ペアリングワイン

イタリアの心!パスタとワインのペアリング Part2

前回に続き、パスタとワインのペアリングを紹介させていただきます。

パスタの派生

今やイタリア料理として定着したパスタの歴史は古く、紀元前4世紀頃の遺跡で、パスタを製造する道具が出土しています。そのパスタとは、プルスと呼ばれるもので、麦やキビを粗挽きにして、煮込み、古代ローマで主食として食べられていました。

同じく古代ローマ時代に、このプルスの生地を薄く焼き上げたテスタロイという料理も登場し、これがピザや、ラザニアの原型だと言われています。

11世紀には、ビザンチン帝国のミケーレ7世の妹と、ヴェネチアの統領が結婚し、ビザンチン料理をヒントに、ラビオリなどの、詰め物をしたパスタが広がります。12世紀には、アラブ人がシチリアで、マカロニパスタを伝え、イタリア南部で広まります。

1271年にマルコ・ポーロが東アジア諸国へ行った際に、中国で学んだ麺作りの技法を伝え、麺状のパスタが広まり、時代とともに、地域で発展を遂げて行きました。

大航海時代の15世紀には、航海時に乾燥パスタが重宝し、世界的に広まります。16世紀半ばには、富裕層だけではなく民衆もパスタが食べられるようになりました。この頃はまだ、基本的にはチーズとパスタを合わせただけのシンプルなもので、民衆は手を使って食べていたようです。

17世紀には、トマトソースを合わせるようになります。それまでは、指で摘んで乾かして食べることが出来ましたが、ソースがあることによってフォークを使用するようになります。

1770年代ナポリの国王フェルディナンド2世が毎日パスタを供すことを命じて、それまでの先が3本のフォークに代わって、食べやすいように先が4本のフォークが考案されました。

18世紀後半には、イギリスの産業革命の余波を受けて、乾燥パスタの製造が広まりました。様々な時代背景の中、イタリア全土に浸透し、そして各地で発展を遂げていきました。

それでは、前回に続き、パスタ料理と相性の良いワインを紹介します。

カルボナーラ

ローマ発祥のカルボナーラは、『炭焼き』という意味があります。この名前の所以は、上にかかった黒コショウが炭を連想させるから、炭坑夫の間でお手軽料理として食べられていたものが広まったから、と所説ありますが、正確な事はわかっていません。

日本でも大人気のカルボナーラ。日本で一般的なカルボナーラは、日本人に好まれるようにアレンジされていて、生クリームや牛乳を使用し、マイルドな味わいに仕上げられています。そして、本場のカルボナーラは、生クリームを使用せず、代わりにペコリーノ・ロマーノという羊乳のチーズを使用します。より濃厚な味わいで食べ応えがあります。パスタもショートパスタで、周りに溝があるリガトーニが使われることが多いようです。

相性の良いワインはマルヴァジア・デル・ラツィオの白ワインがおすすめです。

▶︎ドンナ・ルーチェ ポッジョ・レ・ヴォルピ

イタリアの名門ポッジョ・レ・ヴォルピは、コストパフォーマンスの高いワインが人気です。ドンナ・ルーチェとは、輝く女性という意味があります。

パイナップルやライチ、洋梨の艶やかなフルーツの熟した香り、白い花、蜂蜜、アーモンド、ヴァニラの甘やかさを彩る香り、滑らかで厚みのある質感に、豊潤な果実味、優しく繊細な甘味、穏やかな酸味がゆったりと余韻へと繋がります。

* 原産国:イタリア
* 産地:ラツィオ
* 品種:マルヴァジア・デル・ラツィオ、グレーコ、ソーヴィニヨン
* 生産者:ポッジョ・レ・ヴォルピ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

ペペロンチーノ

日本ではペペロンチーノと呼ばれていますが、アーリオ・オリオ・ペペロンチーノが正式名称です。15世紀に中南米から伝来した唐辛子を使って、作られるようになりました。

発祥は、イタリアのアブルッツォ、カラブリア、トスカーナの中南部辺りだと言われています。特にカラブリアでは唐辛子が名産品として有名です。

イタリア語で、アーリオはニンニク、オリオはオイル、ペペロンチーノはトウガラシの意です。ペペロンチーノは、貧困のどん底にあってもニンニクとオリーブオイルと唐辛子さえあれば作れることからイタリアでは「絶望のスパゲッティ」と呼ばれていています。

