海外で活躍する日本人醸造家のワインと日本料理のペアリング
昨今、日本ワインが注目されるようになりましたが、今回注目するのは「海外で」ワインを造る日本人醸造家です。
世界各国で、ワイン造りに命をかける日本人をご紹介します。合わせて各ワインと、和食との相性も見ていきます。
ルー・デュモン ジュヴレ・シャンベルタン × 飛騨牛のすき焼き
▽超有名日本人醸造家 仲田晃司氏
ワイン好きの方なら誰でも知っているであろう方。NHK総合「プロフェッショナル仕事の流儀」でも取り上げられたブルゴーニュの醸造家です。穏やかな顔つきと癒し系の笑顔が、なんとも美味しそうなワインを造りそうな雰囲気。ちなみに、ルー・デュモンの「デュモン」は「山」という意味で、仲田氏の故郷の松山城の山が由来だそう。土地を大切に想う人柄が伺えます。私の働くショップでも、仲田氏のワインは入荷後すぐに売り切れてしまうほどの人気と知名度です。
▽看板ワイン「ジュヴレ・シャンベルタン」
今回はこちらのジュヴレ・シャンベルタンと、お料理の相性を考えてみます。ジュヴレ・シャンベルタンはブルゴーニュワインの中でも男性的といわれる骨格のあるタイプ。
華やかな香りの中にも、豊富なミネラルや鉄分の力強さがあります。飲み応えがありながらも、仲田さんの作業の繊細さがそのままワインに移ったような柔らかさも伺える絶妙なバランスになっています。
▽ペアリング
こちらのワインには、飛騨牛のすき焼きを合わせてみましょう。なぜ飛騨牛か?日本のブランド牛の中でも霜降りの量が多い割に、しつこくない脂身の風味、そして筋繊維の柔らかさからくる繊細な味わいが特徴の飛騨牛は、繊細なピノ・ノワールの香りや果実味を崩すことなく、ジュヴレ・シャンベルタンの持つ骨格にも相性の良いお肉です。
ピノ・ノワールの繊細さをかき消さないように、割り下の甘さを控えめにすると良いでしょう。やや強めのタンニンと果実の凝縮感が飛騨牛の旨味とマッチ。
また、ワインの香りにも含まれるマッシュルームのような香りが、すき焼きの具材のシイタケとも相性が良く、ワインのキュッとした酸味とタンニンが、割り下の染みたシイタケの旨味を引き立てます。
ニュージーランド ソーヴィ二ヨン・ブラン × 鯛の昆布締め
▽独自のスタイルでワインを造る岡田岳樹氏
東京生まれ、北海道で農学を学び、マールボロのブランコット・ヴァレーにワイナリーを持つ岡田岳樹氏。大手ワイナリーがひしめく場所で、ブドウの栽培から醸造まで、基本的には全ての過程を1人で手掛け、独自のスタイルのワイン造りに取り組んでいます。ワイナリー名の「フォリウム」とは、「葉」を意味します。「ワイン造りに重要な自然を全面に出したかったから」という想いが込められています。
▽料理に合わせるための1本「フォリウム・ヴィンヤード・ソーヴィニヨン・ブラン」
ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランと言えば、強くしっかりとしたハーブ香が特徴。しかし、岡田氏の造るワインは、品のある香りに美しい酸味と柔らかな果実味があります。そして、繊細で長い余韻を持った、まさに和食と合わせるためのワイン。マールボロのソーヴィニョン・ブランの特徴であるトロピカルフルーツや、グリーンアップルの風味、美しい果実味を持った親しみやすい1本です。
▽ペアリング
フォリウムのワインは和食と、そして白なら魚介料理と合わせるのが1番のおすすめ。ニュージーランドでもよく食される鯛を、旨味を出すために昆布締めにしてみましょう。淡泊な味の鯛ですが、昆布をまとうと、凝縮された旨味を持ち、コクが出て更に美味しくなります。ふわっと漂う昆布の香りと、ソーヴィニヨン・ブランの爽やかな香りが、まるで海辺にいるかなような気分にさせてくれます。鯛の塩気によってワインの甘味、果実味をしっかり感じることもできます。
ナカイ・ヴィンヤード メルロ × 焼き鳥タレ
▽アプリコットのワインから始まったナカイ・ヴィンヤード中井章恵氏
今回、紹介する中で1番の年長者、世界で活躍する日本人醸造家のパイオニア的な存在です。東京からサンフランシスコに移住して数年後、アプリコットの収穫体験をした中井氏。その際、摘み取った量が多く、ワイン醸造関連の仕事をしていた友人に、ワイン造りを勧められ、自作のアプリコット・ワインを醸造。その繊細で美しい香り、ドライでデリケートな味わいに感動を覚えたそうです。そして、自然に帰ること、農夫になること、ぶどうを自分自身で育てることを夢見るようになり、ブドウ栽培学を学び、カリフォルニア州ソノマのロシアン・リヴァー・ヴァレーにワイナリーを設立しました。
▽メルロの特徴がしっかり出ている「ナカイ・ヴィンヤード メルロ」
カシスやブラックベリー、湿った土やマッシュルームの香り。柔らかなコク、しっかりしたタンニン。程よいオークの香りとともに心地よいフィニッシュへと続きます。メルロー本来の果実味が味わえます。カリフォルニアのメルロは品種の特徴がしっかり出ているものが多いので、メルロの特徴を知りたい方におすすめ。唐草模様のようなエチケットも和風で素敵な1本です。
▽ペアリング
まろやかさを持った渋みや、カベルネ・ソーヴィニヨンよりもやや優しめのタンニンは、醤油やみりんを使ったお料理と合わせやすいです。甘いタレとワインのほど良いコクは、お互いを邪魔しません。鶏肉とメルロのまろやかさが合わさると、焼き鳥をコース料理のメインかのように豪華に感じさせてくれます。
海外で活躍する日本人ワイン醸造家はたくさんいます
日本人醸造家が造るワインは、ブドウ本来のピュアさ、素直さを感じることができます。
ひとつひとつの作業を大切に行うこと、納得のいくまで作業をすることの大切さが出来上がったワインに現れていることに驚きを感じます。
まだ、飲まれていない方は是非一度お試しください。
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