イタリアのフィレンツェは、中世ルネッサンスの建造物が数多く残っている世界遺産の街です。と同時に、街から車で15分ほど走ると、緑のあふれる景色となり、30分走るとブドウ畑が広がってきます。田舎がとても近く、ワイナリーに気軽に出かけることができます。

私は、16年前からフィレンツェに住んでいます。そして、トスカーナの現地ワイナリーツアーを主宰して13年になります。トスカーナのワイナリーには、人を魅了し、訪れるたびに好きにさせる何かがあります。そして魅了し続けるパワーがあると思っています。

なぜ、トスカーナのワイナリーにはそんな奥深い魅力があるのか。ワインだけではないトスカーナの魅力をお話しします。

トスカーナの美しい景色

トスカーナには、キャンティ、キャンティ・クラシコ、モンタルチーノ、モンテプルチアーノ、サンジミニャーノ、カルミニャーノなど、世界に知られた有数のワイン産地が数多くあります。ワイン産地には電車がほとんど通っていないため、ワイナリーへは車で行きます。

トスカーナは、丘陵地が約67%と、丘陵が半分以上を占めています。なだらかなアップダウンの続くカーブの道を走り、ワイナリーへ行きます。

目に写る景色は、風光明媚という以上の美しさです。丘の中腹にブドウ畑とオリーブ畑が広がり、木々の点在する大自然を360度見渡すことができます。トスカーナは、その景色の美しさゆえに、アグリツーリズモがイタリアで最も多い州です。

歴史を感じるトスカーナのワイナリー見学

ワイナリー見学では、蔵の中の案内してもらえます。200年、300年前の農家を使ったワイナリーや、中世の城でワインを造り続けているワイナリーも多く、ワイン文化の歴史を感じることができます。

ひんやりとした薄暗い蔵は、洞窟のようで、数百年の間ここでワインが熟成されていたと思うと感慨深いものがあります。そして、人々も伝統を重んじ、歴史を大切にしています。新しいものよりも古いものを好む姿があります。

ワイン造りでは、発酵の際の温度管理といった技術は最新の技術を採用していますが、手作業にたよっている部分もあります。手摘みをしたり、樽の中のワインをかき混ぜる作業のバトナージュ、ワインの熟成の経過を味見したり。

技術が進化しても、ブドウという自然の恵みを人の手でワインに変えるということは変わりません。ワイナリー見学は、昔から引き継がれた文化、伝統、歴史を深く感じさせてくれます。

ブドウ畑の一角に、オリーブの木が植わっていたりしますが、オリーブが植わっているところではオリーブを残し、オリーブオイルを生産しています。

昔からあるオリーブを引き抜いてブドウを植えるということはしません。昔の農家でワインとオリーブオイルを作っていたように、現在でもワインとオリーブオイルを作っているワイナリーがたくさんあります。こうした風景は、軟百年も前にタイムスリップさせてくれます。

トスカーナのワイナリーで働く人々

ワイン造りは、畑から始まります。天候に左右されるだけでなく、地形、土壌、立地によりまったく異なる味わいが生まれます。

生産者は自分の土地を愛しており、そこでワインを作ることに誇りと情熱を感じています。その人びとの話を聞くことで、それを感じることができます。

ワインは人びとの生活に密着しています。その地のワインと郷土料理は不可分ですし、ワインは、いつの時代も食事に欠かせない飲みものでした。

ワインのある生活とは、「ワインは喜び」ということです。収穫の喜びにはじまり、できたワインがリリースされるときの喜び、ワインを飲むときの喜び、熟成による将来に期待する喜び。ワイナリーを訪れると、こうした喜びを共有することができます。

トスカーナの地を感じるワイン

ワイン以外の魅力もたくさんあるトスカーナのワイナリーですが、ワインも味わい深いのはもちろんです。ワインには、その地の木やハーブの香りがあります。ブドウ畑の周りにある森を散歩しているかのような感覚になります。

ブドウは植物ですから、自然と切り離すことはできません。その地で育つブドウはその地を反映しています。いわゆるテロワールです。現地で飲むワインはもちろん、家で飲むときも、その地の光景が目の前に広がります。ワインは単なるドリンクではなく、その土地自体の魅力がつまっています。

私は、ワイナリーツアーを通して、ワインの味はもちろんですが、ワインの背景にある歴史、文化、テロワール、そしてワインの喜びを感じてもらいたいと思っています。

現在、コロナ渦でワイナリーツアーはおこなっていませんが、オンラインのワイナリーツアーを開催しています。トスカーナのワイナリーツアーにご興味のある方は、ぜひサイトをご覧ください。

トスカーナの風、リアルな姿をイタリアからお届けし、ワイナリーの魅力の一端を共有できればうれしいです。