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イタリアナポリ発祥の「ピッツァ」がユネスコの無形文化遺産へ

イタリア人の生活に密着しているピッツァ!

そもそも、「ピッツァ」という軽やかな響きは、アメリカの「ピザ」とは違うトーンでイタリア人の耳に響きます。イタリアの歴史の中で、「ピッツァ」という言葉が登場するのはなんと西暦997年のこと。じつに千年以上の歴史を「ピッツァ」は持っているのです。

現代のピッツァは子供たちが学校に毎日持っていくおやつの定番であり、イタリア人が奥さんとの約束を忘れても欠かさないサッカー観戦のお供であり、コンビニや立ち食いそば屋がないイタリアではちょっと小腹が空いたときの軽食でもあります。

もはやイタリアの国民食であるピッツァですが、今回ユネスコの無形文化遺産に登録されたのは「ナポリのピッツァ職人の技」と限定されています。なぜでしょうか?

見た目も味も作る工程もすべて芸術的!

実は、食文化がユネスコの無形文化遺産に登録された例は過去にも多くあります。日本の「和食」も2013年に文化遺産となりました。そのほかにも、2010年にフランス料理とメキシコ料理、そして地中海式ダイエットが、2013年には韓国のキムチが、2016年にはベルギーのビール文化がそれぞれ文化遺産に認定されています。

今回、ナポリのピッツァの職人の技が文化遺産となった理由について、世界遺産会議では「ピッツァの職人の技は、身振り手振り、ナポリ民謡、表現方法、ナポリ方言、生地の精製法などにおよび、まぎれもない人類の文化遺産である」と発表されました。

さらに、ピッツェリアとはピッツァ職人と客がカウンター越しにやりとりするありかたも舞台のようであり、常連客たちが変わらぬ交情を深める場所であることがひとつ。また、ナポリの貧しい生活から生まれた「ピッツァ」がナポリの生活と密接に絡み合っていることなども、評価された理由だそうです。

貧しい生活から生まれた「ピッツァ」でも、その長い歴史の中でイタリア王妃マルゲリータがエピソードに登場するなど、社会的身分を取っ払って愛されてきたピッツァの文化が認められたということでしょうか。

イタリア政府も巻き込んだ8年越しの執念が実を結ぶ

ナポリのピッツァを世界遺産に、という声が上がったのは2009年のことでした。カンパーニア州のピッツァ職人組合のかけ声に、農業食科森林省やイタリア専業農家連盟も協力を惜しまなかった結果、8年越しの執念がようやく実を結んだことになります。職人組合が文化遺産認定のために集めた署名は、なんと200万人分!

現代のピッツァの原型は1600年頃から

997年に「ピッツァ」という言葉が存在していたことはまちがいありませんが、当時のピッツァは保存がきく固いパンのようなものであったと言われています。

現在、私たちが食べるピッツァに近い形になったのは1600年前後のこと。薪を入れた釜で焼いた平べったいパンに、ニンニクとラードと粗塩で味付けするという非常に豪快なものであったようです。

もう少し上品なタイプになると、「カーチョカヴァッロ」と呼ばれるチーズとバジリコが乗っていたのだとか。ナポリのピッツァのシンボルでもあるトマトソースが乗るようになるのは、18世紀の前半でした。

そして、イタリアの国旗の色を模しバジリコ、トマトソース、モッツァレッラチーズを使った「ピッツァ・マルゲリータ」がナポリを訪問したイタリア王夫妻に捧げられたのは1898年のことです。

ただし、一説にはこの逸話は伝説に過ぎず、1810年頃にはすでにバジリコとトマトソースとモッツァレラチーズを乗せたピッツァが存在したと主張する学者もいますが。

ピッツァがもたらす経済効果がすごい!

ところで、イタリアの国民食であるピッツァは不景気なイタリアの支柱ではないかと思うくらいの経済力を持っています。

イタリアのピッツァ市場は、なんと100億円ユーロ。ピッツァに関連する仕事に従事する人数は10万人強、週末にはさらに5万人がパートとして働いています。

イタリアで一日に生産されるピッツァの枚数、500万枚。そして、イタリア人が食べるピッツァの量、年間平均一人あたり7,6キロ!

ピッツァはワインにも合うのか?

昨今のイタリア人は、もっぱらビールでピッツァを楽しんでいます。しかし、ピッツァもワインも「メイド・イン・イタリー」の顔。このふたつの組合せが、合わないはずがありません。

まず、モッツァレッラチーズなどの脂肪分の多いチーズがたっぷり乗ったピッツアに合うのは、マルケ州産のヴェルディッキオ。トマトソース、モッツァレッラ、オリーブ、タマネギなどが乗った濃厚なピッツァには、ペニーゾラ・ソッレンティーナ・フリッザンテ・ナトュラーレ・グラニャーノ。

同郷のピッツァとワインのマリアージュは、多くの批評家が評価しています。そして、代表格の「マルゲリータ」に合うといわれているのが、スプマンテやブリュやプロセッコなどのスパークリングワインです。実は、トマトの酸味は赤ワインを飲むと苦味へと変わってしまうのだとか。そのため、トマトソースがベースのピッツァの場合は白ワインを飲むのが無難、というのが専門家たちのご意見です。

さらには、あらゆるピッツァと相性がよいのが「ロゼ」なのだとか。チーズと生ハムだけのシンプルなピッツァには、ことのほか若いロゼが合うようです。

世界にひろがるピッツァの輪!

ナポリはパスタの発祥地でもあります。イタリア料理の代表格であるパスタとピッツァが同じ街で生まれたというのも興味深い話です。

そして、イタリアンのレストランが世界各地に星の数ほどあるように、ピッツァを売るお店も世界中に広がっています。ピッツァを世界で最も愛する国民はアメリカ人で、一人あたりの年間平均摂取量は13キロにもなります。

気取ることなく友人や家族とわいわいがやがや大騒ぎしながら食べることができるピッツァは、まさに世界にその輪を広めているといっても過言ではないでしょう。

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cucciola

イタリア在住十数年、読書と美術鑑賞と食べることを生き甲斐に、イタリアの山奥で生息中。 cucciolaの記事一覧 

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