パルミジャーノとランブルスコはポー川の霧が育む美味!
食品と霧の不思議な関係
宮本輝さんの作品「にぎやかな天地」は、発酵食品をテーマにした小説です。
その中で、日本の醤油や鰹節といった発酵食品の名産地には必ず霧が発生する、という記述があります。
これは万国共通なのか、イタリアを代表するチーズ「パルミジャーノ・レジャーノ」の故郷エミーリア地方にも深い霧が出ることで有名です。
エミーリア地方に出る霧の美しさと神秘を写真に納めたのが、高名な写真家ルイージ・ギッリでした。
1992年、49才で夭折したギッリが残した遺作の一枚には霧が写っています。
また、フェッラーラ出身のジャンニ・チェラーティを初めとして、ポー川流域出身の作家には霧をテーマにした作品を残すことが多く、いかに生活の中に霧がとけ込んでいるかがよくわかります。
この霧がなければ、イタリアのチーズの王様パルミジャーノ・レジャーノ・チーズもランブルスコワインも、さらには生ハムやサラミ類も美味になり得ないといわれているのです。
理由として、霧を発生させる湿気が旨みの原因という説がありますが、実は現在の科学では食品と霧の関係は解明されていません。
2015年のミラノ万博でも議題になった「霧と食品」
2015年、「食」をテーマにミラノで開催された万国博覧会。
この万国開催中の11月にも、ロンバルディア地方の郷土料理と霧について語り合う会議がありました。
北イタリアに霧が発生するのは、秋もたけなわの11月ということですからタイミングまで計って行われた会議であったのです。
この会議には、著名なレストランのシェフばかりではなく、健康面からの有益性も見込まれるこれらの食品に一家言のある医学者も多く参加しました。
自然に育まれた食材はおいしいだけではなく、予防医学にも貢献しうることが確認されたのだそうです。
イタリア半島一の平野に生まれたチーズの王様
イタリア半島の中で、まれに見る広さを誇るポー平原。ポー川流域に広がるこの平野には豊かな牧草地帯が広がっています。
メイド・イン・イタリーのシンボル、パルミジャーノ・レジャーノ・チーズは大量の牛乳を原材料として用いています。
20キロのパルミジャーノ・チーズを生産するのに要する牛乳はなんと300キロ。
大量の牛と牧草の確保のために1200年代にパダーナ平野に灌漑施設を設けたのは、ベネディクト修道会の修道士たちでした。
そしてパルミジャーノ・レジャーノ・チーズも、当時はチーズ生産のエクスパートが揃っていた修道院の僧たちによって開発されたものであったのです。
このチーズの美味は、中世の文学者たちも作品中に「天国の食材」として登場させたほど、当時のイタリア半島では有名でした。
パルミジャーノ・レジャーノ・チーズは、じつに800年の歴史を誇る食材なのです。
古代ローマ時代から存在したワイン「ランブルスコ」
エミーリア地方特産のワイン「ランブルスコ」も、霧なしではおいしくならないといわれているもののひとつです。
というのも、ブドウのランブルスコ種はポー平原土着の品種といわれていて、古代から「畑の片隅で世話もされずに育っているブドウ」という認識があったのだそうです。
とにかく、ポー川周辺でしぶとく生き残ってきたこのランブルスコ、当然この地方の料理との相性は抜群といわれています。
わずかな発泡性があるランブルスコは冷やして飲んでもおいしく、その清涼感が夏にぴったりという人もいます。
パルミジャーノ・チーズと相性のよいワインは?
パルミジャーノ・レジャーノ・チーズが冷蔵庫にない、というイタリアの家庭はほぼ皆無といってよいでしょう。
トマトソースをベースにしたパスタに削って混ぜるだけではなく、小腹が空いたときにひとかけかじったり、パニーノに挟んだり用途はさまざま。
とくに体調が悪いときには、パルミジャーノ・チーズで味付けしたリゾットやパスタを食べる習慣が今でも残ります。
生ハムとメロン、のようにしょっぱいものと甘いもの組合せはイタリアでは存外に多いのですが、パルミジャーノ・チーズも蜂蜜と食べたり梨とともに食したりすることも。
もちろん、パルミジャーノ・チーズと同郷のバルサミコ酢とも相性は抜群です。
パルミジャーノ・チーズと合うワインは、きりっとした白や発泡性のある赤といわれています。
白ならば、リボッラ・ジャッラ・デル・コッリオ、ヴェルナッチャのサン・ジャミニアーノ・ゼータ、ブライデ・アルテなどなど。
赤ならば、当然ランブルスコが筆頭に上がるでしょうか。
そのほか、アマローネやバルバレスコなどの高級ワインともおいしくいただけるのですが、キャンティとは相性が悪いと言われています。
ランブルスコのワインと相性のよい料理は?
軽やかで適度の発泡性があるランブルスコのワインは、ワイン初心者にも飲みやすい万人向けのワインです。フルーティーでフレッシュで、女性向きともいわれています。
サラミや生ハムなどの肉の食材がとくにおいしいポー川周辺のイタリア料理とはもちろん相性がよく、モルタデッラやパンチェッタなどこってりしたお肉ともおいしく飲むことができます。
また、パスタの中に挽肉を詰めたトルテッリーニ、ラザニア、肉料理全般のほか、ウナギともおいしく飲むことができるというワイン通もいます。
いずれにしても、コテコテのイタリア料理とはマリアージュを楽しめるのがランブルスコの特徴なのでしょう。
神秘的な霧を生み出す広大な平野に思いを馳せて、ぜひこれらの美味を味わってみてください。
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イタリア在住十数年、読書と美術鑑賞と食べることを生き甲斐に、イタリアの山奥で生息中。 cucciolaの記事一覧
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