ペアリングワイン

ビオワインのビオディナミ農法とは?

今回はビオワインに使用されるぶどうの栽培方法についてお話ししたいと思います。

ビオワインの多くの生産者は、醸造方法だけではなく、ぶどうの栽培方法にもこだわりを持っています。その中の一つに「ビオディナミ農法」というものがあります。

人智学者シュタイナーによるビオディナミ農法

ビオディナミ農法は、オーストリアの人智学者ルドルフ・シュナイターによって提唱された有機農法、自然農法の一種です。

単純に農薬や化学肥料を使わないだけではなく、生産システム自体が生命体として考えられた循環型農業となります。

多品種の植物の栽培や家畜を飼うことを基本としています。そうすることで、畑が「生きた土壌」になるとシュタイナーは唱えています。

「生きた土壌」とは一体どのような状態なのでしょうか?

植物はそれぞれ必要とする栄養分が異なります。1種類の作物だけを栽培すると、その作物が必要とする栄養素だけが減り、土壌の状態が偏ってしまいます。

それを防ぐため、ハーブや雑草といわれるような植物でも、多品種を混在して植えることで、それぞれの植物がお互いにバランス良く作用し、土壌の栄養素が良い状態で保たれます。

また、家畜が雑草を食べてくれることで、除草剤を使うことはもちろん作業が省け、家畜から出た糞が自然の肥料となり、土壌の微生物が活性化されます。

微生物が活性化されると、ふかふかの土壌となり、雨水をしっかり含むことができ、また水捌けもよくなります。

このように、畑の中で、生物が循環することで、自然に良い状態を保つことができる土壌を「生きた土壌」と呼んでいます。

生きた土壌には、病原菌も少なく、強いぶどうの樹が育ち、元気なぶどうができるといわれています。

月の満ち欠けを取り入れた農法

ビオディナミ農法は、畑自体が自然循環するというだけではなく、土壌は太陽系の一部として考えています。

地球上の生命は、重力や光など宇宙の外的要素によって影響を受けているとされ、土壌もそのうちの一つと捉えています。

特に月が潮の干満に大きく影響することから、大部分が水でできている土壌や植物も、月の満ち欠けによって大きく影響されると考えられています。

実際に、ぶどうだけではなく、満月の時には植物は早く成長することが確認されているようです。また、新月に伐採された樹木は強いということも言われています。

こういったことから、ビオディナミ農法は、天文学的、あるいはスピリチュアルな要素を取り入れた農業といわれています。

そして、ビオディナミのワイン生産者たちは、月の満ち欠けのタイミングで、ぶどうの枝をいつ植えるか?いつ剪定するか?瓶詰めはいつにするか?などを見極めるということです。

「ビオディナミの伝道師」ニコラ・ジョリー

フランスでビオディナミ農法をワイン造りにいち早く取り入れた生産者は、ニコラ・ジョリーといわれています。

ニコラ・ジョリーは、フランスのロワール地方を代表するワイナリーを一代で築き上げました。その経歴はとても面白く、もともとはアメリカのウォールストリートで金融のエキスパートとしてモルガン銀行に勤務するビジネスマンでした。

その頃、彼は化学薬品工業への投資部門の責任者という立場で、ビオディナミとは全く反対の仕事をしていました。

そんな中、順調に出世街道を歩んでいたにもかかわらず、1976年フランスに帰国し、母が運営していたワイナリーを継ぐことになりました。

当初は、ビオディナミをとりいれた生産者は周囲には誰一人おらず、彼も他の生産者と同様、除草剤や化学肥料を使ってぶどうを栽培していました。

次第に、ニコラは畑に昆虫がいなくなり、土壌に異変が起きていることに気づきます。

そして、1980年代初めに、シュタイナー氏の提唱するビオディナミを取り入れたぶどうの栽培を始めました。

ビオディナミを取り入れた当初は周囲から冷ややかな目で見られましたが、その3年後には、畑に昆虫が戻り畑が生き返りました。

ニコラは、多くの生産者が、評価の高い「美味しい」ワインを目指す中、「美味しいワインである前に、その土地固有の特性を表現した本物のワインでなくてはならない。」と、本来のAOC(原産地呼称統制法)の意味の原点にもどることを提唱しました。

そして、2001年には、「Return to Terroir」というビオディナミの団体を立ち上げ、世界中の生産者へ助言を行っています。

このような活動から、ニコラは、「ビオディナミの伝道師」と呼ばれ、ワイン生産者の間では知る人ぞ知る有名人となりました。

ワインは、日本ではちょっと気取った都会的で高貴なイメージがありますが、本来は農産物の一つです。

もともと自然とともにつくられてきたワインが、より効率的に美味しいものをつくりたい人々の欲望によって少しずつその方法が人工的なものに変化しつつありました。

しかしながら、今、ニコラのような生産者によって、ワイン造りに「本当に必要なもの」が見直され、原点に立ち返ることで自然とともに素晴らしいワインが造られる時代へ回帰しているとも言えそうですね。

時本 早緒里

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
365日違うワインを呑むをモットーに、自然派ワインを毎日嗜んでいます。
造り手さんの思いや製造工程に興味があり、人と地球に優しいワインを大切にその良さを伝えるワインセミナーを不定期で開催しています。
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