日本ワインはなぜ世界で認められるようになったのか?
そもそも「日本ワイン」って?国産ワインとの違いとは?
「日本ワイン」と「国産ワイン」。
同義語のように思えますが、実はこの2つ、意味は全く異なるのです。
一見どちらも国産のブドウを使用しているようですが、国産ワインについては必ずしも国産ブドウを使用しなくてもよく、輸入ワインや輸入したブドウ果汁などを使用しても、国内で醸造すれば国産ワインと名乗ることができるのです。
ほとんど海外の原料を使っても「国産」って、なんだか不思議ですよね。
それに対し日本ワインとは、日本産ブドウのみを使用し、日本国内で製造されたワインのことをいいます。言い換えるなら、日本生まれの日本育ちの純国産といったところでしょうか。
かつてはこの線引きが曖昧でしたが、やはり両者を区別するべきとの考えは存在したようです。
そして、2003年に行われた山本博氏の『日本ワイン(早川書房)』の出版記念パーティーの際、山本氏が「日本ワイン」という言葉を発したことを皮切りに、日本ワインの定義が徐々に浸透していくようになりました。
世界で認められるようになった日本ワイン
近年では、日本ワインを海外へ輸出する動きも多く見られています。
その背景には、欧米における日本食ブームがあるのではないでしょうか。
ワインと料理は、一般的に同じ産地のものを選ぶと相性が良いので、日本食を食べながら日本ワインが飲みたいという需要も高まってきているのではないかと考えられます。
こうした流れを受け、日本の固有のブドウ品種である甲州が2010年、マスカット・ベーリーAが2013年に、国際ぶどう・ぶどう酒機構のリストに掲載が認められるようになり、この2つの品種のワインをEUに輸出する際には、品種名をボトルに記載できるようになったのです。
こうして、ヨーロッパでも日本ワインがより認知されるようになり、世界のワインコンクールなどにおいても日本ワインが輝かしい賞を受賞することが増え、一層世界から注目されるようになりました。
日本の独自性を活かしたワイン造り
日本はワインの新興国。世界の中でもワイン造りの歴史はまだまだ浅い方です。
そのため、当初はアメリカやヨーロッパからワインの原料用のブドウの苗木が持ち込まれ、ワイン造りが始まりました。
しかしながら、これらのブドウは日本の気候や風土に合わず、その栽培はたいそう困難を極めました。人間と同じで、ぶどうも「適材適所」という言葉が当てはまるようですね。
そのような中で、日本の風土に合ったブドウ栽培を行っていこうとする動きが起こります。
そして現在、日本では北は北海道から南は宮崎県まで、その土地の気候や風土に合ったブドウが栽培されています。
日本列島は南北に細長いので、北海道と宮崎県、比べてみればその気候が全く違うのは一目瞭然ですよね。
そのため、日本では多様な気候条件のもと、実に多種多様なワインが生み出されているのです。
このような多様性も、日本ワインのひとつの魅力として、広く国内外で捉えられています。
ブドウや製造技術の改良
ワインの味を最も左右するのは、やはりその原料となるブドウです。日本ワインは、そのブドウが改良されたために美味しくなったとも言えるでしょう。
もともと日本は雨が多いので、どうしてもブドウが水っぽくなってしまい、食用としては良いのですが、ワインの原料として使用すると、水っぽいワインになってしまう傾向にありました。
そこで、ブドウの糖度を上げるために畑をかさあげしたり、最新機器を導入してブドウの育成やワインの醸造を管理したりと、各ワイナリーで試行錯誤の末に、様々な工夫が施されてきました。
このような生産者の取り組みの結果、日本ワインは海外のワインに引け劣ることなく、正々堂々と肩を並べられるところまで成長していったのです。
日本ワインを洗練させた日本人
さらに、日本ワインがここまで躍進を遂げた理由の一つには、日本人の繊細な味覚が挙げられるのではないかと思います。
日本人が慣れ親しんできた和食というのは、香辛料をあまり使わず、出汁で味付けをして、素材本来の味わいを楽しむものです。
そのため、日本人の味覚は世界的に見てもかなり繊細な方だと言われています。
それに加え、世界のワインが日本市場に多く出回るにつれ、日本人のワインに対する味覚が一層研ぎ澄まされてきました。
こうして、日本人は良くも悪くもワインの味にうるさくなったのではないかと考えられます。
このように、日本人の繊細で鋭い味覚も、日本ワインが洗練されたひとつの要因になっていると言えるでしょう。
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埼玉県出身、高知県在住。一児の母。
㈱三越(現:㈱三越伊勢丹)日本橋本店の洋酒担当を経て、2016年、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの資格を取得。 現在は高知県内のワイナリーのアドバイザーやワイン検定の講師を務める一方、ワインに関連する記事やコラム等の執筆も多数手がけています。
2019年、日本ソムリエ協会高知支部副支部長に就任。
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