ペアリングワイン

ロジカルに考えるワインペアリング

マリアージュに出会えるようにペアリングするコツはずばり「常識から離れること」「意外性、ギャップ」と以前別の記事に著しました。

このような、いわゆるラテラルシンキング(今までの前提を疑い、新しい見方をする思考法)から新しい魅力的なペアリングは生まれますが、その答えには化学的根拠が必ず存在しています。

心を掴むペアリングにする為には、ありふれた常識から離れ、意外性に富む自由な発想であることは大切なのですが、ペアリングを成功へ導く為には理論を理解し、それに基づいた上できちんとロジカルに考えることは近道です。

矛盾しているようにも聞こえますが、ワインペアリング考案の際にはどちらも必要だと思います。

今回は分かりやすく、呈味成分までは掘り下げずに、甘いや苦い等の味覚を表す言葉を使いながらロジカルに考えていきたいと思います。

ワインペアリングの一般的理論

“料理の甘味” “料理の旨味” “料理の唐辛子による辛味”は、ワインの苦味、渋味、酸味を強めますが、ワインのボディ(ボディとは、ワインが与える舌触り=テクスチャーの印象で、口当たりとも言われます。アルコールや糖分、酸味等の実に様々な要素が重なり合って生まれるものです。)、甘味、果実味を弱めます。

よって、上記二つの要素を強く感じる料理には“苦味、渋味、酸味は低く、甘味と果実味に富む、重めのボディのワイン”が一般的には合うことになります。

しかし唐辛子による辛味が強い料理の場合はアルコールの強さの度合いに注意が必要です。なぜならアルコールは唐辛子による焼けるような刺激を強める為です。

人によってはこのような感覚を好まれる場合もありますから、一概に「辛い料理にアルコール度数が高いワインはNG」とは言えませんが、一般的にバランスをとるとなると、辛味の強い料理にはアルコール度数があまり強くないワインを合わせるほうが良いでしょう。

上記に対して、“料理の酸味” “料理の塩味”は、ワインのボディ、甘味、果実風味を強め、ワインの酸味を弱めます。よって、このような要素を強く感じる料理には“甘味、果実味は穏やかで酸味が高く、軽めのボディ”のワインが一般的には合うことになります。

ワインで味変を叶える

家で食事をする際は、料理に何か足りないと感じたら自分で調味料をかけるなどして簡単に「味変」が叶いますが、外食中に料理の味を変えることは、卓上に調味料が用意されているようなお店以外では難しいこともありますよね。

料理自体の味を変えることが出来なくとも、ワインと料理が味覚に与える法則を知っていれば、ワインの選び方によって「料理の味の感じ方」を自分好みに変えることは十分可能なのです。

簡単な例として、料理に辛味が欲しければアルコールの高いワインを、甘味が欲しければ酸味の高いワインを、といった具合です。

料理の味変ではないですが、実際に私は、このワインにもう少し甘味と果実味があったら良いな...と思う時にはしばしば、レモンを濃い目に絞った炭酸水をチェイサーにします。

するとワインの味わいは欲しかった甘味と果実味が見事にぐっと増えたように感じられます。そして勿論、同時にワインに対して感じる酸味は減ります。

食感の組み立て

味覚要素をロジカルに組み立てていくことは勿論重要ですが、『食感』も見逃してはいけない大事な要素です。

食べ物にカリッとした、ふんわりとした等の食感があるように、ワインにもテクスチャーと言われる口当たり、舌触りなどがあります。

テクスチャーは先述したように、ワインのボディーを構成する要素です。硬水と軟水を飲み比べたことがあればピンと来るかもしれません。

普段の会話では食感と言うと歯で噛み砕いた時の感覚、すなわち歯ごたえのことを指す場合が多いですが、その他に舌触りや喉ごし、歯触りなど、口腔内の皮膚感触全般を含みます。食べ物と合わせるワインの食感のバランスが悪いと、なんだか不自然に感じてしまうのです。

揚げ物を例としてあげてみます。

サクサク、カリカリ、パリパリなどの歯ごたえの総称を英語ではcrispyと言います。そのような食感を楽しむ料理に合わせるワインが、まったりとした円やかな食感だとしたら、せっかくcrispyな料理が打ち消されてしまうことになります。

聴いていた音楽が最後だけ突然テンポが狂ってしまったような感覚です。そうさせない為にはワインにも同調する食感が求められるのです。

crispyな料理と同調するワインとは、具体的に一体どのようなワインかというと、「骨格(ストラクチャー)がしっかりとしたワイン」と表現できます。

ワインの骨格を決めるのは主に酸味と渋味が重要になり、それらの要素が目立つと骨格がしっかりとした、と表現できます。また、ミネラル感のあるワインと表現する人もいます。

ミネラル感とは非常に曖昧な表現であり、人により感じ方や考え方は異なるので私はあまり使いませんが、ミネラル感の定義が自分の中にしっかりとある場合はひとつの基準になるでしょう。

まとめ

ワインペアリングには、完成した料理をダイレクトに味わえるようなワインを合わせていく場合もあれば、ワインと合わせて食べてから料理が完成される場合もあります。

どちらにせよ、結果的にどのような味わいにしたいのか、目指すゴールに向かって計算をし、ロジカルに組み立てれば失敗する事はなさそうです。

料理とワインを組み立てる際のヒントになる要素は今回ご紹介した以外にもまだまだあるので、また少しづつお伝えしていけたらと思います。

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松澤 香奈

❁日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
❁WSET Level3 pass with distinction
先入観にとらわれず、常に新しい「美味しい!」を発見したい、食べる事と飲む事が大好きな人。
香りや味わい等の「感覚」を誰にでも分かりやすく言葉にして表現することが大切だと思っております。 松澤 香奈の記事一覧 

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