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具材たっぷりはイタリアでは邪道!シンプル イズ モアのイタリアパスタの極意

「和風パスタ」「ミートボール入パスタ」「タマネギ入カルボナーラ」。これらがみな、イタリア料理の邪道と言われたらどう思いますか?

どんな野菜やお肉とも相性がよいパスタは、日本でいうところの「丼」のように冷蔵庫にある食材を使って自分流に楽しめるのが嬉しいもの。 ところが、自国料理に絶対の自信を持つイタリア人はこうした「脱線」を嫌うのです。

「アマトリチャーナにニンニクを入れるな!」「カルボナーラにタマネギと生クリームは入れるな!」

今年の夏、フランスのボージョレのレストランで働く56才のイタリア人シェフがクビになるという事件がありました。 事件というほど大げさなものではないのですが、このニュースがちょっとした話題になったのはその解雇の理由です。

56才のイタリア人シェフはどんなにフランス人経営者に注意されても、パスタを「アル・デンテ(硬め)」で茹でることをやめませんでした。

フランス人には、イタリア人が固執する「硬めのパスタ」が固すぎたのでしょう。それが、解雇の理由であったのです。

いい加減なイメージのあるイタリア人ですが、自国料理への愛と忠誠は大変なものがあります。 約束の時間は守らなくても、パスタの具材は原材料からきっちり守る、なんてことがしじゅう起こるのです。

たとえば、「アマトリチャーナ」と一般的に呼ばれるパスタがあります。

昨年、イタリア中部地震で甚大な被害を受けて日本でもその名が知られるようになったラツィオ州の街「アマトリーチェ」発祥のパスタです。

その公式サイトによれば、アマトリチャーナのパスタにニンニクやタマネギを入れてもマズいことはないが、オリジナルのレシピでは厳禁とあります。

また、使用する豚肉も、日本でよく知られている「パンチェッタ」という豚肉のお腹の部分ではなく、頬の部分である「グアンチャーレ」でなくてはならぬ、と明記されているのです。

理由は、「パンチェッタ」は塩味が強すぎるからなんだとか。

これと同様、ローマの郷土料理である「カルボナーラ」にもタマネギや生クリームは禁忌です。

また、カルボナーラのオリジナルレシピでは使用する卵は全卵ではなく黄味のみです。ですから、本当の「カルボナーラ」は、かなり黄色がつよい一品なのです。

私たち日本人は、タマネギを炒める香ばしい香りや甘味をどんな料理にも応用可能だと思っています。

実際、私もタマネギのパスタへの投入を諦めたときにはなんだか物足りない気分でした。

「トマトソース」のパスタもシンプルに

イタリア料理の代表格「トマトソースのパスタ」もこれと同様、シンプルなトマトソースを買ってきて、オリーブオイル、ニンニク、塩のみで味付けして食べるのが正統と言われています。

夏であれば、これにバジリコの葉でも入れれば上等といったところでしょうか。

バジリコがない場合は、最後に粉チーズを大量に振れば大人も子供も毎日でも食べられるおいしいパスタのできあがり。

各家庭にはもちろん「おふくろの味」があり、我が家はタマネギは入れるけどニンニクは入れない、とか、トマトソースはホール状のものがおいしいなどの違いはあれど、料理が上手な人ほどよりシンプルでより少ない具材と調味料でパスタのソースを作るのが通常のようです。

子供たちの大好物「白いパスタ」

子供たちの大好物のパスタの一つに「パスタ・ビアンカ」すなわち「白いパスタ」があります。

私の娘もこれが大好きで、「今夜はパスタ・ビアンカにして!」といわれると、主婦としては「ラッキー」なくらいお夕飯の準備は簡単。

茹でたパスタを、バターあるいはオリーブオイルに絡めて、上から大量のパルミジャーノ・チーズを削って混ぜるだけ。

20キロのパルミジャーノ・チーズを生産するために300キロの牛乳を原材料とするこのチーズ、栄養価満点でイタリアでは体調が悪いときの味方でもあります。

「粉チーズ」との相性が悪いといわれる具材は?

イタリアに住んで優に10年は超える私でも、周りのイタリア人の目が気になるのは「このパスタに粉チーズをかけてもいいのか」という状況に陥ったときです。

このテーマは、実はイタリア人の間でも盛んに論争になることが多く、これを語り合うサイトがいくつもあるほどです。

まず、バジリコ入のパスタにはチーズはかけない、魚介類のパスタにもNG、豆のパスタにも無用というのが一般的な意見ですが、これまたその土地や家庭によって好みや習慣が分かれるというのが実情です。

トマトソースとキノコの関係 Yes or No!

秋の味覚としてイタリアでも愛されているキノコ、その中でも代表格はポルチーニ茸でしょう。

このポルチーニ茸はたいていは「ビアンコ」と呼ばれるトマトソースが入らない味付けが一般的です。

ところが、私が住む山の街でも10キロほど山奥に行くと、トマトソースではなくミニトマトが色づけとしてポルチーニ茸のパスタに入っています。

個人的には私はその味はあまり好きではないのですが、レストランのおじさんは「ポルチーニ茸のパスタにトマトを入れるのは我が町だけの伝統」と誇らしげに語っていました。

「ツナ入パスタ」は「赤」が主流

家にある安価な食材でおいしく食べられる「ツナのパスタ」。

レストランでも友達の家でも主流は「赤」、つまりトマトソースとツナの組合せです。

しかし、これに関しては我が家は傍流。断然、「白」つまりトマトソースなしを好みとしています。

ただし、ニンニクは多めに入れてよく香りを出し、ツナは最後に油を切ったものをさっと入れるだけ。

まれにオリーブの実やケッパーを加えますが、オリーブオイルとニンニクとツナの組合せだけで満足感を得られることは間違いないです。

具材が少ないパスタが主流の訳とは?

日本では、一日30品目の食材を食べることが推奨されています。しかしイタリアでは、旬の野菜や果物を大量に摂取するのが日常的です。

「インゲン豆を1キロちょうだい」「ほうれん草を600グラムちょうだい」といった具合で、主婦たちが青空マーケットで購入する野菜の量は膨大です。

これからの時期ならば、ブロッコリを多く目にすることでしょう。ブロッコリのパスタも、南イタリアのプーリア州を中心に有名です。

ブロッコリは、サルシッチャと呼ばれる腸詰めと相性がよいことで有名ですが、ブロッコリだけのパスタでも充分においしく、なぜか上にかけるチーズはパルミジャーノ・チーズではなくペコリーノ・チーズというのがお約束です。

行き着くところ、一日30品目を摂取しなくても、充分な量の野菜を消費するイタリアの食文化ゆえの伝統が「具材の少ないパスタ」なのかもしれません。

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cucciola

イタリア在住十数年、読書と美術鑑賞と食べることを生き甲斐に、イタリアの山奥で生息中。 cucciolaの記事一覧 

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