での狩猟は禁じられています。エゾライチョウやヨーロッパの雷鳥は狩猟が可能で、今もいただくことができます。

ジビエの中でも野兎と並んで独特の香りが強いことで知られています。血の味わいが濃くレバーのような味わいで、松をエサに育つことから針葉樹や松ヤニのような独特な香りやコクがあり、苦みも感じられます。脳みそも美味で、とろける美味しさです。よく合わせられるフォアグラや血液を使ったソースも滋味溢れる味わいです。

合わせるワインは、針葉樹の香りが同調するローヌの赤ワインがおすすめです。

▶︎コート・ロティ・バルバリン ドメーヌ・マティルド・エ・イヴ・ガングロフ

ローヌのテロワールを表現する生産者ガングロフのワインは大変希少で入手困難です。土地本来の個性を最大化するために、有機栽培に取り組み、コート・ロティの4つの畑のそれぞれの個性を見事引き出しています。

ブルーベリーやプラムのコンポート、スモーキーなニュアンス、胡椒、リコリス、ユーカリ、アニス、ミント、マッシュルーム、鞣革、タール、腐葉土、ジビエ、ココアなどの複雑で豊かな香りです。

緻密な印象の果実味に、綺麗に伸びがよく広がるフレッシュでしなやかな酸、豊富なタンニンのバランスが良く、エレガントな印象です。

* 原産国:フランス
* 産地:コート・デュ・ローヌ
* 品種:シラー、ヴィオニエ
* 生産者:ドメーヌ・マティルド・エ・イヴ・ガングロフ
* 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
* 容量:750ml

ヤマシギ

フランスではあまりの美味しさに乱獲が続き、狩猟が禁止されてしまったヤマシギ。日本では狩猟が可能ですが夜行性でジグザグに飛んで逃げるため狩猟するのが難しく、大変希少なジビエの一つです。

しっとりした赤身肉で、繊細な味わいがします。内臓や脳みそが特に人気で、旨味が詰まっています。合わせるワインは、繊細さと豊かな味わいを兼ね備えたポマールの赤ワインがおすすめです。

▶︎ポマール・レ・グラン・ゼプノ ドメーヌ・ルシアン・ル・モワンヌ

ブルゴーニュ№1のネゴシアンと称されるドメーヌ・ルシアン・ル・モワンヌ。骨格のしっかりしたワインの多いポマールですが、この一級畑グラン・ゼプノは繊細でエレガントな個性が魅力的で私も大好きな区画です。

ラズベリー、チェリーの砂糖漬け、赤スグリなどの赤いフルーツの香り、バラやラヴェンダーのフローラルな香り、ほんのりミントのニュアンス、チョコレート、ヴァニラ、シナモンの甘やかな香りが芳醇に香ります。

滑らかな舌触りに、熟度の高い赤系果実を連想させる甘やかな果実味と甘酸っぱいフレッシュな酸、豊かなエキス分が感じられ、きめ細やかなタンニンがしなやかに広がります。

* 原産国:フランス
* 産地:ブルゴーニュ
* 品種:ピノ・ノワール
* 生産者:ドメーヌ・ルシアン・ル・モワンヌ
* 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
* 容量:750ml

野兎

ジビエの女王と称される野兎。ジビエの中でも雷鳥と並ぶ風味の強さが特徴です。フランスの古典料理のリエーブル・ア・ラ・ロワイヤル(野兎の王家風)という野兎、フォアグラ、豚肉などを使用し、コニャックと赤ワインやトリュフ、兎の出汁や血液を使ったソースをかけた贅沢な料理はルイ14世も食したと言われている野兎を代表する一皿です。

合わせるワインは、熟成したバローロや、シャトー・ヌフ・デュ・パプの赤ワインがおすすめです。熟成による複雑な風味と野兎の複雑な風味がマッチして驚くほど官能的な組み合わせです。

▶︎シャトー・ヌフ・デュ・パプ シャトー・ラヤス

シャトー・ヌフ・デュ・パプのトップ生産者シャトー・ラヤス。シャトー・ヌフ・デュ・パプの特徴である畑に転がる小石を全て取り除き、北向きで粘土質の土壌に植えられた古樹のグルナッシュを遅摘みし、類まれなミネラルが表現されたワインを造り出しています。グルナッシュのみを用いて造られているのにも関わらず、複雑で、驚くほど繊細でエレガントな味わいが愉しめます。

チェリーのコンポート、クローブ、スターアニス、シナモンなどの豊かなスパイスの香り、ライムストーン、リコリス、バラのポプリ、腐葉土、紅茶、シガーの幾重にも重なる複雑な香りです。滑らかな舌触りに、凝縮した果実味としなやかな酸、豊かなミネラル、甘く熟したタンニンがよくまとまり、しなやかに長い余韻へと繋がります。

* 原産国:フランス
* 産地:コート・デュ・ローヌ
* 品種:グルナッシュ
* 生産者:シャトー・ラヤス
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

猪のジビエは害獣駆除の観点からも素晴らしい料理で、日本でも昔から猪鍋など食されてきたジビエの一つです。

豚に似た味わいですが、より旨味が強く、旨味がありながらもサッパリとした脂身の味わいが魅力です。煮込むことによりこの脂身の美味しさが濃く感じられます。

シヴェ・ド・サングリエという猪の煮込みは、猪の出汁と血とチョコレートを合わせた黒いソースのものが一般的です。

合わせるワインは、カカオや血液の香りがするカオールの赤ワインがおすすめです。

▶︎オブラス・コンプレタスNo.2 ロスタル

カオールの自然派として有名なシモン・ビュッセの元で修行し、長らく自然栽培された畑の一角を譲り受けてワイン造りをしているロスタル。

有名出版で編集者として活躍したことから、素敵な洋書風のデザインがエチケットが採用されています。カオールワインによく見られるミクロ・ビュラージュではなく、マセラシオン・カルボニックを施していて、過度な抽出を行わずに50年前のカオールのエレガントな味わいを再現しています。

プルーン、カシスリキュール、ローズペタル、腐葉土、カカオ、血液など還元的な香りも感じられます。凝縮した果実味や、フレッシュな酸、旨味、豊かで溶け込んだタンニンが穏やかに染み入るように広がっていきます。還元臭が気になる際には、キャラファージュするのもおすすめです。

猪と合わせることで、ワイン単体で飲むと癖のあるように思える野趣のある香りが野生の猪肉の風味とマッチし、ソースに使うチョコレートとワインのカカオの風味が同調し、より双方の風味が濃厚に楽しめます。

* 原産国:フランス
* 産地:シュッド・ウェスト
* 品種:メルロ 、マルベック
* 生産者:ロスタル
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

ワインとジビエの素晴らしい相性をお楽しみいただけると幸いです。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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