そんなペペロンチーノには、チロ・ロッソの赤ワインを合わせるのが伝統的な組み合わせとして、親しまれています。

▶︎チロ・ロッソ・クラシコ・スペリオーレ カタルド・カラブレッタ・ヴィティコルトーレ

古くから銘醸地として知られ、古代ギリシャ時代に、オリンピック勝者に贈られていたチロで栽培された土着品種ガリオッポの赤ワイン。

チェリーのコンポート、ローズペタル、なめし革、紅茶など、火を入れた果実の甘やかさに、華やかなバラや、発展的な香りが混じり、凝縮した果実味、出汁のようにジワジワと旨味が広がり、伸びやかな酸と豊かでキメの細やかなタンニンが引き締めて余韻となります。

唐辛子の刺激的な辛さと、この熟度の高い果実味と、きめ細やかなタンニンが包み込むようにペアリングします。

* 原産国:イタリア
* 産地:カラブリア
* 品種:ガリオッポ
* 生産者:カタルド・カラブレッタ・ヴィティコルトーレ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

ボンゴレ・ビアンコ

ボンゴレは、ナポリ海岸地域の発祥で、イタリア語で『アサリ』という意味です。アサリを使用したパスタであればボンゴレという名前がつきますが、ボンゴレ・ロッソとボンゴレ・ビアンコが有名です。

ロッソとは「赤い」という意味で、一般的に唐辛子やトマトソースを使った赤いソースで作られます。ビアンコは「白い」という意味で、白ワインを使ったものや、アサリの出汁にパセリをかけたものです。

ボンゴレ・ビアンコには、ファランギーナという土着品種の白ワインが相性良いので、ぜひお試しください。

▶︎タブルノ・ファランギーナ・デル・サンニオ マッセリア・フラッタージ

ナポリから北東に約50キロ離れたところにあるタブルノ山の麓に、マッセリア・フラッタージはあります。火山性土壌で、カンパーニャの誇る土着品種ファランギーナの素晴らしいワインを造っています。

フレッシュライム、パイナップル、ライチ、ミント、バジル、白い花のフローラルな香り、まろやかで爽やかな果実味に、ほのかなミルキー感があり、旨味を伴ったシームレスな酸味が感じられます。余韻にもフローラルな花や、爽やかなミントの香りが鼻から抜け、心地よさを感じさせます。

* 原産国:イタリア
* 産地:カンパーニャ
* 品種:ファランギーナ
* 生産者:マッセリア・フラッタージ
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

カラスミのパスタ

イタリア半島西方に位置するサルデーニャ島名産のカラスミは、高級食材で、サルデーニャのキャビアと言われています。カラスミパスタは、ペペロンチーノに粉末状にしたカラスミをかけるのが、本場イタリアのスタイルです。

カラスミはボラの卵巣を乾燥させたものなので、失敗すると生臭みが出てしまうので、ワインに合わせるには少しコツが必要です。カラスミパスタにはサルデーニャのヴェルナッチャ・ディ・オリスターノという白ワインが最高の相性です。産膜酵母の香りが、臭みが出やすく合わせるのが難しいカラスミとよくマッチします。

ですが日本では、なかなか入手するのが難しいので、同じく産膜酵母の香りのするジュラのヴァン・ジョーヌも相性良く楽しむことができるのでオススメです。 産膜酵母の香りは日本酒の熟成酒にも近いものがあり、こちらもカラスミと相性が良いことで知られていますね。

▶︎コート・デュ・ジュラ・ヴァン・ジョーヌ ドメーヌ・グラン

17世紀末からジュラの地で、ブドウ栽培に携わってきた古い家系のグラン家のドメーヌ。

ブラッドオレンジ、ドライアプリコット、胡桃、ヘーゼルナッツ、蜂蜜、蜜蝋、シナモンの芳醇かつ複雑な香り、厚みのある凝縮した果実味に、力強く伸びやかな酸が、長い余韻へと繋がります。

玄人好みのワインですが、一度飲むとハマってしまう方も多くいます。意外とフードフレンドリーで、和洋中幅広く合わせられて、抜栓後の持ちもいいので、ぜひお試しください。

* 原産国:フランス
* 産地:ジュラ
* 品種:サヴァニャン
* 生産者:ドメーヌ・グラン
* 味わい:甘口☆☆☆★☆辛口
* 容量:750ml

パスタのルーツや味わいを元に、ワインをおすすめしましたが、不思議と同郷のワインはとても相性が良いものです。

楽しいワインライフをお過ごしください。

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Haruka Kageyama

JSA Sommelier
The Ritz Carlton Tokyo Azure45や、阿部誠氏が率いる「東京ぶどう酒店」、「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」、フランスのシャンパーニュ地方ランス「Domaine les Crayéres」にて10年以上サーヴィス、ソムリエールとして働く。
現在様々な形でワインを広めるべく雑誌やウェブメディアにて執筆中。 Haruka Kageyamaの記事一覧 

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